緑の戦場、バードロイヤル！｜リアクション

緑の戦場、バードロイヤル！

　葉利沢倫理子はベッドで横になっていた。高校の制服に着替えて一度は桜花寮を出たものの、すぐに具合が悪くなって引き返してきた。
「……もう、大丈夫よね」
　額に手の甲を当てて呟く。身を捩じるようにして上体を起こした。乱れた髪を手で整えるとベッドから降りた。
　少し眉根を寄せて瞼を閉じる。軽く頭を振った。
「行かないと……」
　意識が朦朧としているのか。机上に鞄を置き去りにして靴を履いた。
　儚げな顔でドアノブに手を掛ける。

「……どうして？」
　ドアを抜けた先は一面の草原であった。投げ捨てられたような建物が疎らに見える。
「戦え」
　頭の上からの声に倫理子は震えた。
「私が？」
「命のある限り、戦え」
「む、無理よ」
　目が激しく揺れる。警戒心が強まった。怯えた目は一方に向けられた。
　茶髪の少年が歩いてくる。頭の上には黄色い鳥を載せていた。
「おまえ、弱そうだな。一発、殴らせろよ」
「そ、そんな。私、何もしてないのに……」
「バトルロイヤルだぞ？　十分な理由になるだろ」
　少年は指の節を鳴らした。倫理子は一歩も動けない。恐怖に染まる目で小刻みに顔を振った。
「綺麗な顔にぶち込んでやるぜ！」
　少年の大ぶりの右フックは簡単に躱された。腹部にカウンターの膝が突き刺さる。
　予想しない痛みに少年は両膝を突いた。呻きながら脇腹を手で押さえる。がら空きの顔面に遠慮のない前蹴りが入れられた。
　少年は吹き飛んだ。途切れそうな意識で声を絞り出す。
「お、まえは……誰、だ……」
「フフ、誰かしらね」
　明確な悪意によって『Malice in the real』のろっこんが発動。倫理子の人格は入れ代わり、邪悪な笑みを浮かべるMaliceとなった。
　少年は息絶えたように動きを止めた。Maliceは立ち去る間際、頭部を鋭く蹴り上げた。全く反応はなかった。
「全員を血の海に沈める、そんな武器が欲しいわね」
　舌舐めずりしてMaliceは歩き出した。

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