ダーク・ネコジマシティ・ウォーズ｜リアクション

ダーク・ネコジマシティ・ウォーズ

【巨大ロボット in ネコジマシティ】

　イビル・ソルジャーの巨大ロボットは、その大きさも、能力も規格外だった。
「わー！　すごい！　おっきー！　ねぇねぇ、空飛べないのー？」
『ふははは！　もちろん飛べるぞー！　そーれ！』
「わー、凄ーい！　ばっびゅーん！」
　が、それを見たラッカミガールの反応と、さらにそれにノリノリで応じるイビルの反応はさらに規格外だった。ていうか、戦えよ。
「結局、のの……もとい、ラッカミガールさまは何がしたかったのでしょう？」
「……俺に聞くな」
　ラッカミガールの二匹の使い魔は、とても疲れた表情で、はしゃぐ主人の様子を見守っていた。
　そんな巨大ロボットの一方で、地上には通常サイズの機械人形達が暴れている。
　しかし、こちらはヒーロー＆ヴィランの連合軍の前に、ものの数ではなかった。
「敵はシティに溢れかえる機械人形ども。相手に取って不足はないな！　っていうか、とったカロリーを消費しないと！」
　座禅を組み、空中をすべるように移動しながらエンシェント・マギは口から火炎を吐いて、機械人形達を炎上させていく。機械油にラーメンの脂ののった火炎が引火し、夜の街を赤い炎が轟々と燃え盛る。
（……私にとって、正義などどうでもいい！　私の求めるものは強さ！　つまり、この状況は私にとっては願ってもないもの！）
　赤い炎に照らされるマギの横顔は、どこか嬉々としたものだったという。

【激しい追走、その果てに】

　ザ・ストレイトは、ルンバを追いかけていた。
「待ちやがれ！　ルンバ！　絶対に逃がさねぇ！」
「しつこいぞ！　若造！　ぐわぁ……！」
　そして、ついにストレイトが地面にルンバを押さえ込んだ。
　単純な体力勝負であれば、老練とはいえ、すでに盛りを終えたルンバに若きストレイトが追いつけない理由はなかったのだ。
「もう逃げられないぜ。『フジコの微笑み』は返して貰う。そして、お前にはＪの居場所を教えて貰うぜ」
「ふっ……。若いな、小僧。だが、今のシティには、お前のような若い力が必要なのかもしれん……」
「……なに？」
　どこかわが子の成長を喜ぶ父のような声音で言うルンバに、ザ・ストレイトは一瞬押さえ込む手の力を緩めてしまう。
「……だが、覚えておけ。その若さが命取りになることもあるのだと言うことを！」
「……っ、うわ……！？」
　次の瞬間、ルンバはわずかな隙を突いてストレイトを押し返すと、おもむろに白い壁に向かって盗んだ絵画を放り投げた。
　そこに、まるで忍者屋敷のように設置された、回転扉の向こうから現れたきつね面の少女が現れて、それをキャッチする。
「後は頼んだぞ！」
「任せなさい」
「……っ……待て……！」
　再び壁の裏側に消えようとする少女をストレイトが追おうとする。
　が、それをルンバが羽交い絞めにして、許さない。
　そして、一度、回転扉が閉まってしまえば、それはもうストレイトの側からは開かなくなる。
「……ちくしょう！　こんなはずじゃ……！」
　ストレイトが、どんと悔しげに壁を叩く。
　と、そのとき、また美術館が大きく揺れる。
「……小僧。お前の正義は、あんなちっぽけな宝を守るのか？」
　ルンバがストレイトに言う。
「……宝の価値を決めるのはあんたじゃない」
「なるほど、道理だな。だが、少なくともあの贋物にお前のいうような価値はない」
「……贋物！？」
　ストレイトが目を見開く。
「……それよりも外の様子がおかしい。私はもう逃げも隠れもしない。お前の戦うべき相手はもうここにはいない」
「……っ！」
　ストレイトはもう走り出している。
　目指すは美術館の外。
　彼が戦うべき相手は、きっとそこにいる。