ダーク・ネコジマシティ・ウォーズ｜リアクション

ダーク・ネコジマシティ・ウォーズ

【地下室の陰謀】

「ふむ。どうやら随分と計画と違ってきているようだが」
　美術館の地下に、館長のずしりと重く低い声が響いた。
　館長は、眼前の無数のモニターに映る、館内各所の映像を忙しなく追っている。
『安心しなさい。これも想定の範囲内よ。出たがりはどこにでもいるものよ。ヒーローの中にも、ヴィランの中にも、ね』
　館長の声に、落ち着いた、年不相応に落ち着きすぎた少女――リサの声が応じる。
『ちゃんと彼らは奪取に成功するわ。あの展示場に設置された、贋物の『フジコの微笑み』のね』
「……そうでなくては困る。あの贋物を用意するためにも、相応の金がかかっているのだからな」
　館長が眉根を寄せてそう言ったのと、美術館全体がグラリと揺れたのは、ほぼ同時だった。
「……何だ？　地震か？」
　館長がリモコンを操作して、テレビのニュースをつけようとする。
　計画のために、彼は今夜テレビの類を一切つけていなかった。
　だから、

『ふーはははは！　さすがだな、ラッカミガール！　だが、このイビル・ソルジャーがこのときのために用意した私のさーい高傑作、人型搭乗兵器タイタンに勝ーてるかなー！！！』

　ヴィランどもにジャックされたテレビに映し出されたシティの真ん中で、巨大ロボットが暴れている姿を見たときは、さすがの館長も呆然としていた。

『……これも、キミの言う「想定の範囲内」なのかね？』
　館長の声に、リサは一瞬の間を置いて、言葉を返す。
『……ええ。私の計画に狂いはないわ。たぶん、ね』
　最後の「たぶん」は、さすがのリサもちょっと自信が無さげだったという。