ギネスに挑戦！　ワンアワー・猫パンチ！｜リアクション

ギネスに挑戦！　ワンアワー・猫パンチ！

　八神は猫屋敷と三折部の許可を得て、検診とスタンプを終えた猫たちの写真を撮っていた。
　愛用のデジカメは最新式である。
「本当に、寝子島便りに掲載してくれるんですか、三折部さん！？」
「ええ、もちろんです。役場もカメラマンは雇っているけど、もっぱら猫よりも町民たちが被写体ですし」
「ありがとうございます。個体判別にも使えますし、是非、役立ててください」
　八神は張り切って猫たちを激写しまくる。
　そこへ、野々ののこがやってきた。
「修君、今日は猫の写真屋さんなの？」
「ああ、そうだ。野々もお疲れさま。野々は何匹、連れてきたんだ？」
「えーと、１匹だけ……。ほら、あそこ」
　ぎゃにゃあああああ！
　悲鳴のような鳴き声が会場に轟いた。
　八神は目を疑った。
「えっ、テオ！？」
　テオドロス・バルツァことテオが、今、予防接種を受けている真っ最中だった。
「っ痛てぇな！？　クソ！　なんで俺が注射を受けなきゃならねぇんだ！？」
　注射を受けて、ブリブリ怒りながらののこの足元へやってきたテオ。
「また何かののこが妙な事に首を突っ込んでると聞いて付いてきてみたら、俺が捕まるって訳分からねぇ……」
　ブツブツと愚痴を垂れるテオだが、ののこにはにゃごにゃごと鳴きまくっているようにしか聞こえていない。
「うわー、やっぱ連れてくるんじゃなかった。本当にうるさい！　でもなぜか勝手についてくるし、まぁ、記録にカウントされるし、問題ないよね？」
「勝手に付いてきたとか誤解を生む言い方は止せ！　大体な、ののこは何でもかんでも首突っ込んでんじゃねーよ。どんだけ俺が苦労しているのか、お前分かって……ねぇよな。この小言も聞こえてねぇだろうし。クソ暑いしクソ痛ぇし、なんて日だ！！」
　テオの言葉が言語化されて聞こえる『もれいび』の八神は、笑いを堪えるのに必死だった。
「おい、お前、八神とか言ったか？　俺の言葉に反応すんじゃねーぞ？　言っておくけどな？　俺はののこが心配だから後を付けてきただけで、こんな目に遭うなんて聞いてなかったんだからな！？　大体、俺はこんなナリだが神様だぞ！！　って聞いてんのか！？」
　八神は笑いを堪えるのに必死だ！！
　彼の様子を、傍らで首を傾げるののこ。
「？？？　どうしたの、修君？」
「い、いや、なんか、テオの様子が面白くて……！　ぷっ！」
　駄目だった。思わず吹き出してしまった。
　デデーン！　八神、アウトー！
　これにはテオ、大激怒！
「オイ反応するんじゃねぇよ！！　フツウが壊れたらどうすんだテメエ！」
「ごめんよ、テオ。そんなににゃごにゃご怒らないでくれ。ほら、美味しい缶詰、食べるか？」
「……ちっ、今日は勘弁してやる」
　大人しく買収されるテオであった。
　この神様ちょろい。
「凄いね、テオとお話が出来るの？」
「いや、違うよ、野々。俺は猫の鳴き声や仕草で喜怒哀楽が分かるんだ。自室に猫をたくさん飼っているから分かるようになったんだ。それでテオの気持ちも推し量ってるだけだ」
「すごい！　猫博士だ！」
　ののこが目を輝かせている傍ら、テオは溜息を吐いていた。
「ったく、よくゆーぜ……。それにしても、これ美味いじゃねーか……」
　八神はテオが買収されている様を見て、やっぱり猫なんじゃ、と訝しんでしまった。

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