逆襲の時｜リアクション

逆襲の時

　傷を負いながらも服部剛は奮闘した。敵から奪った警棒を振り回した。
「ようもやってくれたな！　剛さんを舐めたらあかんで！」
　目にした小柄な黒服の頭部に警棒を振り下ろす。難なく真横に躱された。逆に滑るようなフットワークで迫られ、剛に軽いパンチを浴びせた。
　顎が上がりながらも警棒で反撃。しかし、当たらない。黒服は深追いせず、後ろに下がっていた。
　剛は頬を摩りながら黒服を睨む。
「ボクシングやな。パンチは速いが、一発が軽いで。ＫＯは無理やな」
「何十発も受ければ、どうなるか。俺が試してやろう」
　黒服は口だけで笑った。滑るように距離を詰めてくる。剛は相手の間合いに入らないように後退した。警棒の長さを最大限に活かせる距離を保とうとする。
「俺の足から逃げられるかな」
　どこからか、鈴の音が聞こえた。黒服は瞬間、沈み込んだ。慌てた形相で両腕を広げて落下を免れた。
「えらい、無様な格好やな」
「ま、待て、やめろ」
「一発でＫＯできるか。今度は俺が試す番や！」
　剛は黒服の頭部に拳を叩き込んだ。一発で闇の中に沈み、重々しい音を響かせた。突然に開いたマンホールの蓋は自動で閉じられた。
「ビンゴですわ！」
　離れたところで上下左右が喜んでいた。鈴を鳴らすことで『Dear Door』のろっこんが発動して開閉が可能な物を操れるようになる。
「ありがとな！　正直、助かったで」
「力になれて嬉しいのですわ」
　左右は片方の手でスカートの裾を摘まむと礼儀正しく一礼した。