【人類ＶＳねずみ、大決戦！】

「今だ！」
　ドクトルFがばびゅんと画面をスワイプすると、アトラ・プロトタイプの右腕に装備したボムピッチャーから、しゅぱ、しゅぱんと光る弾が飛び出して、穴のなかへと飛び込みます。
「ポイントセンサー弾を撃ち込んだよ！　煙幕のなかで敵を見失ったら、ギアに反応するものを探して。それがねずみたちだよ！」
「分かった、よ……ハカセ……！」
　言うが早いか、真っ先に飛び込んだのはエクリプスのトライアルαに、そのパートナーことリンタロウの頼光です。二機はちゅうちゅうちゅうと大混乱のねずみたちのど真ん中へ踏み込むと、
「スピカ君の機体は、僕が完璧に守る。遠慮なくやってしまうといい」
「うん……！　薙ぎ払うっ……！」
　頼光が素早い剣技で周囲のねずみをびしびしっとＫＯした隙に、トライアルαが再びチャージ完了した圧縮波動砲を発射！　ビームは直進してねずみたちを薙ぎ倒しながら、城塞のなかでも一番大きな建物へぶち当たり、土台を貫通して壊してしまいました。
「ちゅうううう、なんということだちゅう！　われらがてっぺきのようさいが……！」
　ぐらぐら揺れ始めた城塞の上で、ねずみの皇帝がちゅうちゅうくやしげにじだんだを踏んでいます。この建物もそう長くは持ちそうにありません。やがて崩れてしまうでしょう。
「おまえたちゅ、はやくにんげんのへいきをやっちゅけるちゅう！　われらのていこくをあけわたしてはなら……」
「ハシゴもできたよぉ～！」
「みんな、一気に攻め込もう！」
「ちゅう～～～！？」
　りゅーきのラズちゃんがせっせと建築中であった割りばしのはしごが完成して、kanonはぺもっと液晶画面をタップ。キングニャーサーがはしごを駆け上がり、聖剣ニャクスカリバーをしゅぱぱぱぱん！


　大砲を操っていたねずみを、ちゅうっとグロッキーにしてしまいました。
　それだけではありません。
「お待たせ！　高所を取ったわ！」
　Aoiの明るい声とともに、どかどか、どかん！　砲撃音。Diablo Azulが城塞を見下ろす高いところを制圧して、両肩の240mmキャノン砲を撃ちまくり！　これによって城壁の上のバリスタや大砲は完全に沈黙し、いよいよねずみたちを残らず懲らしめてしまうだけとなりました。
　けれどねずみたちも皇帝の指示に律儀に従い、小銃や剣と盾を持って、最後の大攻勢に打って出ます。
「まだっちゅ、まだまけてないちゅう！」
「われらがらくえんをまもるのだっちゅ！」
「またたびメイトはわれらのものだっちゅうー！」
　ちゅうちゅうちゅうちゅう！
　乱戦となった床下大城塞へは、やがて壁裏班と天井裏班も合流し始めました。ぐみ。にセツナは、トライアルαと頼光の横にそれぞれのカプセルギアを並ばせて、
「壁裏のみんなは降参したよ、ねずみくんたち！」
「オトナしくおナワをチョーダイするデス！」
　ガラクタ君が高周波振動式無銘刀をずばん！　時代劇のタテみたいな活躍の横では、ブレイズガーディが黒豹モードから人型モードへがきがきんと変形し、バディライフルで仲間の逃したねずみをびしびしヒットしていきます。
「やべえ、合体楽しい……！」
　すっかりノリノリなリョータ。イサリビ丸の上にはまだスターライトナイトが乗っかっていて、リュウセーも燃えまくりです。
「行くぜ良太、合体技だ！」
「おう、まかせろー！　って合体技？　なにすりゃいいんだ？」
「え？　なんかこー適当に！　いっしょにどかーんってやりゃいいんじゃね？」
「なるほどなー！」
　スターライトナイトがイサリビ丸をつかんだまま高速飛行。フレイムチャージで突進！　からの、ドラゴンテールでどごん！　すかさずイサリビ丸が豪腕でパンチの追い打ちをぶちかまします。ねずみたちはまとめて、ちゅう～っ！　っとすっ飛んでいきました。
「まったく……後からついていく身にも、なってほしいものだな……」
　そんな奔放に動き回る二機のあとを、バルティーグルが追いかけます。ただ、その動きはどこかよろけて、ふらついているようにも見えました。
（う……まずい。疲労が……）
　タイラが無意識に発動したろっこんで得た情報は、逐一みんなに連絡して共有していましたけれど、この便利な能力の弱点は、使い続けるとタイラ自身が一気に疲れてしまうことなのです。
　バルティーグルはそんな彼の指先の動きを反映してか、ふらふら。よろよろ。
「まだまだ、われらはまけないっちゅう……おっ、あいつよわっているみたいだっちゅう！」
「やっつけるっちゅう、なかまたちのかたきをうつっちゅうー！」
　こんなときに限って、ずらずら、ずらり！　小銃を構えたねずみたちが、ぐるりとバルティーグルを取り囲みます。大ピンチ！
「ふぁいやーっちゅ！！」
「あぶないっ！！」
　ちゅちゅちゅちゅちゅん！　小銃が弾を吐きだし、バルティーグルは穴だらけに……と、思いきや。
「なっ……ボクのバルティーグルを、かばったのか？」
「大丈夫。ポラリスはまた直せばいい」
　ダメージを受けたのは、セナのカプセルギア、ポラリスでした。まるで流星のように走り抜けて、身を挺してバルティーグルを守ったのです。
　思わず顔を上げて見つめたタイラに、セナはちょっと照れくさそうにはにかみました。
「誰かの大事なものを守るほうが、大事。手が届かなくなる前に……」
「大事なもの……」
　ぽつり、と言ったタイラをよそに。
　といーん！　ぽいーん！　飛び跳ねてきたのは、配管工。ちょっぴりおセンチなシーンでも、樹のマイペースは変わりません。
「さあー、イタズラねずみにはお仕置きだよー！」
　炎の玉を発射して、亀の甲羅を取り出してはぶん投げ、巨大化だってもう一度惜しげもなく披露！
　もはやねずみたちは、逃げまどうばかりです。
「ちゅうちゅう、こりゃむりだっちゅう！」
「てったい！　てったいちゅ～！」
「てったいってどこに？」
　おろおろおろ、ちゅうちゅうちゅう。
　もはや戦いはギアマスターたちに傾いておりました。けれどそれでも結構な長丁場となって、彼らにも疲れが見え始めています。
「タッちゃん、大丈夫？　みんなも疲れてるみたい……」
　自然、アユムの想いは祈りとなって、
「あの時みたいにできたら……お願い、もう一度、みんなを癒して！」
　アユムのろっこんは、彼の真っすぐで純粋な願いにこたえてくれました。ほわほわ、ほわわん！
　心なしか、タイラの顔が輝き始めたように見えます。いくらか楽になって、癒されたようです。アユムの祈りは確かに、届いたのでした。
「みんな、あと少しだよー！　がんばろう！」
　一番の癒しは、彼のこんな輝くような笑顔だったかもしれません。