【七夕】ミルキーウェイに愛を叫べ　屋台も楽し～い♪｜リアクション

【七夕】ミルキーウェイに愛を叫べ　屋台も楽し～い♪

（金平糖……俺も食べようかな）
　想いを込めて短冊を吊した来島アカリはこそりと袂を探った。東条あんずや千歳飴楓子、立花なつらがわいわいと金平糖を食べているのを見て、自分も貰ったのを思い出したのだ。
　巫女さんから渡された青い金平糖。それをころりと口に含むと。
（あ、あれ……？）
　アカリは戸惑った。気分転換に甘い物でもと思って食べた金平糖だったのに。
（……何でだろ、ちょっと会いたくなっちゃった……かも）
　柔らかな甘い味と共に想い人の笑顔が胸に迫り、一層恋しい。１年に１度だけ会える天空の恋人達の悦びにあてられてしまったのだろうか。
　アカリは何かに背を押されるようにスマホを取り出した。
（夜もお祭りは続くし……誘うだけ誘ってみるくらいなら……）

　アカリが少しだけ震える手で誰かと連絡を取っている頃、楓子達３人にも異変が起こっていた。
「美味しい」
「そうだなー！」
　楓子は紫、あんずとなつは黄色の金平糖をむぐむぐ食べていたが。真顔で楓子が口を開いた。
「唐突にメチャクチャ人肌が恋しい」
「……どうしたのかーちゃん」
「人肌恋しいって何だー！？」
　きょとんとするなつとあんず。しかし楓子は無言のままあんずに近付くと、突然ぐわあっとあんずを抱き上げた。
「楓子？！　どーしたー！？！」
　目を白黒しながら叫ぶあんず。けれども楓子はその体を離さない。
「重い。重いけど人肌が恋しいから離せない」
　ぎゅう。楓子はすりりとあんずの柔らかい体に頬を寄せる。しかし所詮スマホしか持たないその細腕。すぐにぷるぷるし始めた。
「めっちゃ手が震えてるぞ楓子！？　大丈夫か！？」
「大丈夫かは分からないが離したくない……あっでももう駄目だ」
「ああああああ？！」
　―――どすん！　言った傍から手を離されたあんずは思い切り尻から落ちた。
「あんずちゃん？！」
「うーっめっちゃ痛い……」
「…………すまん」
「あんずどーした？」
　連絡はついたのだろうか、スマホを仕舞ったアカリも何事かと覗きに来る。あんずは地べたに座ったまま盛大に両腕を振り回した。
「もー！　おいしいもの買ってくれないと許さないんだからなー！！」
「……あんず、お前まだ食べる気か……？」
　アカリが思わず呟いた。

　結局。楓子に思い切り色々買って貰ったあんずはほくほく顔で戦利品を頬張っていた。
「いか焼きもおいしいぞー！　アカリも食べたらいいぞ！」
「お前がそれを言うか……」
　前半戦でさんざあんずにたかられたアカリ。
（俺も食べたいけど……むー……）
　空っぽの財布を悲しそうに見つめると、ご満悦なあんずの横で深い深い溜息をついた。

「なかなかの大暴れだったけど、大丈夫かーちゃん？」
　隣を歩く楓子に問いかけるなつ。
「うむ」
　楓子は無表情でなつにもたれかかりながら、あんずの物と一緒に買った新たな食べ物をもぐもぐと頬張っていた。
「……ずい分くっついてくれるね？」
「うむ」
　もぐもぐもぐもぐ。人肌恋しさがまだ無くならない楓子は、なつの言葉に素直に頷きながらチョコバナナを食べ続ける。と、楓子が山盛りにとふりかけて貰ったチョコスプレーが、ポロポロとなつの浴衣に零れてしまった。
「あ、ごめんかかったもぐもぐ」
　食べる手は止めないまま、そしてなつにピッタリと寄り添ったまま、視線を落とし楓子が言う。
「あー、浴衣これ夜まで着てるのに～」
　カラフル模様になってしまった浴衣をなつがつまむと、楓子がひょいと手を伸ばした。
「たこやきのソースじゃないだけマシだったなもぐもぐ」
　なつから離れないまま、楓子はもったいないと言わんばかりにべしべしとスプレーを拾い、食べていく。
「しょうがないなあ……」
　なつは一応困り顔をするが、そのペリドットの瞳は優しい色が載せられている。結局楓子には甘いのだ。
「なんか俺もお腹空いちゃったし……次は何食べよっか？」
　チョコを口に付けたままきょとんと自分を見上げる楓子に、なつはにっこりと微笑んだ。