【七夕】ミルキーウェイに愛を叫べ　屋台も楽し～い♪｜リアクション

【七夕】ミルキーウェイに愛を叫べ　屋台も楽し～い♪

　屋台で甘い物を食べて幸せ気分になった八神修と七夜あおい。神社の大鳥居までやってくると、巫女さんから短冊と金平糖を渡された。
「まあ七夕と言ったら笹と短冊だな。あおいの家は笹とか飾る方？」
「うん、下が５人いるしね～。家族が短冊書いて飾り付けをしたら、笹はすぐいっぱいになっちゃうよ」
　七夜家の微笑ましい話に修の目も細くなる。
「修君のお家は？」
　あおいに問われ、修はああと微笑んで言った。
「家は笹の小枝を生け花みたいにして玄関に置いたよ。小さな短冊に皆の健康を願ってね―――家、ペット沢山飼ってるしさ」
「ああ、沢山お出迎えしてくれたねー」
　それは、修が一時的に記憶をなくした時。「あの時はごめんな」と修は改めて謝った。
「あいつら懐っこくて。あおいを驚かせちゃったな。いつもあおいが来る時は別の部屋なんだ。……そういえば、どうして犬が苦手？」
「小さい頃追っかけられてから、どうしても苦手で。……あっ、でも修君のお家の子達がどうこうって訳じゃないからね！」
　修が不快にならないように気を遣っているのだろう、あおいが付け足す。
「ありがとう」
　あおいの優しさに修が笑顔で言った。

「何を書こうかな～」
　あおいが短冊を前に考えてる横で、修は何の気なしに巫女さんから貰った白い金平糖を口に含んだ。すると。
（……何だ？）
　修は眉を顰めた。変だ、としか言えなかった。いつも全てに冷静であれと思っているのに……突然あおいへの愛を叫び出したくなったのである。
（それはマズイだろ！）
　こんな所で叫んでしまえば、衆目もあるし迷惑になる。唇を噛み全力で我慢している修に、あおいが首を傾げた。
「修君どうしたの？」
「いや、何と言うかその……叫びたいというか……」
　君への愛を、何て言える訳がない。内心だらだらと脂汗を掻く修にあおいは呑気に言った。
「叫びたい？　それなら確か大声イベントがあったみたいだよ～」
「大声イベント？」
　修は逡巡した。そこで叫んでしまったら楽になるだろうか。
　しかし修はゆっくりと首を振った。
「……やっぱいいかな」
　鉄の心で誘惑をはねのける。
「そう？」
　やはり呑気にあおいは首を傾げた。

　それでも修は自分の短冊にこう書いた。

『大好きなあおいが幸せでありますように　料理が上達しますように　手料理が食べたい！』

（叫べはしないけど、短冊になら……）
　それでも文字にすると何だか気恥ずかしい。修が照れながら短冊を見つめていると、あおいがひょいと覗き込んだ。
「修君は何て書いたのー？」
「わっ！」
　修は驚いて後ろ手に隠す。あおいが目をぱちくりとした。
「そんなに驚かなくても……料理って文字だけ見えちゃったけど、まずかった？」
「や、まずくはないよ。またあおいと一緒に料理が上達したらいいなと思って書いたんだ」
　嘘ではない、うん。
「修君お菓子作りとか充分上手だと思うけど」
「あおいは何て書いたんだ？　俺のばっかりずるいぞ」
　こら、と照れ隠しに修があおいの短冊を覗き込む。あはは、見せるよーと笑いながらあおいが短冊を出した。
「私もお料理が上達しますように、だよ。料理って作ってる時も楽しいし、美味しい物も食べられるし幸せだよねー」
　花のような笑顔であおいが言う。２人はほっこりしながら短冊を吊した。

「記念撮影しようか、あおい」
　修の誘いにあおいは笑顔で応じる。修はスマホを取り出し、大きな笹の前で写真を撮った。
「今日は楽しかったよ」
「またね、修君！」
　あおいと別れた後、修はそっとスマホを開いた。画面いっぱいの写真には、笹に吊された色とりどりの短冊。修とあおいの笑顔。修は写真に向かって微笑んだ。

　あおいの願いも短冊に書かれた沢山の願いも。みんなみんな叶うと良いな。