ダーク・ネコジマシティ・ウォーズ｜リアクション

ダーク・ネコジマシティ・ウォーズ

【悪夢の始まり】

　ライブ会場が、地獄絵図に染まる頃。
　ダークシーサイドタウンでも、悪夢の幕が開けようとしていた。

『――愚かなる人類諸君、こんばんは』

　そのとき、シティの街頭テレビが、一人の男に乗っ取られた。
　一人の男とは無論ＢＤことブラックデスペアである。
『俺の名前は志波武道。いや、その名はもう捨てた。今の俺はブラックデスペア。愚かな人類の時代に終焉をもたらすものだ』
　巨大なテレビの中で、ＢＤはこれまで以上に芝居がかった口調と動作でシティの人々全てに語りかけていく。
『さあ、今こそ終わりの始まりの鐘を鳴らそう！』
　ビシッとＢＤがビジョンの中で手をあげる。
　その刹那、ドーンと大きな爆発音がし、シティのあちこちで火の手が上がる。
「え？　これって、ドッキリとかじゃないの？」
「……お、おい、あっちから、何が来る……。き、機械の化け物だ……！」
　それらの声を皮切り、ダークシーサイドタウンは阿鼻叫喚の地獄絵図に変わる。
　シーサイドタウンばかりではない。
　ダークイーストエンド、スターヒルズにも、機械人形の魔の手は同時多発的に迫りつつある。
　人々は、そんな混乱の中、我先に逃げ惑おうとする。
　いくら口先で平和や思いやりを語っていても、所詮、人間はこんなものなのだ。
　それは、わかっていたはずなのに。
「……人間達よ。本当に、お前たちはその程度の存在なのか……？」
　そんな人々を見つめるＢＤの瞳は、どこか機械とは思えぬほどに悲しげだった。

【お祭りには便乗する主義】

　そのとき、ずっとＢＤばかりを映していた街頭ビジョンに異変が起きた。

『ふはははははっはは！　なかなか面白いことをやっているではないか！』

　突然、街のテレビの約半数ほどの映像が切り替わり、ＢＤに変わって、どこか少年を思わせる一人の男を映し出した。
　その異変は、カメラを通じて、ＢＤ自身にも見えている。
『……なんだ、お前は。俺の邪魔をするな』
　ＢＤは、テレビ越しに、ジャックしたテレビをさらにジャックしてきた男に話しかける。
　それに、少年を思わせる男――新田亮ことヴィランのイビル・ソルジャーは、やはり少年のような笑みを浮かべて応じる。
『なんだ、とは連れないな！　私の名前はイビル・ソルジャー！　機械とお祭りと悪いことを愛する、希代の天才科学者さ！』
『……自分で言うな。だが、伊達に天才を自称しているわけではないようだ』
　そう言って、ＢＤは街の様子を確認する。
　すでにシティはＢＤの配下の機械人形で溢れかえっているが、その数は少しずつ減ってきてもいる。
　だが、またその数が急に増えてきたのだった。
『ふははははは！　こんなこともあろうかと、このシティの工場のいたるところに、私のお手製のロボットソルジャー達を配備していたのだ！』
　白い歯を見せて笑うイビル・ソルジャーは、少年がそのまま大人になってしまったような印象をＤＢに与えた。
　そして、そんな彼もまた人類を絶望させようとしているのだ。
（よもや同じ人類同士で、これほどまでに恐ろしいことができるとは……）
　ＢＤが戦慄に身を震わせた、そのときだった。
「ばっびゅーん！　みんな、お待たせ！　『ラッカミガール』の参上だよ！」
　ラッカミガールがダークシーサイドタウンに降り立った。
　その姿に、イビル・ソルジャーは少年のような瞳を、ますます輝かせる。
『待っていたぞ！　ラッカミガール！』
　どうやらイビル・ソルジャーは彼女と戦いたいがために、これだけのロボットを動員したかのように見える。
　そんな彼を見て、
「やはり人間は愚かだ……」
　ＢＤは、ますますその苦悩を深めていくのだった。