逆襲の時｜リアクション

逆襲の時

　霧谷朧は捕らえられた子供達を気に掛ける。
　――あんな小さな子まで連れてきて……鼻血まで……絶対に許さない。後悔させてやる。
　その間も様々な情報が回ってきた。朧は静かに耳に入れる。
　――俺のろっこんは両手が自由にならないと使えない。動いている仲間を信じて今は反撃に備えればいい。
　強く心に言い聞かせる。前髪から僅かに覗く茶色い眼は怒りで血走っていた。
　どこからか押し殺したような泣き声が聞こえてきた。目は小さな女の子を捉えた。両手首と両足首を縛られた姿でコンクリートの床に横向きに倒れていた。片方の頬が赤く腫れていて目からは涙を流している。コンクリートの一部が黒く変色していた。震えるような声で、ママ、と何度も口にする。
　朧の全身が震えた。溢れ出す激情に身を焼かれた。
　――おとなしい子はすぐに消えてしまう。色んな意味で。
　そんな子はいなくなっても何も思われないんさ。そういうのは得意だ。
　女の子に精一杯の笑みを向ける。怒りを力に変えたのか。震えは収まっていた。
　朧は背筋を伸ばし、好機に備えた。