しいたけ！｜リアクション

しいたけ！

【怪人しいたけ、人に戻る】

「おお。おおおー！」
　ついに、怪人しいたけは、人の姿を取り戻した。
　取ってきてもらったぱんつもはいて、人としての尊厳も取り戻した。
「よかったねぇー！」
　感極まった北原みゆきが、涙ぐんで武生にしがみつく。
「ありがとう……！　皆のおかげだよ」
　武生もほっとした様子で笑みを浮かべる。
「はーい、ちょっとどいてくれるか？」
　みゆきをどかして、奈良橋博美が白いボトルのキャップをはずした。
「ええと、それは？」
「消毒するぞ、菌類だからな。胞子が飛んで増殖したら困る」
「へ？　うんぎゃーっ！」
　こんなこともあろうかと、保健室から拝借してきたオキシドールを博美は持っていたのだ。
　オキシドールを頭からぶっかけられた武生は、悲鳴をあげた。
「しいたけさーんっ！」
　みゆきが慌て、音海なぎさが持参していた救急箱のフタを開けた。
「ああ、痛そうですね。お気の毒に。手当てしましょう」
　武生の身体には、シダ美穂戸に蹴られたときにできたアザもある。
「ああうぅ、ありがとう……」
　なぎさのろっこん『オーバーヒーリング』がどの程度発動したのかはわからない。
　それでも治療をしてもらったことで、武生はいくぶん肩の力を抜いたようだ。
「今日はなにやら、さんざんだよ」
　びしょ濡れになったぱんつ姿で、そうぼやいた。

【原因究明にのりだそう】

「それにしてもー、しいたけ星人さんは、どうしてしいたけ星人にー？」
　真辺伸幸は武生に訊ねた。
　不思議に思う気持ちは皆共通のもののようだ。
「理由を教えてもらえませんか？　ボクも理由が知りたいな」
　音海なぎさも、必ず理由があるはずだと考えている。
「再発防止のためにも、原因をしっかりと把握しておく必要があるだろう」
「ことの経緯を話してもらえれば、原因の目星もつくのではないだろうか」
　御剣刀と旅鴉月詠の視線をうけて、武生は語りだした。
「そうは言われても……、気がついたら、しいたけが生えてきたんだ。特別変わったことは何もしていないよ」
「どんな状況でしたか？」
　逆巻天野も興味があるようだ。
　ちなみに、途中で武生が上級生だと気づいて、言葉遣いを正してもいる。
「ええと、部活で、原木を片づけていたんだ。シーズンオフに入るから」
「ヴァン。その原木、怪しいな、調べよう。ほっとくと、またんご増えるかもだ」
　シダ美穂戸が言うと、後木真央も同意した。
「センパイ、もれいびなのだ？　真央ちゃんが思うに、トリガーは原木を触るなのだー」
「ひとまず、原木のところに案内してもらうというのはどうだろう」
　刀の誘いに、武生はのった。
「うんじゃあ、こっち」
　七輪で火をおこすという何名かを残し、彼らは部室棟の近くにあるという原木の元へ向かった。

「これが、原木なんだけど」
　クヌギの原木を、武生が紹介する。
「お前、触ってみろ。またんご、なるか試そう」
「え、でも、触ってまたしいたけが生えたら……」
「ホンサオダウ、問題ない。はえてきたら、シダ、全部食べてやる」
「別の人間が触っても同じ目にあうかどうかも確認したほうがいいかもな」
「かたなも触るか？」
「え……いや」

「センパイ、ささっと触るのだー！」
「う、うん」
　武生がおそるおそる原木に手を伸ばす。
「……生えてこないようだね」
「生えませんね」
　月詠となぎさが目を見交わす。
「先ほども触れただけ、でしたか？」
　天野が訊ねると、武生はうなずいた。
「そうだね。またしいたけが生えてくるようにと言いながら撫でただけだよ」
「あ」
「あ！」
「ああっ、生えてきました！」
「しいたけにょきにょき出てきたのだー！」
「うわわ、あっち向いてて！」
　武生は慌ててぱんつを脱いだ。

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