【七夕】灯りをつけましょ提灯に☆｜リアクション

【七夕】灯りをつけましょ提灯に☆

「英二くん英二くん」
「その顔は……参加してみたい？」
「ぴんぽーん！」

　笑いを交わし合ってから、佐藤英二と野々ののこは『ささのはコース』にて提灯を受け取った。
　寝子島神社を抜けて耳福池へ。
　一緒に提灯握る小柄な手の温度に時々意識しては、早くなる鼓動を誤魔化すように英二は会話を投げる。
　日々の学校生活の事。三寮祭の事。振ればののこも思い出すように目を細め、楽しそうに話題に乗ってくれる。
　もうすぐ来る夏休みから、宿題の話になった時はにが～い表情になっていたけれど。
　困ったら頼って、と言い切れるほど自分も勉強に自信があるわけではない。
　だから、大変だったら一緒にがんばろ？　と英二らしい言葉にすれば、ののこもパッと再び瞳輝かせたり。
　池の中ほどまで歩いた辺りで、今度はののこがそういえばと言葉を繋いだ。　
　
「さっきね、屋台の射的にゴアラ人形があったよ～」
「え！？　本当！？」
「お。英二くん、やっぱり食いついたね？」
「よくゴアラだって分かったね野々さん」
「へっへー♪　伊達に英二くんから漫画借りてないぞぉ」

　指でピースを作りながらドヤ顔するののこ。
　後でその屋台行ってみる～？　と聞いてくれるののこへと、是非！　なんて舞い上がった声が出れば、
　自分を笑顔にしてくれるこの楽しそうな表情が、隣りに在ると嬉しいんだなーとしみじみ実感する。
　感慨纏ってふと空を見上げた英二は、あっ、と溢した。

「野々さんっ、見て！　あそこ、雲が少し切れてるところ……」
「んー？　……あー！！　天の川だあ！」

　これで満天の星空だったらなお嬉しかったけど、という思いが出そうになったところへ、
　曇り空だった昏い天の隙間から、まるで雲の窓を開けて自分たちをそっと覗いて見守ってくれているような、星々の川が垣間見えた。

　き～ら～き～ら～ひーかーる～♪

　嬉しそうな歌声が横から響いた。
　目が合えば歌を止め、にっこー！　と満面の笑顔浮かべてくれるののこへ、英二も気付けば口ずさんでいた。

　さ～さ～の～葉～　サーラサラ～♪

　そっかそっちだった！！
　輝く瞳があきらかにそう言っているのを見ながら、英二は続ける。
　その内、ののこの声もそこに重なれば、歩調は更にゆっくりになりながら二つの歌声がしばし耳福池を彩っているのだった。