レディ・ロゼッタの未来観測｜リアクション

レディ・ロゼッタの未来観測

　山田与太郎が二次元と信じる花畑に到達してから、小一時間は経ったろうか。先に入った誉も帰ってしまった。ついにはちきれそうな肉体を――どのあたりかはとてもお知らせできないが――ぶるんぶるんと振るいながら、与太郎は赤い扉へと進んだ。
「あの小屋にきっとCG回収イベントがあるでやんすな……」
おほん、えへんと咳払いをして喉の調子を整える。
「失礼いたしやすぜ。こちらが占いの館でござんすか」
ダンディな渋い低音を響かせて、巨漢が入室した。
「あらあらまあまあ。ものすごくビッグな方が来たわね」
椅子に目もくれず、与太郎はロゼッタの前にずんと立つ。その姿はそそり立つ巨塔のようであった。
「そう、あっしが気になっているのは、いかにビッグに不肖の息子が育ちゆくか！」
「不肖？　どう見てもそっくりよ」
ロゼッタはまったく驚かない。どーん！　という効果音の似合う巨砲が、白い聖域の奥に眠っているのにだ。
「ご安心ください……あっし、紳士ですから……レディに恥はかかせません」
ランプの明かりを受けて、きらりとサングラスが金色に光る。腰に両手を当てて、ロゼッタにぐいと主砲をアピールする形になった。
「これがあっしの息子、またの名を主砲でやんす！」
「あらあらまあ」
「人相占いというのもあると聞いておりやす。こいつにも相が宿るものでしょう。じっくり見て占ってください！」
どっどーん！　と差し出される破壊砲台に、ロゼッタは興味深々といった様子で身を乗り出す。たわわな胸元が図らずも丸テーブルの上で強調される形となった。なかなか魅力的な眺めである。
「おおお！　やりますな、占い師殿……！　あっしも負けてはいられません！」
最後の砦たる白い布地が膨れ上がる。そしてどこからか聞こえる、地響きのような音。ろっこん『ライジング・サン』は爆発寸前、恐るべき熱量がその砲身に集まりつつあった……！
「ちょっとこれは危険だわね。ストップ、ストップ。当店は砲撃は禁止よ」
かぶっていた薄絹のヴェールをはずし、暴れ出そうとする与太郎の主砲にかぶせた。すんでのところで爆発的な衝動は収まって行く。熱に包まれた占い部屋に、静けさが再び戻ってきた。
「ふう……あぶないところでござんした。最近反抗期なのか、よく暴れるんですよ、はっはっは！」

さて、与太郎の主砲の未来やいかに。一枚目は、すくすくと主砲を育てる道を占う。
「ソードの６。悩みは失せ、協力者が出現する」
……どういうこと？　と、占い師にあるまじき言葉が出る。
「剣六本分の長さと太さの砲身ですね！　わかります！」
成長自粛の道を示すはワンドの4。安全、安定を表すカードは本日二度目の登場だ。
「いけませんぜ！　安定なんて！　平凡なんて！　パッションのない人生なんて！」
主砲をこじんまりと育てる気などないようだ。鼻で笑うと、ワンドの4がはらりと木の葉のように吹き飛んでしまう。必死の形相のロゼッタが、地に着く前にカードをはっしと捕まえる。
「やはりあっしの砲身は、いや方針は間違っていなかったんでやんすね。ありがとうございました！」
白い歯がまぶしい健康的なスマイル、そしてナイスなポージング。山田与太郎、過剰な主砲愛を除けば好青年であった。
「あ、お代ですね。占い師殿、どうかお納めください」
パンティに無造作に手を突っ込む与太郎。かくして神秘の女占い師・ロゼッタの手には、生暖かい千円札が握られることとなった……。