逆襲の時｜リアクション

逆襲の時

　四方から襲われることを避ける為に霧谷朧は無力な子供達を壁際に連れていった。
　護衛役を買って出たのはティクス・ソルであった。小柄な身体を存分に活かし、襲い掛かる黒服を撃退した。皮肉なことに敵方から奪った警棒が猛威を振るった。
　ティクスに二人の黒服がにじり寄る。どちらも凶器を持っていた。短刀と歪な形のバットであった。
「面倒だな」
　ティクスの一言に朧が反応した。両手で目を隠し、もういいよ、と口にした。
　ろっこん『ハイドサイト』の効果で朧は消えた。見えない姿となって短刀を構える黒服に近づく。音を立てず、相手の側面から膝を押すようにして蹴った。
「おわっ！？」
　見えない攻撃に片膝が曲がり、バランスを崩した。ティクスは瞬時に前に出た。警棒で短刀を叩き落とし、下がった相手の顎を膝で勢いよく撥ね上げた。
　残りの黒服がバットを振り被る。既に手遅れで顔面に警棒がめり込んでいた。
　均衡が崩れた瞬間、勝敗は決していたのだ。ティクスは新田樹がろっこんで奪ったロープを使って気絶した二人を縛り上げた。
「おしまい」
　見届けた朧が現れた。
「なんとかなったね」
「上出来だ」
　ティクスは朗らかに言った。目を子供達に向ける。泣き出しそうな女の子を見つけた。ゆっくりとした足取りで向かい、震える頭を撫でた。
「よく頑張ったな」
「うん、泣かなかったよ」
「そうだな」
　女の子が落ち着くまで、ティクスは優しい眼差しを送り続けた。