逆襲の時｜リアクション

逆襲の時

　拉致された中には女子供が多く含まれていた。
　――俺が目立って連中を引き寄せねーとな。
　楢木春彦は『Stairs of air』のろっこんで他人には見えない足場を作った。次々に跳び移って黒服達を挑発した。
「地上をカサカサと動き回るしか能がねーゴキブリ共が！」
「囀るな」
　大柄な黒服が春彦を指差した。赤い腕章を付けていた。
「でっけーゴキブリもいたもんだ。ケド、そのでかさじゃ、ここまで跳び上がれねーだろ」
「その必要はない。貴様がくればいい」
「誰が、そんなこと、おっ！？」
　驚きの声を上げた。春彦は腰を落とす。その姿で前に引っ張られた。
　黒服は指を差した状態で勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
　――コイツ、もれいびかよ。指差しが、この力を生み出してるみてーだな。
　引き摺り下ろされる前に別の平たい足場を目の前に作った。涼しげな顔で相手を見下ろす。
「大した力じゃねーな。踏ん張る必要もねーわ」
「そんなはずは！」
「あるんだよ。俺が証明してんだろ？　それとおっさん、よそ見してると、他の者にやられるぜ」
　表情から余裕がなくなった。黒服は周囲に視線を飛ばす。
　――力が弱まったな。少し離れて様子を見るか。
「じゃあな！」
　春彦はろっこんで作った足場を使って距離を空けた。

　離れた位置で様子を見ていた新田亮が大柄な黒服に向かう。大きく息を吸い込んで止めた。相手との体格差を考えて四倍と心の中で呟いた。
　亮のろっこん『サード・フォース』が発動した。進化能力１の効果で耐久性と動体視力まで強化された。
　黒服が亮の接近に気付いた。
「貴様もろっこん使いか！」
　指先を向ける。引き寄せられる力を好機と捉え、全力の走りを見せた。
　黒服が構える前に亮の拳が腹部に突き刺さる。声にならない苦しみで血の混じった涎を垂らす。その顔に躊躇ない回し蹴りを浴びせた。
　黒服はコンクリートの床に顔面を擦る。最後は転がって止まった。立ち上がる気配はない。弛緩した肉体が物語っていた。
「引き寄せる力が仇となったな」
　亮は次の戦いに赴く。