ダーク・ネコジマシティ・ウォーズ｜リアクション

ダーク・ネコジマシティ・ウォーズ

【その青魚、闖入】

　その頃、シティのとあるライブ会場では――。
「す、凄いです。アイドルさん達、とても揺れています」
　宮祀智瑜ことヒーローの『チユチユ』が、凄く揺れているアイドル達のパフォーマンスに圧倒されていた。
　彼女は悪の気配を感じて、ライブにきていたのだが、思わぬ熱気に思わず仕事も忘れて見入ってしまっていた。
　しかし、そんなパフォーマンスよりもさらに凄いのが。
「おっぱい！　おっぱい！　おっぱい！　おっぱい！」
　観客席の最前列で、ライブの熱気に負けないおっぱいコールをしていた眼鏡の男だった。
　彼の名は『桐島義弘』。
　だが、それは世を忍ぶ仮の姿。
　その正体はヒーローを愛するティーチャー、ラブ・ヒーローティーチャーなのだったが、そのことをまだチユチユは知る由もない。
　だが、
（……あの人、ちょっとカッコいいです！）
　チユチユのハートにラブ・ヒーローティーチャーの姿はドストライクだったようだ。
　と、そのとき。
「はっはっは！　おいおい！　揺れるのは、おっぱいだけじゃないんだぜー！」
　突如、ライブ会場にむさくるしい生足を晒したサンマの着ぐるみが現れた。
　その着ぐるみ――サン・魔・サンは、尻尾をびちびちと振りながら、ライブを乗っ取ろうと考えているようだった。
「おのれ、そこをどけ、青魚！　アイドル達のおっぱいが見えないではないか！」
　それにブチぎれたのが、ティーチャーだった。
　彼に便乗して、ほかの観客も野次を飛ばす。
「そうだ！　ひっこめ、青魚！」
「帰れ、『サン・魔・サン』！」
　そのとき、誰かがそう言ったのを聞いて、ざわっと会場が静まり返った。
　それは、青魚に絶対に言ってはいけない言葉だった。
「……今、なんて言った？」
　ピチピチと尻尾を振りながら、怒りに震わせた声で青魚は言う。
「「「「わー、逃げろ！」」」
　人々もアイドルも逃げまどう。
　しかし、チユチユは逃げない。何故なら彼女はヒーローだから。
　そして、ラブ・ヒーローティーチャーもまたヒーローなのだから逃げなかった。
　当然、彼はチユチユを守るためにサン・魔・サンとチユチユの前に立ちはだかる。
「……何をしている、早くここから逃げろ！」
「いけません。あなたこそ早く逃げて……」
「『さん』をつけろよ、人間風情がーーーーーーー！！！」
　言いかけたとき、サン・魔・サンが必殺の『サン・魔・サンシャイン』を放った！
「ぐわあああああああああああああ……」
「いやあああああああああああああ……！？」
　宇宙のエネルギーを凝縮したその必殺技に、ラブ・ヒーローティーチャーは一撃で致命傷を負ってしまったのだった。