猫もいいけど、ペンギンもね？｜リアクション

猫もいいけど、ペンギンもね？

【寝子島魚市場】

　御剣刀は自室の片付けを済ませ、参道商店街へ買い物へ向かう際中にペンギンに遭遇した。
「ああ、マンボウくんが言っていた、逃げてきたペンギンの一羽か。最近暑いからな～、嫌になって逃げたって言っていたけどあっちの方が涼しいんじゃないの？」
　御剣はペンギンに世間話をしていた。
　一般的に考えれば、この光景は実に奇妙であるが、寝子島の神魂現象であるから何らフツウである。
　なんせ『町中にペンギンが居ても違和感はなくなって、当たり前のこととして受け入れられている』現象だ。
　故に御剣も見ず知らずの赤のペンギンにフレンドリーな態度を取っても、彼が正常な精神のままであることを言及しておこう。
「ん？　その前に元気がないのは何故だ？」
　目の前のペンギンは何処か力なくフラフラしているようにも見えた。
　そして次の瞬間、ぐぅ、と鳴り響くお腹の虫の声。
「……あー、もしかして腹減ってる？　だからさっきから魚屋の方を眺めていたのか」
　御剣は目の前のペンギンに同情の念を寄せる。
　なぜなら、彼自身も今、空腹だったからだ。
「空腹の辛さはよく分かる。ホント、よく分かるから仕方ないな、ちょっと待て」
　御剣は魚屋へ駆け寄ると、活きの良いイワシを数匹購入。
　そしてすぐにイワシを食べさせてやった。
「美味いか？」
　ぶるるきゅるるん！
「ペンギンて、そう鳴くのかよ……」
　大人のペンギンの鳴き声は、案外、可愛くない。
　むしろ野太いおっさんの声がする場合があるのだ。
　ちなみに、御剣の目の前のペンギンは、酔っぱらった野太いおっさんのような声だった。
「んー、なんだろう、凄い仕草もおっさん臭い。よし、お前を今からオッサンと呼ぼう」
　ぶるるきゅるるん！
「いいのかよ！　会話が通じるとはな。ていうか、オッサンだと思ったら何でも食べそうな気がしてきたな。このまま食い歩きするか、オッサン？」
　ぶるるきゅるるん！
「食うのかよ！　まぁ、いいけどな？」
　御剣とペンギンのオッサンは、そのまま参道商店街を闊歩し始めた。
　しばらくすると、かき氷を販売している茶屋を発見。
「今日はやたら熱いな。かき氷、食うか？」
　ぶるるきゅるるん！
「やっぱペンギンだから氷が食べたいのか？　すみません、みぞれ（砂糖水）２つ」
　ぶるるきゅるるん！！
「え、自分で選びたいのか？　じゃあ、お前は？」
　ぶるるきゅるるん！
「ブルーハワイかよ、普段から青魚を食べてるから青い色がいいのか？」
　御剣は首を傾げつつも、運ばれてきたかき氷を崩さないように器用に食べ始めた。
「あー冷たい、そっちも美味そうに食うな」
　ぶるるきゅるるん！
「オッサン、すごいな。スプーンでちゃんと食べるのか」
　ぶるるきゅるるん！
　感心していた御剣だったが、ここではたと気が付いた。
「いや冷静になればペンギンは普通にメニューを選ばないし、スプーンを使って器用にかき氷食わないよ……！」
　セルフツッコミをこなした後、御剣はようやく理解した。
「なるほど、これって神魂の影響か～！　はっはっはっは！」
　ぶるるきゅるるん！
「って、また神魂かよ！」
　御剣、まさかにセルフ乗りツッコミである。
「とはいえ、まあ害はなさそうだし良いか。折角だからこのまま寝子島魚市場行くか、オッサン？　あそこなら美味しい魚沢山あるだろうし」
　ぶるるきゅるるん！
「うん、そうと決まったら善は急げだ。そうだ、食堂の海鮮丼も美味そうだな！」
　早速、御剣はペンギンのオッサンと共に魚市場へ急行。
　新鮮な魚介類をオッサンと共に見て回り、買い付けてそのまま食堂へ。
　買い込んだ食材を捌いてもらい、オッサンにはそのまま切り身で、御剣は海鮮丼にプラスアルファをしてもらって一緒に遅めの昼食を取ることになった。
「うん、美味い！」
　ぶるるきゅるるん！