逆襲の時｜リアクション

逆襲の時

　両腕を胴体に括り付けられた楢木春彦は腹部を黒服に蹴られ、コンクリートの床に倒れ込んだ。その窮地にありながら反抗をやめない。口での罵倒を繰り返した。
　その結果、別の黒服に顔面を殴られ、気絶した。
「……い……ってて……あれ、ここは？」
「……目が覚めてよかったよぅ」
　側で胡坐を掻いていた呉井陽太が潜めた声で言った。
　春彦は苦痛に歪む顔で上体を起こし、少し咳き込んだ。腹部を蹴られた影響が残っているようだった。
「……呉井、どうなった？」
「みんなのおかげで色々とわかったんだよぅ」
　監禁されている地下駐車場は寝子島にある。赤い腕章を付けた者達は幹部で、もれいびの可能性が高い。スキンヘッドの黒服は言動から幹部と推測。特殊なろっこんを使用している等、陽太は手短に伝えた。
「なんとか、なりそうだな」
「……ボスはもれいびを連れているって。聞いた時は四十分だけど、今だと三十分くらいで、ここにくるみたいだねぃ」
「アイツら全員を相手にしてるヒマはねぇか……」
　春彦は悔しそうな表情で呟いた。目を周囲に向ける。構造を中心に見ていく。
「……隠れる場所があまりないな。逃げ込めそうなところは、あんま期待できねぇか」
「ろっこん勝負になりそうだよぅ」
「なら、俺の出番だな。いろいろ使えるし、妨害なら任せろ」
　ガキ大将の顔で言って退けた。
「オレはスキンヘッド狙いでいくねぃ」
「じゃあ、俺はあのでかい腕章のヤツだな。その前に子供を何とかしねぇと」
　春彦はタイラ・トラントゥールを横目で見た。