逆襲の時｜リアクション

逆襲の時

　源竜世は目を丸くした。
「あー、もうはじまってるじゃん！　ナイトがうるさく言うから！」
「最初の作戦が酷過ぎたからな。今となっては戦うしかないだろ」
　眼付きの悪い青年然としたナイトは苦笑いを浮かべた。
「やるしかない！　ナイト、行くよ！　タイラをたすけるんだ！」
「マスター、了解だ」
　二人は混乱の渦に向かって走り出す。短刀を持った黒服が立ちはだかる。
「どうやって抜け出した！」
「うるせー！　バーカ、バーカ！」
　竜世は叫んだ。単純な言葉だが相手を激怒させた。
「切り刻んでやるぜ！」
「俺がさせるか！」
　ナイトは竜世の前に出た。走りながら拳を固める。
「人には越えられねぇ、恐怖を教えてやるぜ！」
　黒服は短刀を突き出した。ナイトの目を狙う。掠めるようにして避けるとカウンターの右拳を顔面に打ち込んだ。
　黒服の両脚が床から離れる。半回転した。コンクリートの床に後頭部を打ち付けて転がった。
「バ、バカな……瞬きも、しない……そんな、人なの……か、よ……」
「人じゃねーよ。カプセルギアだ」
「だよな！」
　竜世とナイトはハイタッチを交わす。その後、見つけたタイラ・トラントゥールの元に駆け寄った。
「たすけにきたぞ！」
「なんで戻ってきたんだ！」
「ともだちなんだから、あたりまえじゃん！」
　少しむくれる竜世にタイラは、悪い、と小さな声で謝った。
「無事に逃げられたのだから、助けを呼ぶとかできただろうに、全く」
「あ、そうだな！　思いつかなかったぜ！　そうだよな、ナイト！」
「俺を巻き込むな」
　ナイトは渋い顔で言った。
「タイラ、まだいたのかよ」
　走ってきたのは楢木春彦であった。
「こんなところにいたら危ねーだろ」
　説教の間を与えず、一人の黒服が横手から突っ込んでくる。手には木刀を持っていた。春彦は面倒臭そうに左耳のピアスを二度、撫でる。『Stairs of air』のろっこんで本人にしか見えない足場を作った。
　黒服は全く気付かない。速度を緩めることなく、足場を腹部に受けた。身体を不自然に折り曲げて後方に吹き飛んだ。一振りも出来ず、口から血の泡を吹いた。
「今のはなんだ！？」
　驚くタイラを余所に春彦は隅の方に連れていく。竜世とナイトも付いていった。
「ここがいいな」
「ボクの質問に答えろ」
「まあ、待てよ」
　ろっこんで高さの違う足場を作る。天井に近いところには大きな足場を用意した。
「これでいい。ナイトだっけ。そこのタイラを投げてくれ」
　春彦は中程の足場に立って言った。他の者の目には空中に浮いているようにしか見えない。
「意図はわかったぜ」
　ナイトはタイラを抱えた。言われた通り、放り投げる。
「ナイトだけにナイス！」
　春彦は見事にキャッチした。速やかに最上段の足場に投げる。タイラは驚きの顔でへたり込む。見えない足場を撫でてみた。
「見えないが、何かある？　これがろっこんなのか」
「そういうことだ。タイラにもあるんだろ？　ボスの情報、助かったぜ」
　続けて竜世を最上段に送った。
「そこにいれば安全だな！」
　春彦は笑顔で走り去った。