＜零神探訪＞千年茨の遺跡（グリーン・ルインズ）｜リアクション

＜零神探訪＞千年茨の遺跡（グリーン・ルインズ）

●鈴島：青の回廊、小部屋２

　赤の部屋の壁画のことを聞いていたので、刀も焔も、部屋に入るとすぐに懐中電灯やペンライトで天井を照らした。
「やっぱり」
　壁画は、あった。
　送られてきた赤の小部屋の壁画と、同じ年代、同じタッチと思われる画だった。
　ただ、内容は違う。
　半分が青、半分が黒く塗られた天井。青の方には零神と思しき女神が浮かんでおり、黒の方は巨大な白い円の中で丸くなっている狼――絶神が描かれている。
「これは……何を意味してる？」
　庚がつぶやく。
　刀は記憶を手繰った。
「これが神話の一場面だとしたら、前の落神――零神が去ったとき、か？」

　　「……海を見たい」
　　島民は神様を担いで山を下りた。陽の光を浴びてキラキラと輝く海を、見せてやった。
　　すると、この世の混沌はおさまって元に戻り、神様は去っていったというのだ。

　伝承ではそう語られている。
「この黒い方の半分は何を意味しているのでしょう？」
　梢が首を傾げると、刀はまた考え込む。
「あの伝承の裏で、絶神が負けてどこかに封じられた？」
「ってぇと、なんだ、クロードの目的は、絶神の封印を解くことか？」
　康の眉間に皺が刻まれる。
　そのために、四十九院先生が必要だとでもいうのだろうか。

「思うんだけど」と焔が言った。
「壁画を見る限り、今この世界は、零神が負けた世界にはなってないんじゃないかしら？　絶神の方が負けてる絵よね、これ」
「ううむー」
　そうかもしれない、と梢も唸る。
　すると刀が別の疑問を口にした。
「そもそも何が目的でここ作られたんだ？　壁画といい、絶神の手掛かりがあるのかね……あの像のように落神と絶神が同じ扱いされている所もあるし、もしかしてかなり密接な関係なのか？」
「そいつぁ、ここに絶神が封印されている、とかか？」
「それとも封印を解くのに必要な何かがあるんでしょうか？」
　口々に推測を語り出したその時、見張りに立っていた亮が鋭い声で皆を呼んだ。
「おい！　来てくれ！　道の奥から何か来る！」
　亮は口にしながら、大型ウェストポーチから野球の硬球を取り出し、構える。
「人……じゃない！　髑髏みたいな植物のモンスターだ！！」