緑の戦場、バードロイヤル！｜リアクション

緑の戦場、バードロイヤル！

　シーサイドタウンのコーヒーショップに朝鳥さゆるの姿があった。窓際の席で一人、コーヒーを飲んでいた。空になったカップをソーサーに戻して立ち上がる。

　右手に向くと草原が広がっていた。横風がさゆるの前髪を弄ぶ。軽く手で掻き上げた。
　店舗は跡形もない。緑に埋没するような形で小屋が見える。別の方向、建物が密集したところに目を向けた。
「我の為に戦うがよい」
　頭の上から声がした。さゆるは手で確かめる。何度か掴もうとした。頭を激しく左右に振った。
「最後の一人になるまで戦うのだ」
　尚も声は尊大な調子で命ずる。さゆるは軽く息を吐いた。感情に乏しい顔で歩き出す。
　大小の瓦礫を避けて通る。建物が密集した場所を目指す。正面に見えてきた壁の一部を大きく右に避けた。
　左方向から青年が単身で飛び出してきた。頭の上には黄色い鳥を載せていた。右手にはコンバットナイフが握られている。
「貰ったあああ！」
　冷たい光を放つ刃がさゆるの頸動脈に振り下ろされる。敵意のある攻撃に『Stella cadente』のろっこんが発動した。軽く跳び退る。空振りを見届けて一気に距離を詰めた。相手の右手首を素早く握り、鳩尾に拳を叩き込んだ。
　短い苦鳴が上がる。取り落したコンバットナイフはさゆるが空中で掴み、敵対者の太腿をスラックスと共に切り裂いた。
　容赦のない一撃で悲鳴が上げる。相手は傷口を押さえた姿で倒れ込み、戦意を喪失して丸まった。

　さゆるは黙って見下ろす。感情が読み取れない顔で佇んだ。
　青年は丸まったまま、顔を上げようとしない。全身を細かく震わせていた。
　さゆるはその場を離れた。
「あなたが、あたしのろっこんを強化したのね」
「我が与えた。敵の攻撃を読み取り、先制の機会を増やした。大いに感謝するがよい」
　さゆるが感謝の言葉を口にすることはなかった。手に入れたコンバットナイフの刃を静かに見詰めていた。

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