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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
【七夕】灯りをつけましょ提灯に☆
ペア、ペアか。周りはカップルばかりだけれどさして気にする程でも無いか、という主導の下、
現在散策中なヴェルト・レトランジェとメーベル・コルテージュ。
「そういえば……七夕というのは、神の怒りを買って引き裂かれた二人が、一年に一度だけ会うことを許された日……だそうですよ。その二人が織姫と彦星という訳ですが……
そのような二人にお願い事をするというのは、些か不思議な文化のように感じますね」
「会えない間が暇なのではないかね。その間に願いを叶えて回るとか。どちらにせよ奇特な事だ」
「……先生に少し似ていますねそれだと」
「僕は確かに退屈は好きではないけれど、楽しくない事にわざわざ動く気にもなれないのだが？」
―― 俺の願いを、日々叶えてくださっているんですけどね。
とは口にせず。二人の中央で触れる提灯の仄かな光を受け、微か細められる瞳が成程とだけ頷かれた。
と、その瞬間、灯っていた提灯が風も無い中ふいに消えた。
ついでに互いの姿も消えた。
「……おや。……へえ、よくある余興かと思えば……」
どちらかが捕らえられ、どちらかが探すようなアトラクションかと一瞬過ぎったけれど。
メーベルの姿が消えただけでは無い。己を囲うように、『先生』『どちらにいますか』などと聞こえてくれば
ヴェルトは心から愉快そうな色を顔中に浮かべた。
中々凝っているね、それとも神魂かな。
ひたすらにこちらを惑わせたいという声色を察すれば、ヴェルトも笑ったまま口を開く。
「へえ？ そういえば君、満月の夜はどうなるんだっけ？」
『なんでしょう、突然』『先生がご存知の通りですよ……』
ほぉ。そういう誤魔化し方で来たか。ヒトを揶揄い慣れている輩かね。
試す言の葉への返答から得たものを、満足そうに受け止めてから。
―― ともあれ、メーベルを探さないとまずいね。あれは僕のことを何も知らないから。
拾ってから今まで、ろくにこちらの事を知ろうとする素振りを見せない彼。
まるで何かに怯えているふうに。
―― 全く、そんな世話の焼けるところも時折可愛いとすら思える僕も、大概かね……。
絶えず響く声たちをもはや無視し、ヴェルトは足を踏み出した。
「先生、ご無事ですか？ 先生……？」
『こちらだよ、メーベル』『早く来たまえ』
方々から耳に心地の良い声がしてくれば、厄介な事態なのだとメーベルも察していた。
―― ……どれが本物の声、なのでしょうか……。
存在感が消えた途端、不安に見舞われる。
早く先生の元へ向かわなければならないのに、俺は、先生のためだけに生きているのに……
解らない、なんて、そんな事。
自分は今まで一体何を見て来たのだろう。
何を学んできたのだろう。
不甲斐なさで心が軋んだ。
「まったく、つまらない男だね。相変わらず」
「……先生？」
何の光も捉えない瞳が閉じられそうになった時、真っ直ぐこちらへ向けられた言葉に条件反射のように顔が上がった。
その視線の先には、紛れもない光が、呆れたようにそれでも自分をその瞳に映してくれる存在が在った。
「ほら、僕はここだよ」
頭で無く心が叫んでいた。ああ、先生だと。
安堵と共に、メーベルはまた自責の念に苛まれる。
「先生を探すどころか、先生のお手を煩わせてしまうとは……申し訳ございません」
―― 俺はずっと先生だけを見て生きてきたのに、こんなものに惑わされるとは……
これでは執事失格、ですね。
伏せた表情から、ヴェルトは全て読み取って。あっさりと言い放つ。
「君は僕のことを何も知らない。惑わされるのも仕方がないよ」
「……しかし」
「何故知らないのか、そこに至れるならばこれも無駄じゃないさ。さて、行こうか」
ちなみに僕は中々に面白かった、と笑みを向けられれば、暫し困惑の色を浮かべていた目がその色を奥へと引っ込めた。
「……先生には、もう少し解りやすくなって頂きたいものです」
「何を言うか。こんなにも正直に生きているのに」
正直ショックであった。
己が生きる理由を失う以上に、その理由を己が自身が理解していなかった事が。
しかしメーベルは、それ以上を表情に出すことを拒否する。なんでもないように振る舞っては改めて、生きる理由、そのはずな存在の隣りへと並んだ。
これ以上頼っては、本当にいつか傍にいられなくなるから。
自分自身を許せなくなってしまうから。
先生がくれた言葉を反芻しては、大切に心の奥へと仕舞う。
いつか、分かる日がくるだろうかと微かな希望と共に。
分かる日が来るまで、せめてまだ傍に在れることを願いながら ――
現在散策中なヴェルト・レトランジェとメーベル・コルテージュ。
「そういえば……七夕というのは、神の怒りを買って引き裂かれた二人が、一年に一度だけ会うことを許された日……だそうですよ。その二人が織姫と彦星という訳ですが……
そのような二人にお願い事をするというのは、些か不思議な文化のように感じますね」
「会えない間が暇なのではないかね。その間に願いを叶えて回るとか。どちらにせよ奇特な事だ」
「……先生に少し似ていますねそれだと」
「僕は確かに退屈は好きではないけれど、楽しくない事にわざわざ動く気にもなれないのだが？」
―― 俺の願いを、日々叶えてくださっているんですけどね。
とは口にせず。二人の中央で触れる提灯の仄かな光を受け、微か細められる瞳が成程とだけ頷かれた。
と、その瞬間、灯っていた提灯が風も無い中ふいに消えた。
ついでに互いの姿も消えた。
「……おや。……へえ、よくある余興かと思えば……」
どちらかが捕らえられ、どちらかが探すようなアトラクションかと一瞬過ぎったけれど。
メーベルの姿が消えただけでは無い。己を囲うように、『先生』『どちらにいますか』などと聞こえてくれば
ヴェルトは心から愉快そうな色を顔中に浮かべた。
中々凝っているね、それとも神魂かな。
ひたすらにこちらを惑わせたいという声色を察すれば、ヴェルトも笑ったまま口を開く。
「へえ？ そういえば君、満月の夜はどうなるんだっけ？」
『なんでしょう、突然』『先生がご存知の通りですよ……』
ほぉ。そういう誤魔化し方で来たか。ヒトを揶揄い慣れている輩かね。
試す言の葉への返答から得たものを、満足そうに受け止めてから。
―― ともあれ、メーベルを探さないとまずいね。あれは僕のことを何も知らないから。
拾ってから今まで、ろくにこちらの事を知ろうとする素振りを見せない彼。
まるで何かに怯えているふうに。
―― 全く、そんな世話の焼けるところも時折可愛いとすら思える僕も、大概かね……。
絶えず響く声たちをもはや無視し、ヴェルトは足を踏み出した。
「先生、ご無事ですか？ 先生……？」
『こちらだよ、メーベル』『早く来たまえ』
方々から耳に心地の良い声がしてくれば、厄介な事態なのだとメーベルも察していた。
―― ……どれが本物の声、なのでしょうか……。
存在感が消えた途端、不安に見舞われる。
早く先生の元へ向かわなければならないのに、俺は、先生のためだけに生きているのに……
解らない、なんて、そんな事。
自分は今まで一体何を見て来たのだろう。
何を学んできたのだろう。
不甲斐なさで心が軋んだ。
「まったく、つまらない男だね。相変わらず」
「……先生？」
何の光も捉えない瞳が閉じられそうになった時、真っ直ぐこちらへ向けられた言葉に条件反射のように顔が上がった。
その視線の先には、紛れもない光が、呆れたようにそれでも自分をその瞳に映してくれる存在が在った。
「ほら、僕はここだよ」
頭で無く心が叫んでいた。ああ、先生だと。
安堵と共に、メーベルはまた自責の念に苛まれる。
「先生を探すどころか、先生のお手を煩わせてしまうとは……申し訳ございません」
―― 俺はずっと先生だけを見て生きてきたのに、こんなものに惑わされるとは……
これでは執事失格、ですね。
伏せた表情から、ヴェルトは全て読み取って。あっさりと言い放つ。
「君は僕のことを何も知らない。惑わされるのも仕方がないよ」
「……しかし」
「何故知らないのか、そこに至れるならばこれも無駄じゃないさ。さて、行こうか」
ちなみに僕は中々に面白かった、と笑みを向けられれば、暫し困惑の色を浮かべていた目がその色を奥へと引っ込めた。
「……先生には、もう少し解りやすくなって頂きたいものです」
「何を言うか。こんなにも正直に生きているのに」
正直ショックであった。
己が生きる理由を失う以上に、その理由を己が自身が理解していなかった事が。
しかしメーベルは、それ以上を表情に出すことを拒否する。なんでもないように振る舞っては改めて、生きる理由、そのはずな存在の隣りへと並んだ。
これ以上頼っては、本当にいつか傍にいられなくなるから。
自分自身を許せなくなってしまうから。
先生がくれた言葉を反芻しては、大切に心の奥へと仕舞う。
いつか、分かる日がくるだろうかと微かな希望と共に。
分かる日が来るまで、せめてまだ傍に在れることを願いながら ――
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2018年09月22日
- 参加申し込みの期限
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- 2018年09月29日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2018年09月29日 11時00分
