夢見る少女｜リアクション

夢見る少女

●ある日の寝子島神社で

　それは夏も近付く五月下旬、あるよく晴れた日の出来事だった。

　神楽舞の不思議な夢の話を聞いて興味を持った寝子高生たちは、九夜山の麓に位置し、舞の自宅もある寝子島神社に集まっていた。

「その話、僕にも手伝わせてくれない？」

　舞の元へ真っ先にやってきたのは、舞と同じクラスの逆巻天野の姿だった。
　『ののの』の話を聞いて、自分なりに思うところがあったのだ。　
　
　独りは寂しい
　誰かと一緒に遊びたい

　そう思ったのは『ののの』なのか、天野なのか――

　とにかく、天野はのののを探して、思い出作りを手伝ってやりたいと思っていた。
　その過程で自分自身が変わる切っ掛けを見つけられるかもしれない。
　そんな予感めいた考えもどこかにあっての捜索の申し出だった。

「このところ、いろんな事件もあったしね。今回もまた、もれいびが絡んでいるのかな？」

「『もれいび』？　もれいびって……ああ、あの不思議な力の……？」

　もれいびの事は舞も噂には聞いていたらしいが、詳しい事まではよく分かっていないらしく、『不思議な超能力者』程度の認識しかないようだった。

「……人が、空を飛ぶの？……海も泳ぐの？
　会ってみたいわ。この山を、見下ろしてみたかったの……」

　こくりと小首をかしげて大天使天吏は、寝子島神社の奥に広がる九夜山を見上げた。

　澄み渡る青い空の下、緑の森が命を謳歌するようにどこまでも広がっている。
　天吏はまだ見ぬのののがそのどこかにいるのだろうと、目を細めて思いを馳せた。

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