Good Day！！～『somnium』～｜リアクション

Good Day！！～『somnium』～

　多くの場合、キャラクターデザインは作品そのものを左右する。名前に性格容姿に髪型、服装や持ち物だって重要だ。
　ゆえに。

（なかなか思ったデザインのアクセサリーがないわね……）

　今度の漫画のキャラクターが身につけるアクセサリーの資料を求め、街中を歩き回っていた工藤来夢はふと、シーサイドタウンの一角にあるお店に興味を惹かれ、立ち止まった。遠くから見たときは喫茶店かと思ったのだけれども、よく見たら雑貨やアクセサリーも扱っているらしいのだ。
　あら、と改めて見てみれば雰囲気も良い。ならちょっと寄ってみようかと、来夢は雰囲気の良いガラス扉をからん、と押し開けた。

「いらっしゃいませ」

　そうして足を踏み入れると、まず聞こえてきたのはどこのお店でもお決まりのそんなセリフ。けれどもふいと興味の虫が疼いて来夢がそちらを振り返れば、そこに居たのは老夫婦。
　へえ、と思う。老夫婦が経営している雑貨屋兼喫茶店、というのはなかなか面白いシチュエーションだ。

（ますます興味深いわね）

　職業柄もあって、すかさずメモを取りながら来夢はそう考えた。――これは何かネタに使えるかもしれない。
　老夫婦の雰囲気や全体的な店の様子など、気になったところを思いつくままに走り書き程度のメモをして、さて、と来夢は本命の雑貨コーナーに視線を向けた。このお店には、何か、良い資料になりそうなアクセサリーの類があれば良いのだけれど。
　そうして雑貨コーナーへと足を踏み入れて。

「あら！」

　そこに並べられた雑貨やアクセサリーの数々に、来夢は思わず、喜びと驚きの入り混じった声を上げた。言ってしまえば無国籍に、様々なテイストの雑貨やアクセサリーがあたかも店の装飾品のように並べられている――その中に、思い描いて居たキャラクターイメージにピンとくるアクセサリーがあったのだ。
　あら、あら、あら、とそれを手に取って、矯めつ眇めつ眺める。上から見て、下から見て、横から見て裏返して……うん、見れば見るほどイメージにぴったり。
　これは良いお店に出会ったと、来夢は己の幸運に感謝した。

（これは買い、っと。あとは――あ、あの雑貨も何かの資料になりそうだわ）

　まずは資料としてアクセサリーを確保して、他にも何かないかと雑貨コーナーを見て回る。そうしてそこに並べられた、可愛らしかったり神秘的だったりする雑貨やアクサセリーを眺めては、インスピレーションの湧くものを次から次へと手に取って、良さそうだと思ったものは資料として購入し。
　気付けばちょっとした荷物になっていた、雑貨やアクセサリーのずっしり入った紙袋を、来夢は上機嫌に確かめた。

（ふふ、思わぬ場所でいい資料が手に入ったわ！）

　この店を通り過ぎなかった自分を、100回でも褒めたい気持ちである。いや褒める。誉めちぎる。
　これで原稿も進むと、思えば気持ちも明るくなるものだ。とはいえ、今日は1日資料探しに費やす覚悟だったので、思いのほか、のんびりしていく時間はある。
　ちらりと時計を確認し、次いでガラスのショーケースの中身をちらりと見た。これも何かの縁だし、せっかくだからお茶でも飲んで行こうか――見るからに美味しそうなお菓子は、味にも期待が持てそうだ。
　そう考えて、来夢は早速ショーケースの中に並ぶ美味しそうなケーキとセットドリンクを注文する。そうしてイートインコーナーに腰を落ち着けて、良かった良かった、と上機嫌にひとりごちた。

「さて。ティーブレイクを楽しんだら戻って原稿描くのがんばるわよ！」

　おー！　と自分自身を鼓舞しつつ、来夢はひとまず目の前のケーキセットに集中することにしたのだった。