【星幽塔】第一階層　ツインズ・ノット・デッド｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ツインズ・ノット・デッド

【新たな避難所】

　戦闘可能な竜牙兵の全滅を確認した一同。
　通信機器がないこの世界での素早い情報伝達は、小犬丸と、彼のろっこんをコピーしたペトラ、そして天馬を駆る鴻上の功績は非常に大きい。
　そして、それは同時にステラとオルタの存在と、遺骸の存在、塔の過去の周知を果たす事を意味する。
「人の口に戸は立てられぬ、っていうがな、一般市民にまで既に伝達しているとはな」
　新たな避難場所に『ブラック・リキッド亭』が名乗りを挙げた。
　北門は未だ、遺跡から漏れ出た謎の光に飲み込まれたままだ。
　城のすぐそこまで異変が迫っているため、フランチェスカはやむなく市民を他の避難場所へ移さざるを得なかったわけだ。
　店主の鎌八が大量のＢＬバーガーを避難した市民に無償で振る舞いながら、彼等の口から出る情報に耳を傾けてる。
　志波や鮫ノ口をはじめとする者たちが統括していたはずの情報があちこちで漏れてしまっている。
　仲間内では情報を一般人に漏らさぬように注意を払っていたが、一般兵にまでそれを徹底させるのは難しかったのだろう。
「ま、ステラが酷い目に遭わなくてよかったけどな？」
「怖かったのーっ！　あ、ビールおかわりなのっ♪」
　呑気に空のジョッキを掲げて鎌八におかわりを催促するステラの姿に、連れ帰ってきた響も思わず苦笑い。
「あれから大臣は行方が分からないし、北の遺跡は様子がおかしいし、盗賊の光であんまり有益な情報は得られなかったし。これからサジタリオ城下町は大丈夫かな、ムッシュくん？」
「大丈夫だ、にゃんこたん。みんなは俺達が守ってゆこう」
　相棒にウィンクする鎌八に対して、首を振って見せる響。
「いやいや、僕が言っているのは金貨5,000枚の方だよ！」
「そっちかよ！？　まぁ、確かにどうなるか気になるな。それよりも、にゃんこたんは市民のみんなが連れてきた家畜の世話を頼んだ。俺は怪我人を見る！」
「わかったよ！　あ、また馬を連れた人がやってきたよ、ムッシュくん！」
　店の入り口に馬車ごと退避してきたお金持ちの老夫人がメイドと一緒にやってきた。
　鎌八は駆け寄ると、早速案内する。
「これはマダムに従者の皆様。安心してください。ここは安全です！　さあ、馬車はあちらへ。お腹が空いたでしょう？　ＢＬバーガーをご用意してますので召し上がっていってください。おや？」
　鎌八は、マダムの脚に包帯が巻かれている事に気が付く。
「怪我をされてますね？　任せてください。スパイダースバイダー！」
　彼はろっこん『蜘蛛男』の進化能力によって、人の姿のまま手の平から粘着性の糸の網をマダムの脚に発射！
「大丈夫です！　俺の蜘蛛の糸には治癒の光が宿ってますから。ほら、傷を治して溶けていくので」
　これにはマダムが感謝の言葉を述べ、メイドたちも頭を下げる。
「さぁ、忙しくなるな。よし、馬に乗って高い目線から呼び掛けていこう」
　愛馬の黒毛オブシディアンに跨ると、上空から鴻上が天馬を駆ってやってきた。
「向こうにいる隊商の馬が怪我して動けないらしい。長旅で食料も尽きてしまっているようだ」
「そいつは大変だ。急いで駆け付けよう」
「待って、ムッシュくん！」
　響が店から大量のＢＬバーガーを抱えてやってきた。
「私も連れてって！　店番は救護班のみんながしてくれるって！」
「マジか。最高かよ、あいつら」
　店内で懸命に動き回る救護班の面々に鎌八は感謝しつつ、彼は響へ手を差し伸ばす。