【七夕】ミルキーウェイに愛を叫べ　屋台も楽し～い♪｜リアクション

【七夕】ミルキーウェイに愛を叫べ　屋台も楽し～い♪

【愛を叫べ！】

「皆さんお祭りを楽しんでますかー？　『愛を叫べ！　ラブラブミルキーウェイ』の方も絶好調です！」
　賑やかな神社の中で、一際盛り上がる一角があった。そう、大声大会『愛を叫べ！　ラブラブミルキーウェイ』の開催場所である。
「さあ、まだまだ愛を叫び足りない出場者が沢山います！　それでは、次の方。薄野九月さんですー！」
　司会者の大きな声が響く。とん！　と元気に九月が壇上に立った。

（愛を叫ぶかー……うーんうーん）
　面白そうかと思って参加した九月。しかし実は直前まで何を叫ぶか悩んでいた。
（愛ってまだ良くわからない……けど！　あっ！）
　九月はぱっと閃いた。大好きなものでいいんだよね。それなら！
　壇の上で九月は大きく息を吸い込み叫んだ。

「わたし、綿あめ大好きだー！　甘くて、ふわふわしてて、お祭りにしか会えないけど、すっごくすっごく大好きなんだよー！」

　可愛らしい声が境内に響く。見物人達が笑顔で拍手をした。
（えへへ、楽しー！）
　たくさんの拍手を受け、照れながら九月は笑った。
　気持ち良かった！　……そうだ、せっかくだからまた大好きな綿あめ、買いに行っちゃおう！

＊

「可愛らしくて美味しそうな愛でしたね！　それでは、次の方。恵御納夏朝さんです！」
　淡い桃色地に可憐な木天蓼の花を配した可愛らしい浴衣を着た夏朝が壇に上がった。その横顔は緊張した面持ちだ。金平糖を舐めた途端、急き立てられるように愛を叫びたくなってしまった夏朝。しっかりと正面を向き、そっと叫んだ。

「僕は……僕には、とっても大切な人がいます。双子の姉のような……親愛の感情、というか……今は並んで立てないけれど……遠くて近い、大切な存在です」
　その名前は、言わなかった。―――願いが叶うか、時が経てば、いつかきっと言える。
「僕よりクールで、現実的な考え方をする事も多くて、意見が違う時もあるけれど……でも、僕の事を大切に思ってくれてて…」
　色々な思い出が蘇り、夏朝はふふと笑った。
「あと、意外と真面目にボケたり、猫さん大好きだったりとか…！」
　そこで夏朝は運営席にある大きな時計を見て気が付いた。まずい、時間が…！
「いつもお世話になってるよ、本当にありがとう…大好き…！」
　駆け込むように言い終え、夏朝はぺこりとお辞儀をする。途端に包み込むような温かい拍手を受けた。

（は、恥ずかしい……！　どうして急に叫びたく……）
　拍手の中、顔を赤くして壇上を降りる夏朝。それでも何だかすがすがしい気持ちだ。

＊

「大切な人への、温かい愛でしたね……！　それでは、次の方。仙藤蒼さんです！」
　たたん！　と元気よく壇上に立ったのは蒼だ。蒼は大きく息を吸い込むと、くすぶる想いを思う存分声に乗せた。

「あたしはお姉ちゃんが大好きー！　とっても美人で優しくて女子力高いし、えーと、それから……とにかく、あたしはお姉ちゃんが好き好き好きだーい好きっ！」

　……ぜーぜー。くらりとするくらいの大声で叫んだ蒼は思わず肩で息をする。熱烈な姉妹愛は見物人隅々まで行き渡り、わっと拍手が起こった。
　その人波の中に、熱烈に愛を叫ばれた本人、仙藤紫もいた。性格上そんな絶叫などできない紫は、蒼が参加するのを見ていたのだ。
「ちょ、ちょっと蒼……」
　当の紫は真っ赤になって絶句していた。
（ゲームの事でも叫ぶのかと思ったら、まさか私の事なんて……！）
　驚くやら、恥ずかしいやら。もう紫はひたすらに俯くしかなかった。

　そんな紫を、蒼は壇上から見つけていた。
（お姉ちゃん、聞いてくれた？）
　後悔なんかしていない。だって今の気持ちは本物だもん。
　蒼はとびきりの笑顔で紫に向かってぶんぶんと手を振った。