＜零神探訪＞千年茨の遺跡（グリーン・ルインズ）｜リアクション

＜零神探訪＞千年茨の遺跡（グリーン・ルインズ）

●鈴島：赤の回廊、小部屋２

「ストップ。入る前に確認したいことがある」
　楓が皆を立ち止まらせた。
　円とさゆるに懐中電灯で室内の足元を照らすよう頼み、自分は回廊側から室内の足跡を確認する。
　人が踏み入った形跡があるかどうか――。
（……ある）
　楓はそれを見て取った。床の砂埃が乱れている。誰かが通ってから、まだあまり時間は経っていないようで、足跡は真っすぐ小部屋の出口の方へ進んでいる。部屋の中を物色した様子はない。
「通り過ぎただけ、ってか。であれば、この道を最短で進んで追いつくか」
「待って」
　さゆるがＬＥＤライトを天井の方に向けていた。
　そこに、青の幽玄で見たのと似たような壁画が描かれている。
「なになに？」
　円も懐中電灯の明かりを天井に向けたことで、壁画の全貌が見て取れた。

　すっくと立った黒き狼の横顔。その足元に羽根と頭を垂れて跪く黒い烏。
　烏の周りに散らばる果実だけが赤い色で描かれている。
　苺だった。そして、この中の数名は、クローネが大の苺好きであることを知っていた。
「烏の方はクローネに間違いないだろうね」とサキリが言った。
「黒き狼と黒き鳥がクロードとクローネの祖先、あるいはその成れの果てかな？」
　それに対し「狼の方は絶神じゃないかな」と円が言った。「同一の神なのかもなぁ、女神が零神で、狼の神が、絶神とか」
　改めて見れば、狼は烏の額に長い爪の先を喰い込ませている。
「狼が烏を服従させているようにも、洗脳しているようにも見えるわね……」
　さゆるはそう言ってスマホで撮影し、写真を寝子島の調査班および青と緑班に送った。
　その間、円はまだうーんと唸っていた。
「これって、神話かなにかを描いたんだよね。クローネは絶神の配下だった？」