【桜華の宴】

　その頃、矢萩 咲は涙目真赤かな頬で悔しがていたアル。
「くっ！　くっ……！　まさか咲があのような醜態を……恥辱をぉぉぉ……！」
「よく、分からないが……私は、君となら、嫌ではなかったよ……？」
「や、やめてー！　思い出させないでー！！」
　衆合地獄湯にて哀坂 子夜と睦み合いに耽り、あわや行き着くところまで……というところで辛くも我に返た咲。小一時間悶絶し転げ回ていたアルが、傍らの子夜は仮呂理（けろり）として首を傾げるのみであたネ。
　気疲れした咲はもすこし休みたいところアルが、そうもいかないのが馬闘流露井屋留アル。
「咲君……どうやら、お客がやってきたようだよ」
「ハッ！？」
　見れば周囲を取り囲む、数え切れぬほどの門下生らの姿が。
　多くはなだらかなラインを胸に抱いた女子たちで、うなだれていても自己主張の激しい咲の豊乳や隠すそぶりもない子夜の迫力ある爆乳に妬みを抱き、付けこむ隙を伺ていたらしいアル。世の中とは不平等なものアル、仕方ないネ。
「咲君に、奥義を渡すため……降りかかる火の粉は、払わなければね」
「いやその。もう好きにして……」
　ともかく脱がされてはかなわないので、二人は剣を振るい敵らを次々に撃退……するたびに胸は揺れ、弾み、貧乳女子はより激昂して襲いかかるという、コレは何とも悪循環アルナ。
「っ、これじゃキリがないわ……子夜さん！？」
「私の胸などに触れて、楽しいのかい？　君は」
　セクハラもされるがままの無垢な子夜を救い、剣を振り抜きながら咲は歯噛みしたアル。
　敵は有象無象なれど多勢に無勢、いかに咲や子夜が手練れであろうと振るう剣は二本しかなく、敵の手が彼女らの柔肌へ伸びるのは時間の問題と言えたネ。
「く、このままじゃ咲も子夜も全裸に……そ、そんなのいやーっ！！」
「そう、かな？　私は別に、構わないけれど」
「お願いだから少しは恥じらって！！」
　と……そんな時アル。
「お困りかい？　お姫さまたち」
「へっ？」
　縮身解除、具ン具ン具ンと瞬く間に大きくなた七峯 亨、参上！
　何故だか、咲の股の間から。
「……っきゃああああああ！？」
「なぜ、そこから、現れたんだ……？」
「実に絶景だったぜ。さて！　ここからは俺も混ざらせてもらおうか、姐さん方！」
　亨は二人の前へと躍り出ると刀を一振り、特異な形状の短刀を一振り。現れ方はさておき、これまた頼りになる味方のようアルナ。
　最終的には互いに脱がし合う定め、それが馬闘流露井屋留！　しかしその過程において共闘を結ぶは定石なのでアル。
　そして、助太刀は彼ばかりではなかたネ。
「逃げんな七峯ェッ！！　……あん？」
「なんだよ、あいつら囲まれてるじゃねえか」
　亨を追いかけ、華嶋 純夏に詠 寛美が大乱入！
　二人もまた競い合う間ながら、数の不利を跳ね除けるならば、肩を並べるのは必然アル。寛美と純夏は顔を見合わせ、
「どっちにつく？」
「少ねぇほうに決まってんだろ。ぶん殴る相手が大いに越したことはねぇ」
　かくして五人対無数の大乱闘となった戦場は、ますます混乱を深めてゆくばかり。
　それでも亨は似矢理、笑てみせたアルネ。
「我ら徒花！　さあ、満開に咲き果たそうぜ！！」



　純夏は真白く立ち昇る湯気へと映りこむ影へと目がけ、邪武の乱れ撃ち。手応えアリ、人影は吹き飛んだアル。
「ち、視界が悪いぜ」
　どうやら乱闘の末、『めっちゃ視界悪い湯』へと移動していたようアルが、それでも純夏ら程の達人ともなれば気配を読むことなど容易いのでアル。
「まっ、数打ちゃ関係ないけどな！　ボクサーの疾さ、舐めんじゃねぇ！　おららららららァッ！！」
　怒我我我我我ッ！　弾丸のごとくに放たれる両の拳はまさしく暴九鎖亜（ぼくさあ）の技巧の極致！
　ちなみに先の『スケスケ湯』のおかげで純夏の道着たる競泳水着は透透（スケスケ）、かつ激しい乱戦で被った打撃によって半ば以上に破り散らされ、もはや全裸寸前な有様アルが、戦いにのめり込む今の純夏は顧みることもなかたアル。彼女が我に返り年頃の乙女らしく恥辱に悶絶するのは、もう少し後のコトネ。
　もとも、それは他の面々とて大様にして同じこと。

「雑魚どもが、うっとおしいぜッ！！」
　敵を投げ飛ばした寛美のスク水もまた順調に面積を減らしているし、子夜の水着などはもはや、千切れかけの繊維一本で辛うじて布を連ねている有様ネ。
「……ふむ。羞恥心、というのかな。よく、分からないけど……」
　よく分からないまま、それでも子夜の剣は止まることなく翻り続け、流水の渦に巻き込むがごとく相手取る門下生らの肌を剥いてゆくのでアル。
　そんなこんなで、有象無象が一切の着衣を許されず、やがて根こそぎ痴態を晒した頃。
「これで終わり、か？」
　周囲に彼ら五人を除き動く者は無くなたところで、
「や、やっと終わった……咲は最後まで、耐え抜いたのね。勝ったのね……！」
　把亜（ぱあっ）と面を輝かせた咲。
　しかしてもちろん、馬闘流露井屋留はこれにて大団円の羽飛縁土（はっぴーえんど）とはいかないワケでアル。
　朱羽ン！
「ん？」
「隙アリだぜ。悪いな、姐さん！」
　またも縮身解除。小人と化していた亨は具具具ンと大きくなり、代わりに咲の道着は紙のごとく切り裂かれて湯へ落ちて、葉裸理。
「……ぎゃあああああああああーーー！？」
「恋人を全剥きとは、お前も容赦ねえなあ……」
「いやいや。つい、昔を思い出しちまったぜ。天下の鬼矢萩相手に殺るか殺られるか、背水に自らを投げ打った青春の日々よ……楽しかったよなぁ、咲♪」
　寛美の呆れ顔にも、亨はしたり顔で言てのけたものアル。
　もちろんのこと、事ここに至てはぶつかり合うが必然！　というわけで、スポポンの全裸となり呆然自失な咲をよそに、子夜は剣の切先を亨へ向け、
「咲君が、負けてしまったからには……私が秘奥義を勝ち取り、咲君へ、捧げよう」
「なんだ咲、海原流奥義が欲しかったのかい？　言ってくれりゃあ良かったのに」
「イラナイ……イラナイノニ……」
　座馬ンと底まで踏み抜く勢いで湯へ分け入る純夏。油断なく彼らを見据え笑う寛美。
「もう逃がさねえぜ、七峯ェ。覚悟はできてんだろーなァ？」
「そろそろ決着つけるとしようぜ！」
　無論、亨も拒むつもりは毛頭なく、迎え撃つ構え。
「落花の時こそ花盛り。咲いて、乱れて、散るとしようぜ……盛大にな！！」
　いよいよ決戦！　彼らの宴は、花が散るまで……つーか、最後は武血切れた咲がろっこんビームを全方位へ乱れ撃ち、全員が真裸のスポポンに剥かれるまで続いたとゆーことネ。