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Rain Dance
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――あー。結構降ってるな。
香月 春人
はぼんやりと思いました。
降ってるからどうというわけではありません。嘆くでも逆に喜ぶでもなく、ただ「降っている」という事実を認めるだけです。
雨が降っています。ただひたすら、容赦なく。
玄関口では何人もの生徒が、嘆いたり悔やんだりの人生模様です。雨中に飛び出していくチャレンジャーも少なくない。
多少面倒ではありますけれど、春人はそこまで大変ではありませんでした。なぜって、鞄のなかには入れっぱなしの折り畳み傘が入っていますから。
「さて……」
かれこれ一ヶ月以上入れっぱなしの傘なので、ちゃんと開くかどうかいくばくかは気になりますが、取り出して帰宅するとしましょう。
ところが、春人が鞄に手を入れた、そのとき。
「兄さーんっ!」
背後から聞こえてきた声、彗星のごとく急接近して、
「きゃーっち!」
ぼすっ、と背中から抱きつかれました。振り向かずともわかります、弟の
香月 秋人
です。
小さい時分ならともかく、いまや立派な高校二年生男子がダイビングしてきたのです。並大抵の者であればよろめいたり、あまつさえ雨の中に転倒して悲劇のヒーロー化したりしそうなものですが、春人は慣れていますのでどうということもありません。びくともせずに、
「いきなりタックルしてどうかしたか?」
ぶらーんと、弟を背中にぶら下げたまま言うのです。
「ふふー、特に意味はないけど、抱きつきたかったから! それにこれはタックルじゃないよっ」
言いながら秋人は目を細めていました。幼き日、こうやって兄に背負われていたころでも思いだしたのでしょうか。そういえば春人と秋人は双子なのに、兄は兄らしく弟は弟らしくといいますか、いつも春人が秋人を、背負ってあげたものでした……。
やれやれ、と言いながら春人は秋人の背中をポンポンとやって下ろします。
香月兄弟から、ほんの少し、離れた場所。
そんな二人を見ることはできませんがで、会話と物音から、
紗乃恭 玲珂
は彼らの様子を知ることができました。
――とても仲の良い、ご兄弟のようですね。
玲珂には視力がありません。幼い頃に喪っていて、一切見ることができないのです。
けれど彼女には発達した感覚があります。秋人の弾む息づかいがわかりますし、香月兄弟の間の親密な空気を感じることもできます。春人はいささか邪険な様子ですが、その実、彼の声から弟への愛情を読み取ることも玲珂にはできるのでした。
だから、いま香月兄弟がどんな様子なのか脳内に画像を描くことができました。彼らがどんな表情をしているのかも、なんとなく想像がつくくらいです。
ところが、そんな彼女にも苦手なものがありました。
雨です。
――雨は好きじゃないです。
今は屋根の下にいるからまだいいのです。雨中に出てしまえば、もう彼女にとっては宇宙空間にいるに等しいのです。
激しい雨音は周囲の音を聴くのを妨げます。たとえるなら、ホワイトノイズだらけのラジオを聴こうとするようなもの。
雨の匂いは、他のあらゆる匂いを洗い流してしまいます。目印になる匂いも、あるというのに。
肌の感覚も弱まります。
空気の味だって、わからなくなる。
あらゆる景色が暗闇の……なにも視えない玲珂にとっては、ひたすらに困りものといえましょう。
知らず、玲珂は唇を噛んでいました。
雨にまつわる玲珂の記憶には、あまりいいものがありません。今までも幾度か、危ない目に遭ったことがありました。小さいころには何度も何度も転んで、泣いたこともありました。
――いけないいけない、そんなことを思い出している場合じゃないです。
玲珂は首を振って、辛い記憶をかき消そうとします。
戸惑っている場合ではないはずです。なぜなら、今日は帰ってお店……実家の『紗之香』を開けなければならないのですから。
今でも油断していると転んでしまうんです……そんなことになったら、また泣き出してしまいそう――そんなことを思いながらも、彼女は鞄を探ります。
こんなときのためにいつも折りたたみ傘を持ってきて……。
「……あ…………」
声が漏れてしまいました。
玲珂は愕然と思い出しました。
先日、小雨が舞ったとき、その傘は使ったはずです。そして、家で乾かしておいたはずです。
乾かしっぱなし、のようです。
こうなっては、覚悟を決めるほかなさそうです。
もちろん、ただでさえ感覚が弱まる雨の中、傘なしでは丸っきり、絶望的な状態で挑まねばならないでしょうが、勝算がないわけではない。
玲珂は家へのルートを完璧に記憶しています。歩数にいたるまで。
あとは聴覚に集中して、とにかく危険察知だけは忘れずにいけば、なんとか帰れるはずです。
玲珂は、大きく息を吸い込みました。
一方このとき、香月兄こと春人は、そういえば、と、なにか思いついたらしく呟いてから、
「秋人、傘持ってたよな」
と弟に訊きました。
「うん、折りたたみはいつもカバンに入れてるよ。急にふってきたけど助かったね。天気予報では晴れの予報だったのに……」
しかも実はその傘、二本あるんだということまでは秋人は言いません。うっかり入れたまま忘れていたのが続いただけなのですけれどね。
ちゃんとそれにも理由があります。
――だって、兄さんと一本ずつにしちゃったら、相合い傘できないじゃないか。
一本の傘を兄弟仲良く分け合うという、その図式がいいのです。憧れなのです。別々の傘では、なんだか物足りない。
ところがしかし、秋人には知らないことがありました。
驚きから、落胆へ。
春人が自分の鞄から一本の折りたたみ傘を出したからです。
ああショック。これでは相合い傘できないではありませんか。
なのに大逆転。
落胆から、新たな驚きへ、そして、喜びへ!
「俺たちは帰る家が同じだ。一本あればいいだろう」
言うなり秋人の兄は、自分の折りたたみ傘を一年生の少女に差しだしたのです。
「使ってくれ。どうやら難儀している様子。まあ、小さいかもしれねぇがないよりましだろ」
そう、差しだした相手こそが玲珂でした。
「え? そんな、ご迷惑をかけるわけには……」
見えなくてもそれが傘だということはわかります。玲珂は恐縮しますが、
「俺は二年普通科四組の香月春人。こっちは弟の秋人だ。気にするな。まあ、困ってるときはお互い様ってやつだ」
「うん。僕は同じ二年で普通科一組で香月秋人! 傘、遠慮しないで使ってよ! 『ご迷惑』どころか僕はむしろ大歓迎……」
とまで言ったところでコホンと空咳して、
「というか、僕らはまったく困らないから使ってね。返すときは下駄箱にでもいれといて」
「あ……はい、その……ありがとうございました」
必ず返します、と深々と頭を下げて玲珂は出ていきました。
やはり傘がないのとあるのとのでは大違いです。なんとか帰ることができるでしょう。
玲珂が、自分が兄弟に名乗らなかったのを思いだしたのは、それからしばらくしてのことでした。
――返しに行くとき教室を訪ねて、そこで名乗りましょう。
頼れる先輩、仲睦まじい双子の兄弟……これを機に、仲良くなれたら嬉しいのですが。
「気をつけて帰ってね」
と彼女を見送って、楽しい相合い傘決定ということで秋人の心は浮き立ちますが、なんとなくですが悔しい気もします。
――兄さんの傘が他の人の手に渡っちゃうなんて……。
だったら、「実は僕、二本持ってるからひとつ貸すよ!」とでも言えば良かったのですが、それはちょっと、言いづらい。
なので春人の傘は、みすみす目の前で行ってしまったのでした。これでいいのだと思う反面、惜しいような気持ちもあったり……。
でも、ま、いいや! と気持ちを切り替え、さっと秋人は折りたたみを開いて兄を招き入れました。
「……帰るか」
「帰ろ-!」
「なんでそんなに嬉しそうなんだ。この鬱陶しい雨だというのに」
「へへーん? なぜかなー?」
言うが早いか秋人は春人に傘を任せ、自分はするりと、彼の腕に自分の両手を絡めます。
「……なぜひっつく」
「だってっつかないと濡れちゃうからー」
もちろんこの言葉が、ただの建前であるのは言うまでもありません。
「暑い。じめじめする」
率直に迷惑げな兄、対称的に嬉しくてたまらない様子の弟。
小さな折りたたみ傘だから狭く、それだけに、二人の距離も近いのです。
身体がはみ出て雨に濡れちゃいますが、それだって秋人は楽しんでいるご様子。
「ねえ兄さん、もっとゆっくり歩こうよ」
「俺はさっさと帰りたいんだが……風邪を引くぞ」
「だったら僕が看病してあげるよ。あ、それとも僕が兄さんに看病してもらおうかな?」
「だから、二人揃って風邪になったらどうする気だ」
帰ったらシャワーだな、と春人はつぶやきました。
雨はまだまだ、止む様子がありません。
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担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
学校生活
恋愛
定員
30人
参加キャラクター数
30人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2013年07月01日
参加申し込みの期限
2013年07月08日 11時00分
アクション投稿の期限
2013年07月08日 11時00分
参加キャラクター一覧
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