鈴島、森に隠された古代遺跡｜リアクション

鈴島、森に隠された古代遺跡

●脱出

　火の試練から大広間へと向かっていた花村チカ、音海なぎさ、小山内海の３人はホイッスルの合図を聞きとがめ、足を止める。
「横取り……そして、撤退、ね」
　チカは躊躇わず反転し、出口へ向かって走り出した。なぎさもそれに続く。
　海だけが遺跡の奥を見つめ走り出せずにいた。
（刀くん……）
「御剣くんなら大丈夫だよ。行こう、小山内くん」
　なぎさが彼女を守るようにしんがりを務める。海は後ろ髪惹かれる思いで駆けだした。

◇

「いかん、崩れるぞ」
　風の試練は、男子が一人。試練の際に使用したロープとハーケンを回収ののち、一度は大広間へと向かった４人だったが、小刻みな揺れが起こった時点で立井駒鳥の判断で転身し、いまは出口へと向かっていた。北原みゆき、詠坂紫蓮、恵御納夏朝という、どちらかというと控えめな女子たちを守らなければいけないという男の決断だった。そして、ホイッスルの合図で、その決断が正しかったことを知る。
「もうちょっとじゃ、みんな頑張って走ろう。絶対に笑顔で帰還するんじゃ！」
　みゆきも、紫蓮も、夏朝も、彼に信頼を寄せ必死に走る。

◇

　水の試練、伊賀解理、桜庭円、桜井ラッセルは、大広間へ向かっていたが、間もなく奥からやって来た風の試練一行と合流し反転した。
「いったい奥で何があったってんだ」
　ラッセルはカナリアになって様子を見に行こうとしたが、解理に引きとめられた。
「今は脱出が先だよ。なに、あの面子なら大丈夫さ」

◇

　地の試練、龍目豪、旅鴉月詠、後木真央、常闇月の班は、余裕がある女子たちが多く、ホイッスルを聞き、いったい誰が横取りしたのかと走りながら賭けをし出す始末だ。
「おーい。迷ったら命取りだ、逆巻の糸や桜崎のチョークの印を見落とすなよ！　焦らず急げ！」
　豪が女子たちに声を掛けると。
「承知しました」
「ちゃんと辿ってるのだ！　お蔭で絶対迷わないのだー！」
　月と真央は容赦なく速度を上げる。月詠は地の試練で使用した梯子を真央が持っていたメモ帳に封じると、マイペースに走ってついて行く。

◇

　こうして、もっとも出口に近かった地の試練組から順に、探検隊一行は次々と遺跡から飛び出してきた。
　水の試練組と風の試練組が来て、それから火の試練組が来た。
　外はすっかり暗くなっていた。思ったより、時間が経っていたようだ。
　入り口のまわりで少しずつ強くなる異音と振動に不安を感じながら、いったい何が起こったのかと話しあっているうちに、大広間組も次々と飛び出してきた。
　そしてその間にも、身体に感じる振動は大きくなり、終いには、ごごご、という音が地から響き出した。
　豪が叫んだ。
「みんな、遺跡から出来るだけ離れろ！」
　みんなは無我夢中で、散り散りに逃げた。
　そして。
「伏せろ！！」

　森の木々で休んでいただろう鳥たちが一斉に飛び立ち、動物たちのギャアギャアという叫び声が聞こえ。
　間もなく。
　ずずぅううんん……と、思ったよりも控えめな音と土煙とをあげて。
　遺跡の入り口は無残にも崩れ落ちたのだった。

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