逆襲の時｜リアクション

逆襲の時

　サキリ・デイジーカッターは攻守を巧みに使い分けていた。非力な者を比較的、安全な場所に誘導した。降り掛かる火の粉は衣服に仕込んでいた各種ナイフで振り払う。
「ここで身を低くしていればいい」
　うら若い女性を間仕切りの鉄骨の裏に潜ませる。自身は騒乱の中心に戻った。
「あれは」
　赤い腕章が目に入った。中肉中背の男で伸縮式の警棒を握っていた。周囲の状況に苛立つような視線を向けて、不意に所持した武器にキスをした。
「ろっこんか」
　変化に目を見張る。男の警棒は青白いオーラに包まれ、凶悪な刃を形成した。
　犠牲者が出る前にサキリは動いた。
「物騒なものを持っているじゃないか」
「丸腰のガキは隅で震えていろ」
「悪いな。ただのガキではなくて」
　サキリは衣服に仕込んでいたナイフを手にした。二刀流で堂に入った構えを見せる。
「そのようだな」
　男はオーラの切先をサキリに向けた。互いに敵と認識して対峙した。
　間合いの取り合いの様相を見せる。サキリは脳内で空間を切り裂き、『斬空赤刃』のろっこんを発動させた。
　瞬間移動で間合いを詰める。逆手に握った左手のナイフは赤く輝き、男の腕を切りにいく。
「面白いろっこんだ」
　オーラの刃は赤いナイフを止めた。それだけではなく力で押し返す。右のナイフが空振りした直後に自ら後方へと跳んだ。
　着地したサキリは片方の犬歯を見せて笑った。
「硬いな」
「簡単に斬られるなよ」
　男は残忍な笑みで一歩を踏み出す。
「そちらもな」
　サキリは二度目のろっこんを発動させた。
　瞬間移動で消えて、男の正面に現れる。
「真っ正直なガキだ」
　待ち構えていたのか。男はオーラの刃を大上段に構えていた。
「やっぱりね」
　サキリは赤いナイフを順手に持ち替え、交差させていた。振り下ろされる一刀に合わせて薙いだ。
　赤い飛沫が上がった。赤いナイフに挟まれ、切断されたオーラの刀身は宙を舞い、数秒で霧散した。
　男は両膝を突いた。警棒を落として両腕をだらりと下げた。上腕を水平に切り裂かれ、大量の血が滲む。
　サキリは交差させたナイフを男の喉に突き付ける。
「どうする？」
「……俺の、負けだ……」
　男は謝るかのように項垂れた。