【七夕】ミルキーウェイに愛を叫べ　屋台も楽し～い♪｜リアクション

【七夕】ミルキーウェイに愛を叫べ　屋台も楽し～い♪

　参道商店街で担任で想い人の早川珪に出会った綾辻綾花。珪はお祭りの見回り中だと言う。「けして邪魔はしませんから！」と頼み、綾花は珪とお祭りを一緒に歩く事になった。

（下駄、履き慣れないな……転ばないようにしないと）
　綾花は珪の横で気を付けて歩く。猫鳴館暮らしの綾花は、さっき実家に戻って浴衣を母親に着付けてもらったのだ。
「……あ、歩くの速いかな？」
　綾花の様子に珪が訊いてくる。綾花は少し目を大きくして首を振った。
「いいえ！　大丈夫です。ごめんなさい、ちょっと慣れてないだけで」
「ならいいんだけど。……浴衣に下駄って普段と勝手が違うよね。僕も実は慣れないんだ」
　片目をつぶり珪が笑う。綾花も少し頬を染め笑った。履き慣れない下駄、着慣れない浴衣。それでもお祭りだからと頑張ってよかった。―――珪先生と、お揃い。

　そして２人は神社の大鳥居までやってきた。
「へぇ、短冊か。綾辻さん、書く？」
「え、いいんですか？」
「見回りついでだからね、大丈夫だよ。理事長も特に何も言ってなかった」
「ありがとうございます！」
　ゆる～い理事長に感謝をしながら、綾花は珪と共に巫女さんから短冊と金平糖を貰った。
　綾花は短冊を前にむむむと悩んでしまう。
（どうしよう……１番のお願いは叶ったし）
　今でも浴衣の珪が隣にいるのが夢みたいなのだが、かと言って全くお願いがないと言う訳でもなく。
（うん、こうしよう！）
　綾花は短冊にこう書いた。

『沢山のにゃんこと沢山の本に囲まれたいです　綾花』

　大好きな本と大好きなにゃんこ。どちらか選べなかった綾花は……一挙両得を狙ってみたのだ。なかなかお茶目である。
「綾辻さん書けたの？……はは、可愛いお願いだね」
　隣の珪が綾花の短冊を見て微笑んだ。
「先生は？」
　少し頬を染め訊く綾花に、珪は自分の短冊を見せた。
「『担任と司書の両立』……？」
「うん。毎年思うけど、君達生徒の指導も図書室の運営も、どちらもしっかりやっていきたいんだ」
「珪先生なら大丈夫です！　私も図書委員として頑張ります」
「ありがとう、綾辻さん」
　綾花の励ましに、珪は穏やかに頷く。見た目は努力もいらなそうなイケメンだが、実は非常に真面目で努力家なのだ。

　２人は並んで短冊を吊した。落ちないようにしっかりと笹に結びつけて。
「みんなの願いが叶うと良いですね」
　綾花は笑顔で青空を見上げた。これから夜になって天には天の川が光り輝くだろう。色とりどりの夢や願いがその光に溶け、天まで届けばいい。
「……綾辻さんはこれからどうする？　僕はまだ見回りがあるけど」
「えっ、私ですか」
　珪の声に綾花は慌てて顔を下ろした。どうしよう、まだ一緒にいたいけど……。
「……あ、珪先生！　さっき貰った金平糖食べませんか？」
　咄嗟に綾花は言った。少しでも長く珪と一緒にいたかったのだ。
　綾花の言葉に珪も頷き、２人は巫女さんから貰った金平糖を食べた。綾花は青、珪は黄色だ。すると。
「あれ……どうしたんだろう。何か急にお腹が空いてきた……」
　不思議そうな顔で珪が首を捻った。そして綾花と言えば。
（珪先生とまだまだ一緒にいたい……！）
　会えてとても嬉しかったのだが、また一層このまま会っていたいという思いに駆られたのだ。綾花は背中を押されるように口を開いていた。
「あの、先生……！　ご迷惑でなければもう少し見回りをご一緒してもいいでしょうか」
　珪は少し驚いた顔をしたが、ふっと笑顔になり言った。
「いや実は……僕とてもお腹が空いてね。屋台の見回りがてら何か食べようかなんて思ってたんだ。綾辻さんが時間があるなら一緒に食べようか」
「……はい！」

　そして２人は笑顔でまた歩き始めた。浴衣にも少しは慣れてきたようだ。