「ガハッ……!」
腹部を蹴られた
楢木 春彦がコンクリートの床に無様に倒れた。虚しい反響音が辺りに響く。
間近で見ていた
呉井 陽太は悔しそうな表情を浮かべる。僅かに身を寄せて、そっと話し掛けた。
「春彦君、大丈夫?」
「ああ、なんてことねぇ」
横倒しの姿で返す。春彦は両腕と胴体をロープでぐるぐる巻きにされていた。多くの者達が似たような状況下にあった。
「こいつら……ぜってー許さねぇ」
「同感だけど今は辛抱だよ、春彦君」
怒りの目を周囲に向ける。幾人もの黒服の男達が取り囲んでいた。
「こいつら……何モンや?」
手首を拘束された
服部 剛は一切の怯えを見せず、黒服達を睨み据えた。
「分からない。けど、ロクでもない連中なのは確かさね」
長く垂れた前髪の奥で
霧谷 朧の褐色の眼がぎらりと光る。
彼等の置かれた状況は芳しくない。白色灯に照らされた空間は地下駐車場だろうか。
視界の届く範囲に車は停められていなかった。助けを求める相手がいないことを仄めかす。
皮肉なことに黒服という敵だけは存在した。あれは突然の襲撃だった。殴られ、切られ、この場所に強制的に連行されたのだ。
不意打ちのせいだけではない。黒服はいずれも手練れで徒手空拳の格闘術を体得していた。加えて武器を自在に操る。
伸縮式の警棒にバタフライナイフ、中にはオートマチックの拳銃を手にしている者もいた。
「好き勝手に殴りよって。隙見てぶっ潰したる」
「俺だって、このまま捕まっとくつもりはないんよ」
意志を確認しながら黒服達の挙動を窺う。先程とは打って変わって動きが少ない。何かを待っているように見えた。
暇を持て余した数人の黒服が声を落として話し始めた。
「こいつらも、もれいびって連中なのか? 普通のガキじゃねぇか」
「ろっこん、だったか。そいつを研究して、武器にしようなんて……」
「ウチのボスは何を考えてんのかねぇ」
「そこのお前ら。無駄口を叩くな」
左腕に赤い腕章を付けた一人の黒服が睨みを利かせた。委縮した様子で全員が頭を下げる。
「こいつらも、もれいびだ。油断するな。ボスが来る前に逃げられたら、分かっているな?」
「それは、もう……」
一人の黒服がぎこちない笑みを作った。
「ちょっといいか」
別のところにいたスキンヘッドの黒服が手を挙げた。
「どうした?」
「用心の為に一服したいんだが、別にいいよな」
「ああ、そういうことか。頼んだぞ」
腕章を付けた黒服が頷く。
許可を得たスキンヘッドは懐から煙草を取り出した。一本を口に咥えてライターで火を点ける。
耳に意識を集中していた
志波 武道は目立たないように顔を動かす。
「彰尋くん、動けるか? このままだと俺達、全員モルモットだ」
「そのようですね。身体の方は、大丈夫です……」
痛みで表情を歪めながらも
鴻上 彰尋は気丈に返す。
「……俺は、諦めない」
「絶対に、生きて帰る……」
全員の意志が合致した。強い結束力で困難に立ち向かう。
逆襲の時だ。
今回のシナリオは見た目通りのハードモードです!
否応なく窮地に立たされた人々の「脱出&救出」が目的となります。
楢木 春彦さん、呉井 陽太さん、服部 剛さん、霧谷 朧さん、志波 武道さん、鴻上 彰尋さん。
ガイドに登場してくださり、ありがとうございました。
ご参加いただける場合は、ガイドに関わらず自由にアクションをかけてください。
概要
謎の犯罪集団によって、皆さんは拉致されてしまいました。
身体中に傷を負わされ、手や足はロープできつく拘束されています(傷の程度、縛られている箇所は任意)。
彼等はもれいびを主に狙っているようですが、中にはひとやほしびとが混ざっていることもあります。
舞台は寝子島に存在する、地下駐車場です。
黒服が乗ってきたのでしょうか。隅の方に隠すように車を駐車していますが、一般人の姿はありません。
周囲には何人もの黒服の男達がいて、皆さんの行動に目を光らせています。
彼等は、この事件の首謀者、ボスがやってくるのを待っているようです。
ボスは多数の部下を引き連れています。到着した時点で皆さんはアジトに移動させられてしまいます。
そうなれば脱出は困難を極めることでしょう。
絶望的な状況ではありますが、逆襲の糸口はどこかに必ずあるはずです。
気力を振り絞り、脱出を試みるか。あるいは黒服達を仲間との連携で打ち倒しても構いません。
なお、拘束されている仲間達を、外から救出に向かうといったアクションも可能です。
ただし、黒服や捕まっている人々は、ろっこんによって形成された特殊なフィールドの中におり、
ひとには外から彼等を認識することができません。
ボスの到着までの時間は明確になっていませんが、警察や助けを待つ時間はなさそうです。
黒服について
黒服達は全部で20人程度。
いずれも格闘技の使い手で、武器も所持しています。数名は銃も持っているようです。
黒服達の目的はもれいびの捕獲なので、死に至るような攻撃は控える傾向にあります。
黒服達の多くはひとです。
中には油断している者もいるようで、時折よそ見をしたり、
スマートフォンをいじっていたりすることもあります。
会話によってこちらの情報を引き出そうとする者もいるかもしれません。
注意深く観察していれば、隙を見つけることもできるでしょう。
左腕に赤い腕章を付けた黒服はもれいびです。
もれいびは全部で4名おり、それぞれに異なるろっこんを身に宿しています。
部下達と比較しても非常に戦闘能力が高く、強敵です。
・もれいびA…中肉中背の男。伸縮式の警棒を所持。
ろっこん:警棒にキスをすると、警棒を包み込むようにオーラの刃が形成される。
・もれいびB…身体が大きく筋肉質な男。投げ技を得意とする。
ろっこん:対象を三秒以上指差すと、指差している間だけ、
対象と自分との間に引力を発生させる。
・もれいびC…小柄な女。オートマチックの拳銃を二丁所持。
ろっこん:後方宙返りを決めると、身に着けている物ごと、豹に変身する。
声帯は人間のままで会話が可能。
・もれいびD…スキンヘッドの痩せた男。バタフライナイフを所持。
※この男のみ、もれいびでありながら腕章を外して懐にしまっており、
部下の黒服達に紛れている。
ろっこん:集中してタバコに火を点けると、自分を中心とした一定範囲に、
「ひと」には外から認識できない領域を作り出す。
※フツウを脅かす行動ではありますが、黒服のろっこんは自由に使える仕様になっています。
黒服達のボスは、ある研究機関に所属しているようです。
その目的は、もれいび達の能力を解析し、自由自在にろっこんを生み出して、最強の兵士を作り出すこと。
皆さんが捕まってしまえば、大変な事態に直面することでしょう。
長くなりましたが説明は以上となります。
内外の力を合わせて、この難局を無事に乗り切ってください。
逆襲の時は今なのです!