＜零神探訪＞千年茨の遺跡（グリーン・ルインズ）｜リアクション

＜零神探訪＞千年茨の遺跡（グリーン・ルインズ）

●鈴島：青の小塔、赤の小塔、通信

　緑の回廊班が小塔にたどり着いて間も無く、青と赤のチームもそれぞれ遺跡の左右の角に位置する小塔に足を踏み入れた。様子はどちらも緑の小塔とほぼ同じ。黒い面が上を向いた球体があり、天井には丸窓がある。
　違いは小塔の内部が真っ暗なことだ。
　構造や機能が緑の小塔と全く同じであれば、青の小塔は青の光を、赤の小塔は赤の光を放っていても良さそうなものであったが、そうなってはいない。

『レバー上げ下げしてみたが、明かりはつかねぇ』
『こちらも同じく』
　通信機の向こう、青からは如月庚の、赤からは朝鳥さゆるの声がする。
『あ、見てください。レバーの上にくぼみがあります。ここに珠を嵌めないといけないんじゃないですかー？』
　この声は、青の屋敷野梢。これに答えるのは、赤の坂内梨香。
『青の珠は私、赤の珠は緑の回廊班の恵御納さんが半身像と一緒に持っているわ』
　その後しばらくガサゴソと雑音がして、また梨香の声。
『青の珠をこちらのくぼみに嵌めてみたけど、ダメ。回廊の色と珠の色を合せないといけないみたいね。回り道になるけれど、わたしだけでもいったん戻って青へ行く？』
『待って』と青の神薙焔が言った。『小山内さんから送って貰った地図によると、中央で道が合流してるみたいじゃない？　みんなでそっちに向かう方が近いわよ』
『クロードがいるかも』と赤の桜庭円。
『望むところだ。いずれ対決しなければいけない相手だしな』と青の新田亮。
『そうだね。四十九院先生のことも気になるし……互いに近づけば僕も動ける』
　瞬間移動のろっこんを持つ赤のサキリ・デイジーカッターの声が続く。

　話がまとまりかけたところで、赤の夜海霧楓の声が割り込んできた。
『如月。ちょっといいか。気になることがあるんだが』
『何だ？』
『緑の方で、誰かが仕掛けを操作した痕跡があったって報告があっただろ？　妙なんだ。俺もこっちの道で人の痕跡を見つけてる』
『クロードと四十九院先生が別行動しているかもしれねえってことか？』
『そういう可能性もある。だが、そうじゃない可能性も考えておきたい。……青の回廊の方はどうなんだ？　自分たちより先に誰かが通ったような跡は見かけなかったか？』
『気づかなかったな。……こっちは脳筋ばっかだからよ。ちょっと、待て……』
　庚の声の背後で、梢の「いっしょにしないでくださいよ」云々という抗議の声がする。
　ややあって。
『おい。俺たちが誰も触ってねぇのに、部屋の真ん中にある球体に埃が積もってねぇのは、おかしいか？』
『おかしいね。台座の周りはどうだ？』
『台座の周りは……俺らの足跡もあってもうわからねぇが……くせぇ、な。誰かがここで何かをしていきやがった気配がぷんぷんするぜ』
『敵は一人、四十九院先生が寝返ってたとしても最悪二人なのに、三方向に痕跡があるのは、何故だ？』
　楓の独り言めいた疑問に、一つの声が答えた。
『クロードの能力は、『幽体離脱＋実体化』か『自己の分離・共存』じゃないか、と思う』
　声の主は、通信を聞いていた、緑の恵御納夏夜であった。
『零神か絶神の神魂を持つもれいびかもね』
『どんな能力を持っていようが、』
　と青の御剣刀の声。
『叩き切る。それだけだ』
　んもー、これだから青は脳筋ってなっちゃうんですよー、という梢の声が、全体の雰囲気を和ませる。
『はは、いや、話を戻すが、恵御納の意見は筋が通ってるぜ』
　楓が言った。
『青の幽玄で俺たちはクロード扮する『ジン』と行動していた。一方で、クロード自身であった『天師』は俺たちが突入したときすでに聖域にいた。『ジン』と『天師』。ふたりのクロード。俺たちはクロードが瞬間移動したような錯覚を起こしたが、自身を分かれさせることができるなら、説明がつく』
『やっかいそうね』
　梨香が言うと、
『気にするな。全部叩きのめせばいい』
　と亮の朴訥な声が返ってくる。
　んもー、これだから青は以下略ー、という梢の声がまた通信機越しに皆を笑わせた。
『さて時間もねぇ。俺たちは行く。中央で会おう』と庚。
『了解』と夏夜。
『みんな、気を付けてね』
　この梨香の声を最後に、通信は途切れた。