猫もいいけど、ペンギンもね？｜リアクション

猫もいいけど、ペンギンもね？

　仙藤蒼は旧市街の自宅から寝子島魚市場方面へジョギング中。
「ゲーマーは体力勝負！」
　そう語る仙藤は街中の異変に気が付く。
「ペンギンがいっぱいいる！」
　至る所にペンギンで溢れる光景に驚きながらも、彼女は寝子島魚市場へ到着。
「まさかと思うけど……」
　仙藤は魚市場の中へ。
　すると、ここにもペンギンが至る所に立っていたりヨチヨチと歩いているではないか。
「もしかして、ここに来れば新鮮な魚が食べられると思って来たの？」
　値札が貼られている魚の前でうろつくペンギンたちの姿は、まるで仲卸業者が目利きをしているようにも錯覚する。
「でも、ペンギンがお金……、持ってないよね」
　よく観察すると、漁師たちが売り物にならない雑魚をペンギンたちに与えているようだ。
「いつもは捨てちまうから助かるよ～、もっと食っていいぞ！」
　漁師とペンギンたちの良好な関係を仙藤は目撃した。
「なるほど、あれならお金は必要ないからペンギンたちも安心だわ」
　ペンギンたちの食事風景を眺めていたら、なんとなく、ではあるがお腹が減ってきた仙藤。
（ちょうどお昼時だし……、食堂は何処だっけ？）
　彼女が食堂を探して辺りを見回していると、足元にいつの間にかペンギンがいる事に気が付く。
　しかもこのペンギン、くちばしにイワシをくわえている。
　あたかも仙藤にイワシをプレゼントしようとしている素振りまで見せている。
「え、これを私に？　あ……ありがとう」
　困惑しながらイワシを受け取る仙藤。
　受け取ってもらえて喜ぶペンギン。どうやらオスのようだ。
（いやいやいやいや、いくらなんでも自分はペンギンじゃないから生魚をそのまま丸呑みできないし。というかこれってペンギン流のナンパよね？　まぁ、せっかくの好意はありがたいんだけどね）
　めっちゃ懐いてくるペンギンに、仙藤はイワシを返却。「私は生魚は食べられないわ。これはペンギン君が食べていいわよ」
　そのままペンギンの口の中にイワシを入れると「しゃーねーな、貰っておくぜ」といわんばかりにペンギンは飲み込んでしまった。
　場所は変わって食堂内。
　再び仙藤は困惑してしまう。
「ペンギンが、テーブルについたりカウンターに座ったりして魚を食べてるわ……！」
　彼女もここにきて神魂の影響だと気付いたようだ。
　器用に食べるなぁ、と思いながらも仙藤はサバの味噌煮定食を注文。
「ハイお待ちどうさま！　そちらのペンギン君にはイワシ山盛りだよ！」
　ペンギンは喜びながら椅子に飛び乗ると、机に乗っている丼の中のイワシを美味そうに飲み込み始めた。
「なんかとても不思議な気分。でも、これはこれで楽しいし、害はないから問題ないわね」
　仙藤は向かいのテーブルで海鮮丼をがっつく御剣を眺めて、良い食べっぷりだなぁなんて思いながらサバの味噌煮を味わうのであった。