【星幽塔】第一階層　マイ・フェイタル・シャドウ｜リアクション

【星幽塔】第一階層　マイ・フェイタル・シャドウ

【作戦１－８：北門の決戦】

　ステラオルタは歓喜した。狂笑した。確信した。
　何を？　自身の勝利を。彼女の主の完全復活を。
　そして月影塔の完全復活を！
「あははははは！　まさか遺骸を素直に返却するなんて！　それが何を意味するか分かったなかったのかな？　分かってないよね！？　だってそれは……」
　ステラオルタが天に手を掲げると、竜牙兵たちが大きな塊となって合体してゆく！
「あるじ様の力が戻って、竜牙兵たちが本来の強さが復活するってこと！　更に私のチカラで竜牙兵を合体！　500体の竜牙兵を使って、いでよ！　ギガント竜牙兵！！」
「オオオオオオオォォォォォ……！」
　全長１０ｍの巨大な竜牙兵が、一度に５体出現！
　ゆっくりと北門の城壁へ歩み寄ってくる……！

　サジタリオ城北門の兵士たちは恐慌状態に陥っていた。
「あ、あんなの、どうやって戦うんだよ！？」
「おしまいだ！　もうおしまいだぁ！！」
　右往左往する兵士たちの士気は急降下する一方。
　これに獅子目が声を張り上げる。
「鎮まれ！　まだ負けたわけじゃない！　はやく持ち場に戻るんだ！！」
　だが、不安と恐怖は伝染してゆき、兵士たちは戦意を失っていく。
「どうすれば、どうすればいい！？」
　獅子目は考える。考えに考えた。自分に今、出来る事は……！

「歌いましょう、獅子目さん！」

　フランチェスカが獅子目の手を取って告げた。
「この戦いが始まる前、あなたがサジタリオ讃美歌を謳った時、とても勇気が湧きました。あなたの歌は、人の心を動かすことが出来ます！　さあ、歌いましょう、サジタリオの未来を！」
　獅子目はフランチェスカの顔を見詰める。
　その顔にはもう、数刻前まで存在してた、不安に押し潰されそうな少女の面影は何処にもなかった。
「ああ、フラン嬢。もう貴女は、立派な領主様だ……」
　目の前の少女は、あっという間に成長した。
　だったら、俺だって負けてられない！
「軍楽隊、伴奏！　サジタリオ讃美歌だ！」
「は、はい！」
　獅子目が軍楽隊のコンマスに指示を出すと、すぐにサジタリオ讃美歌の伴奏が流れ出す。

　それに合わせて、獅子目は今日一番の声量で讃美歌を歌い上げる。
　その横でフランチェスカもソプラノの歌声を重ねる。
　戦場に響くハーモニーは、恐慌状態の兵士たちの精神を鎮め、心を奮い立たせる。
　次第に北門の兵士たちは讃美歌を誰しも口ずさみだす。
「なんだなんだ、これはよ！？　ニクい演出じゃねーか！　ぐすっ、泣けてくるぜ！」
　ゲースが涙ぐみながら、馬の腹を強く蹴る。
「野郎ども！　この宴に乗り遅れるなよ！　ゲース騎馬隊、突貫する！！」
　巨大竜牙兵に果敢に突撃してゆく！
　ペルタ隊も伴奏に合わせて、力の限り歌っていた。

「私たちは、最後まで諦めません！　仲間を信じます！！　ペルラ隊、ここが正念場ですっ！」
　虹の光を輝かせ、文字通り肉の壁となって巨大竜牙兵の一撃一撃を必死に受け止めていた。
　間に入った闘士の光を宿す兵士たちが押し返せば、癒しの光を宿す兵士とぺルラが巨大竜牙兵の脚の関節を浄化して灰に変える！
　巨大竜牙兵はバランスが取れずに横転！
　そこを癒しの力を持ったルネ衛生兵隊が浄化！
「傷付いても、あたしたちが癒すから安心するんだ！　倒れた竜牙兵はついでに浄化する！」
　月希とファーストエイド・キットを駆使し、彼女は戦場を駆け巡りつつ、竜牙兵の浄化を施してゆく。