猫もいいけど、ペンギンもね？｜リアクション

猫もいいけど、ペンギンもね？

【寝子島イリュージョンランド】

　九夜山にある遊園地跡の廃墟は、今回の神魂の影響でかつての華やかさを取り戻していた。
　至る所にペンギンこそいるが、家族連れやカップルなどの来場客は多く、ここが廃墟だという認識すらまるでどこかに忘れ去られているかのようにも錯覚してしまう。
「イリュージョンランドがやってるって？　ムッシュくん、行ってみようか♪」
　響タルトも廃墟のはずの遊園地の営業を聞き付け、普段から仲の良い鎌八まもるを誘う事にした。
　そして、現地に到着したふたりは、本当に営業しているイリュージョンランドに感嘆の声を漏らす。
「前に来た時は廃墟だったけど、イリュージョンランドってこんな楽しそうなとこだったんだな。ペンギンもいっぱいいるな」
「うわあ、本当だ！　ペンギンがいっぱい☆」
　響は持参したスケッチブックと鉛筆で、目の前のペンギンをスケッチブックに描いてゆく。
「間近でペンギンを観察できるのはありがたいよ」
「なるほど。遊園地とペンギン、確かにいいモチーフだ」
　鎌八がスケッチブックを覗き込むと、僅かな時間でペンギンたちと遊園地の正門が正確に描かれていた。
「うん、こんなもんかな☆」
「描けた？　おー、うまいうまい。さすがだ、にゃんこたん」
「寝子高芸術科所属は伊達じゃないよ！　それじゃ、お待たせムッシュくん！　中へ入ろ？」
「ああ、今日は楽しもう」
　２人は手を繋いで園内へ。
「あ！　ムッシュくん、ジェットコースター乗ろうよ☆」
「ペンギンとジェットコースターか、面白そうだ」
　２人は係員に半券を渡し、早速乗車する。
　その後ろからペンギンがぞろぞろと連なって付いてくるではないか。
「ジェットコースターに乗りたいの？　抱っこしてあげれば大丈夫かな？」
「ペンギンを抱いて乗ってやればいいのか？」
　鎌八が一羽のペンギンを抱きかかえると、突然嫌がり出したではないか。
「こら暴れるな！　つっつくな、痛い痛い！」
　顔面をクチバシでゲシゲシと刺突されながら、ようやく自分の膝の上に抱きかかえることに成功する鎌八。
　と、そこへ、着物姿の御巫時子がジェットコースター乗り場に現れた。
　何やらペンギンたちと会話をする素振りを見せると、途端にペンギンたちは大人しくなった。
　これには２人も何があったのかときょとんとしてしまう。
「あの、みんな、分かってくれたようです……。お行儀よく、乗ってくれるそうですよ？」
「あ、ああ、サンクス。助かったよ」
　鎌八が礼を言うと、おっとりと御巫は御辞儀を返した。
　そしてそのままペンギンたちのいる後部座席へ乗り込む。
　何故かペンギンたちも安全バーを器用に使って、振り落とされないようにするための心得があるようだ。
「それじゃあ、しゅっぱーつ！」
　響の期待はコースターがレールの頂上へ登るごとに高まってゆく。
　その数秒後、一気にレールをコースターが下ってゆく！！
「きゃ～～～！」
　ペンギンを抱き締めながら響は絶叫！
「おい、こら、何で羽ばたくんだこいつ？？」
　鎌八が抱えていたペンギンが、急に羽ばたくように暴れ出していた。
「なんだろ、こいつら空飛んでる気分にでもなってんのかな？　しかも震えてやがる。怖がりだな」
　高速で左右上下に移動するコースターに、ペンギンたちも大騒ぎ！
「しっかり、掴まっててくださいね？」
　御巫はろっこんでペンギンたちに語り掛けて、落ちないように気を配る。
「おー、お前、飛んでるな。お前は凄いのは分かったから、ほら離れるな、落ちるぞ？」
　膝の上で暴れるペンギンを落とさないように、鎌八は優しく抱きしめるのであった。