緑の戦場、バードロイヤル！｜リアクション

緑の戦場、バードロイヤル！

　半ば瓦礫と化した建物が林立する。道路はひび割れ、砂礫が風に舞う。
　新田樹はアサルトライフルを持ち、隠れながら移動していた。出入りが可能な扉を見つけては罠を仕掛けた。手持ちの手榴弾の安全ピンに細い鋼線を結び、ドアノブに繋げた。
　目立たないところに別のトラップを仕掛ける。武器を拾い上げると手榴弾が爆発する細工を施した。
　細々とした作業の末に樹は大声を上げた。
「もう面倒臭い！　これはゲームなんだから、もっと楽しまないとね！」
「生死を賭けたゲームである」
「あなたはそうでも私が面倒なの！」
　頭の声に怒りをぶつける。
　背後で音がした。樹は目に付いた暗がりに走り出す。真横の地面が爆ぜた。横っ飛びで路地に跳び込み、素早い前転で起き上がる。
　壁に貼り付いた状態で半顔を出した。リボルバーを持った男性が走っていた。アサルトライフルを構えたがトリガーを引く時間はなかった。
　樹は男性が潜んでいる煉瓦塀を睨む。膠着状態を嫌い、壁際に銃弾を撃ち込み、素早く身を隠す。思った通り、撃ち返してきた。
「面倒な時はドカンだよね」
　樹は手榴弾を手にした。安全ピンを引き抜いて煉瓦塀に向けて投げる。緩やかな放物線を宙に描き、塀を越えたところで爆発した。
　よろめいて出てきた男性に樹は銃弾を浴びせる。一発が当たって後方に倒れた。
「あれはマガジンだね」
　ろっこんの『箱庭』で速やかに入手して、その場を急いで離れた。路地の途中を右に折れた直後、アサルトライフルを構えた。
　片方の足を投げ出した格好で座る人物がいた。伸ばした足には添え木をしていて遠目にも血の跡が見て取れる。
「あなたもゲームに参加しているのよね」
　樹は相手の頭の上に目をやる。黄色い鳥が載っていた。
「足をやられてね。とても戦える状態ではないわ。少し手を貸してくれる？」
　相手は項垂れた姿で力なく手を差し出す。樹は銃口を向けた状態で近づいた。手を握ると即座に引っ張り上げた。
　助けられた形の相手、ティオレ・ユリウェイスは笑みを浮かべる。
「ありがとう。戦いが終わるまで、どこかに身を潜めているわ」
「それがいいよ。私はまだゲームを楽しみたいから行くね」
　樹は笑って走り出す。
　カランと乾いた音がした。樹が振り返ると、そこにティオレの姿はなかった。路上に一本の添え木が落ちていた。