【脱がし脱がされ……】

　羽生 碧南の長身は目立つが故、多数の標的となるは必然だたネ。
　それでも碧南に隙はなく、振るう短剣二刀流は素羽素羽素羽ンと切り刻み、追跡する者らを尽くに撃退してゆくのでアル！

「いいわ。どんどん来なさい！
みーんな返り討ちにしてやるんだからっ」
　湯煙をくぐり駆けていく間にも敵は数え切れぬほどに追いすがり、碧南の刃は休むことなく翻り続けたネ。
「それにしても……彼女はどこにいっちゃったのかしら？」
　やがて、名もなき哀れな拳士たちをようやく残らず全裸に剥いたところで。碧南は周囲の光景がいささか変わていること、そして共闘していたはずの入江 みつびの姿が無いことに気づいたアル。
　どうやら敵どもと追いかけこするうち、別の温泉へと移動していたらしいネ。
「ああ、もう。まだまだ脱がしたりないわ……！　もっと手応えのある相手はいないのかしら？」
　『ストリップ湯』の効能が転じて、相手の道着を剥く快感に目覚めてしまた碧南。新たな敵を求めて周囲へ視線を巡らせていたら……座馬馬馬馬（ざばばばば）！
「いるわよっ、ここに一人ね！」
　座馬ーーーン！！
　湯の中から現れたのは、紛れもなくみつび！　温泉の水面に立つその足元には、
「……ええーーーっなんで恐竜！？」
「ネッシーよネッシー」
　ここは『ネス湯』。その名の通り、ネッシーが住む温泉アル。
　何を言てるか分からないと思うアルが、つまりはそういうことアルヨ。
　とうっ！　とネッシーの背から飛び降りたみつびは碧南と向き合い、ボビナムの構え。碧南も短剣を両の手に構え、共闘関係は終わりを告げ、いよいよ対決の時！
「行くわよっ、かまぼこ百裂蹴りィ～～～！！」
「きゃあ！？」
　片やみつびはアコヤ貝ブラ。片や碧南は破れかけのスク水姿と、両者とも既に手負いなものの、だからこそ二人の神経は研ぎ澄まされていたアルナ。
　みつびは上中下段へ蹴りの連打連打連打！　たまらず距離を取った碧南も、負けじと踏み込み竜巻のような短剣乱舞を繰り出し攻め立てるアル。
「その邪魔なブラ斬り飛ばして、すっきり丸裸にしてあげるわ！」
「なんの負けるか！　かまぼこ旋風脚っ、ちょいさーーー！！」
　両者拮抗！
　が、
「くっ……やるじゃない」
　勝負はやがてみつびペースへ。多数の敵を蹴散らしてきた碧南のスタミナは、そろそろ限界であったネ。
「ほーら、大人しくマッパになりなさーい！　大丈夫よーみつびちゃんは優しいから、大事なところを隠せるように、かまぼこ板あげるから」
「そんなもので隠すくらいなら、いっそ潔く散ったほうがマシだわ！」
「そう？　なら、魚新のちくわもつけちゃう」
「ちくわでどこを隠せと！？」
　軽口の応酬の合間にも、かまぼこ蹴りが炸裂！　碧南の破れスク水はもはや限界で、イケナイところを晒すのも時間の問題アル。
　っつーか今さらアルが、かまぼこ蹴りって何アルカ？
「隙アリ！　食らえトドメのかまぼこ三段蹴りーーーっ！」
「くうっ……！？」
　みつびの蹴りが僅かに残った碧南のスク水を直撃し、あえなくＫＯ……と、思いきや。
　座馬ン！
「わーーー！？　ね、ネッシー！？　みつびちゃんは味方よネッシー！？」
　湯からぬっと顔を出したネッシーに素羽ンと足を払われて、みつびはずっこけたアル。
　実は『ネス湯』に住まうネッシーには、とある習性があたのでアル……即ち闘いにおいて優勢である者の足をすくい、勝負の結末を面白おかしく演出すること！
「う、うそーーー！？」
「……隙アリ！！」
　碧南の短剣が走り抜け、蛇気、蛇金（じゃき、じゃきん）！！
「っきゃーーー☆」
　あえなくみつびのアコヤ貝ブラは斬り飛ばされ、碧南が辛くも勝利を掴んだアル。
「か、勝った……！　危なかったわ……」
「危なかったっていうか危ないわよそれ、ほとんど裸じゃない。ここ温泉だし、いっそ全裸のほうが恥ずかしくないわよね。ねーっネッシー君」
「い、言われてみれば……！？　こんな格好、完全に痴女じゃない！！」
　我に返たが運の尽き。健闘むなしく、碧南もまたみつびともども、ここでリタイヤと相成ったネ。



　『幻覚湯』をかぶり、幻の世界にとらわれてしまた黒葛 瑞樹。気付けば辺りの光景は一変して、
「これは、カジノ……！？　こ、ここは温泉のはずネ！」
　瑞樹はショートパンツにストッキングのディーラー姿。手には何故だか肉球手袋、頭には猫耳までかぶているネ。
　そして目の前には妖艶に笑むバニーガール、酒浸 朱蘭！
「ウフフフ……突然カジノでバニーガールという謎シチュエーション、しかも猫手袋で抵抗も封じられたままに服を脱がされていくという辱めを、ゆっくりと堪能するがいいネ」
「わっ、わああああっ！？　だだだダメアルいけないアル女の子がそんなことしたらあっちょっとダメそこはダメ、にゃあああああん！？」
　これぞ海原流脱衣真拳幻覚派が奥義、幻像架持乃固め！


　などと適当に付けた名前はさておき、まんまと幻覚に囚われた瑞樹は不児不児（ぷにぷに）な猫手袋のおかげで朱蘭を引き離すこともかなわず。戸惑うさなかにも、朱蘭は現実にて瑞樹の道着たるボクサーパンツへ指をかけ、焦らすように少しずつ、徐々にずり下ろしてゆくのでアル。
「ほぉら、もう少しアルヨ～？　脱げちゃうアル、見えちゃうアルヨ～？　抵抗しなくていいのかな～？　ほぉらほぉら」
「ら、らめええええ！！」
　元より可愛らしい顔立ちの瑞樹のコト。頬を朱に染め瞳は潤み、熱い吐息を漏らす男の子を自らの手のひらで弄んでいることに、朱蘭がちょぴりのめりこんでいたのは確かアル。
「だ……だっ、だ」
「んん～？　心配ないアル、お姉さんがやさしーくヌギヌギさせてあげるアルヨ～」
　そのおかげで、朱蘭が少々油断していたのも確かだたネ。
「だめええええええ！！」
「わあっ！？」
　我馬（がばっ）！！
　一瞬のうちに立場は逆転し、
「あ、あれ？」
「……こんな見た目でも、僕だって男の子アル……」
　朱蘭は荒い息の瑞樹に組み敷かれ、身動き取れなくなていたアル。
「あ、あはは。ちょとからかいすぎたアルナ、お姉さん反省～……」
「僕だって、男アル！　こんな可愛い女の子に迫られたら……！」
「えっ、か、可愛い！？」
「猫だって、獣になるアルぅぅぅううう！！」
　瑞樹は朱蘭のバニースーツを脱がさんと猫手袋で彼女の身体をまさぐり、そのたび現実では朱蘭のミニ浴衣があられもなくはだけていくアル。
「ちょっま、やめっダメダメまずいって、それはらっ倫的にマズイアル！？」
　策士策に溺れる朱蘭、もはや猫というより虎となた瑞樹！
「僕はもう一匹の肉食狩猟動物アル、止まれないアル！　このっ、手袋がぷにぷにで上手く脱がせなっ、ふぬっ、はっ。うりゃあ！！」
「はにゃああああああン！！」
　猫手袋が朱蘭の胸元へ図暴（ずぼっ）と潜りこみ、興奮の余熱も手伝て思わず悶えた朱蘭はついに、全裸のスポポンに剥かれ……。
「いくらアタシでもこれは無理アルダメアル恥ずかしいアルもうおヨメにいけない……はっ！？」
　と、思いきや。
　覚悟を決めて拳を握りこんだ朱蘭であたが、ふと静また空気に目を開くと、
「きゅうっ」
　温泉の湯にか、はたまた興奮のあまりか。瑞樹は目を回して伸びていたネ。
　馬苦馬苦（ばくばく）と鳴る心臓を押さえながらも、朱蘭はせめて少しは涼しい日陰に瑞樹の華奢な身体を横たえると、つぶやいたアル。
「……ちょっとドキドキしたのは、秘密アル」
　鼻先を不児（ぷにっ）と小突くと、瑞樹は幸せそうな顔で寝息を立て、朱蘭の胸はますます高鳴たということネ。