＜零神探訪＞青の幽玄（ブルー・アルカディア）｜リアクション

＜零神探訪＞青の幽玄（ブルー・アルカディア）

●エピローグ

　数珠つなぎの穴倉めいた居住区を抜け、村の入り口にあたる吹き抜けに向かう。
　札を貼られた僵尸――いや、村の人々は、ゼンマイの切れた人形のようにあたりに横たわって動かなかった。天師がいなくなったことで本来の死が訪れたのか、僵尸のままで札の呪力が効いているのか判断できず、脱出に際してそのままにしておくより他なかった。
　外へ出るための縄梯子は、武道が確認したときのまま無事だった。
　順に下り、洞穴の中の一本道を抜け、巨大な桃の木の根元に出る。
　さわさわと心洗う川音がした。
　夜が明けようとしていた。
　水面からけぶり立つ朝靄が、桃の巨木の天辺も、岩肌にへばりつく窓々も、みな覆い隠してしまっていた。
「遥かなり、青の幽玄。麗しき死者の理想郷……」
　見上げ呟くなぎさの声が、幽玄に谺し、消えてゆく。
　青の幽玄はこれからも、静寂な時の中で、存在し続けてゆくのかもしれない。

　桃の巨木の根元に舫っておいた舟に着くと、これからのことが話し合われた。
　クロードを追いかけ半身を取り戻すのか、それともこの半身で満足し寝子島に戻る道を探るのか。
　二分する話題に一石を投じたのは、骨削瓢だ。
「体の中に宝の地図が埋まってる……ってぇ話はどうなった？　ちょうどよく割れてるじゃないかぃ」
「そうね！　調べてみましょう」
　半身を抱きかかえていた夏夜は顔をしかめたが、梨香はそれを説得して像をよく調べてみる。
「断面がキレイ。もともと、半分に割れるようにつくられてたんだわ」
　その断面に地図のような沁みが見て取れる。
「このかたち、どこかで……」
「鈴島じゃないか」
　そういったのは八神修だった。
「そうだわ！　鈴島！　そこに宝が？」
「あり得ない話じゃない。零神像はもともと落神神社にあったのだし」
「鈴島……以前、探索したわね。遺跡があった。けれど入り口はもう崩れてしまったわ……」
「あの遺跡とは限らない。それより気になるのは、クロードが持っていったもう半分にも同じ染みが描かれてるんじゃないかってことさ。彼は『為すべきことを為す』と言っていた。あのときは自ら命を絶つという意味かと思っていたけれど、違うとしたら……」
「クロードも、宝を狙っている？」
　修の言葉を引き継いで、梨香はちょっと焦ったように爪を噛む。
「でもどうやって戻れば……」
　ここへ来るときは、謎の力で転移してきたのだ。
　すると修がユチェンに話しかけた。
「ユチェン。君が持ってる珊瑚珠を、この半身の手に戻してみないか？　この零神像には不思議な力が宿っている。俺たちはずっと、零神像の導きで旅をしてきたような気がする。珊瑚玉をもとに戻せば、何か起こる気がするんだ」
　修の真剣なまなざしに、今度はユチェンも承諾し、珊瑚珠を差し出した。
　それを零神像の右半身の手に戻しかけ、修はそこでいったん躊躇した。
「ユチェン。このあと何が起こっても、最後まで見届ける意思はあるかい？」
「ある」
　ユチェンは即答する。
「オレ、何が起こっても、最後まで見届ける。それが、オレの試練なんだ。目指す場所は、試練を超えた先にある。そうなんだろ？」
　ユチェンの視線の先には、朝日に照らされたなぎさの横顔。
　その隣には、師と仰ぐ楓と、強さについて問いかけてくれた真もいる。
「わかったよ。君の決意」
　修はしっかと頷くと、零神像の手に珊瑚珠を嵌めた――。

おい……てめえら……どこにいる。
えらく遠くて、声が届きにくいな……。
何してる。その神魂はなんだ？

（テオ……？）
　ぐらぐらと揺れる頭で、あの灰色猫の声を聞いた気がした。
　眩しい光。浮遊感。目を開けていられない。

　一瞬だったか、何時間も経ったのか、時間感覚を失いかけたとき、濃厚な森の香りが鼻腔を擽った。
　ゆっくりと目を開ける。もう、青の幽玄は、どこにもない。そのかわり目に飛び込んできたのは、

――緑の寝子島。九夜山は落神神社であった。

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あとがき

担当マスター：笈地行
ファンレターはマスターページから！

おつかれさまです。大変お待たせして申し訳ありませんでした。
個人的な都合でお時間をいただいてしまいましたが、＜零神探訪＞第二話をお届けいたします。
みなさんは基本的にこの話の最後で、いったん寝子島へ帰還しました。しかし、冒険はまだ続きます。

今回は全体的に準備・対策が行き届いていました。
偵察、先遣隊、本隊という具合に三段階にわけての突入となり、
その分、札や桃木剣などの道具・装備も万全な状態で、探索に臨むことができました。
様々な考察もありまして、＜零神探訪＞シリーズ、おかげさまで核心に近づいております。
また、ユチェン君女装は想定外でした！
お化粧道具を持ち込んでくださった方もいて、きりっと美少女風に仕上がったかと！

ところで今回書いていて、面白い発見をしました。
このシリーズにご参加の方の下のお名前って、漢字１文字の方が多い！
１７名中１１名が漢字１文字。
だからナンダと言われると何もないんですが、他のシナリオではあまりこういうことがないので、
書きながら、おおーと思ってしまいました。
「冒険好きは名前一文字の法則」とかあったら面白いなーなんて。

それでは、ちょっと間を挟みまして、第三話をお届けできればと思います。
またご一緒できるのを楽しみにしています！

＜おまけのＮＰＣ情報＞

　ジン　　：　静先明（ジン・スアンミン）
　村の道士として、師匠を弔いながら静かに暮らしてゆくことでしょう。

　ウン師匠：　翁聞道（ウン・ウェンダオ）
　不老不死を求めた道士。青の幽玄の昏き墓室で静かに眠る。

　クロード：　？？？
　右腕を失った。零神像の右半身を所持。所在不明。

【ストーリー関連入手物】※現状、当シリーズでのみ扱えます。

　朝鳥さゆるさん　：青い表紙の折本（経典？　漢字で書かれている）
　恵御納夏夜さん　：零神像左半身（女性面・赤い珊瑚玉を手にしている）
　御剣刀さん　　　：クロードの右腕（黒布に包まれ干からびている）

【ＮＰＣ入手】
　ユチェン：　糸の付いた投げナイフ（楓さんより譲り受け・まだ上手に使えない）
　　　　　　　女装テク（なぎささんの指導）
　　　　　　　桃枝（真さんより）
　梨香　　：　青珊瑚珠

【みなさんの入手物】

　武器や服など、前回・今回で入手したものは、持ち帰っています。
　今後の当シリーズで引き続き使用できます。
　他マスターのシナリオへの持ち込みは、各シナリオのルールに則ってお願いします。

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シナリオ

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シナリオスケジュール

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