＜零神探訪＞千年茨の遺跡（グリーン・ルインズ）｜リアクション

＜零神探訪＞千年茨の遺跡（グリーン・ルインズ）

●鈴島：赤の回廊、小部屋１

　緑の回廊班が意志ある茨と格闘していたちょうどその頃、朝鳥さゆるを先頭とした赤の回廊班の一行は、赤く塗られた薄暗い回廊を進んでいた。さゆるのあとにサキリ・デイジーカッター、そのあとを坂内梨香と桜庭円、しんがりを夜海霧楓が務めている。この班は冒険を楽しむというより任務に忠実な者が多く、円と梨香以外は、ほぼ無口だった。

（今回は連れ去られた四十九院鸞先生の救出ミッション──）
　さゆるは脳裏に四十九院先生の顔を思い描いてみようとしたが、無駄だった。黒いドレスと黒髪以外はごくごく曖昧にしか思い出せない。それもそのはず、あまり学校に顔を出さないさゆるは、四月からの新任で担当学年も違う四十九院先生とはほどんど面識がないのだ。当然のごとく特段の思い入れもない。
（こんなこと、あくまでも『緩やかな破滅に至る道程の暇つぶし』にすぎないわ……）
　虚無感で麻痺した心は、もう、何も感じない。
　だからもし、今日この遺跡で命を落とすようなことがあっても、ただ受け入れてしまうのだろう。
　蔓延る植物の根をナイフで切り落す。
　『緩やかな破滅に至る道程の暇つぶし』――さゆるはそう思っていたが、その割には「暇つぶし」以上の真剣さをもって事に臨んでいるように周りからは見えていた。

　サキリは、さゆるの一歩後ろで、梨香の一歩前を、警戒しながら進んでいた。「坂内さんは重要なアイテムを持ってるから、クロードが襲撃してくるかもしれない」というのがその理由だった。
　円は前をゆく二人よりはリラックスした足取りで、梨香に話しかけている。
「やっぱり、なんだかんで匣に関しては気になるよねぇ。匣の存在で零神という存在にりっか先輩が誘導されてるとして。これも開けるための過程だって事かな？」
「開けるための過程？」
「零神なのか絶神なのかわからないけどさ、まぁ、匣を開けさせようとしてるのは確かだろうね、その条件を今どんどん消化させてる気はしてる」
「誰かの意図通り、ってこと？」
　かもね、と円は曖昧に頷く。円にだってわからないのだ。ただ、そんな気がする。そんなところだ。
「そう考えると面白くないわね……」
「そう？　先輩のルーツの話を考えると突っ走っても面白いとは思うし、本当に深い意味は一番懐に入らなきゃわからない。その意図に乗るのも乙な事なんだよきっと」
　円の意見に、梨香は表情を和らげた。
「懐に入らなきゃわからない、か……それもそうね」
「匣が狙われるかもだし、一応警戒しとこ？」
「そうね」
　もうサキリ君がそうしてる。そんな思いで、梨香は自分を守るように前を行くサキリを見る。
　サキリは振り返って、もちろん、と目顔で頷いた。
　そのとき、先頭のさゆるが立ち止まった。
「部屋があるわ」