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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
Good Day！！～『somnium』～
店の奥の窓際が、八神 修のいつもの席だ。といって、もちろん予約しているわけでも、修の専用席というわけでもないから、今日は空いているだろうかと、自転車を止めながらひょいと店内を覗き込んで確かめる。
どうやら今日は、いつもの席は空いているらしい。よし、と何やらラッキーな気分で表に回り、ガラス扉を押し開け「こんにちは」と声をかける。
「やあ、いらっしゃい。今日はマドレーヌが焼き立てだよ」
そんな修に向けられた高明さんのセリフは、図書館帰りなどによく顔を出していればこそ。なら今日はそれとブレンドを、とお願いして、用意が出来るまでの間に雑貨やお菓子の棚を眺める。
木原夫妻の手作り品も多いこの店の品揃えは、かなり足繁く通っていると自負する修の目から見ても、来るたび少しずつ変わっていた。それを感じるたびに修は、作品やお菓子、何より作り手たる夫妻への尊敬や憧憬を深く感じるのだ。
大量生産が容易な今だからこそ、作ること、育てることは重要だと思うし、そうして作られた作品に込められた気持ちも、作品そのものも素敵だと思う――そう言えばきっと夫妻は、趣味が高じただけだと謙遜して笑うだろうけれど。
入ったよと、かけられた声に振り返り、軽食と共にいつもの席に向かう。その折、伊都子さんに新しく増えていた雑貨の作り方やモチーフを尋ねたり、今日のコーヒー豆についての高明さんの話を聞くのも密かな楽しみだ。
それはもしかしたら、修には祖父母が居ないからかも知れないと、たまに思う。父方の祖父にだけは霊的な縁があったが、他は面識すらないから――木原夫妻の醸す雰囲気が、幸せそうな空気がひどく心地よく感じるのかも知れない。
今も何やら小声をかわし、微笑み合っている姿に良いなと素直な賞賛を送って、修は洋書を取り出した。『ロンググッドバイ』、近年和訳も出版されたからこそ、読み比べながら原文の良さ、和訳の妙を楽しむのが最近のお気に入りだ。
もちろん、内容だって面白い。知らず胸の高まりを感じながら、時折知らない言い回しや単語に出会っては辞書を引き、コーヒーやお菓子でブレイクする。
ふ、と視線を感じて洋書から顔を上げると、こちらを見ている視線とぶつかった。修のようにこの店に通い詰めて住人と化している客は案外多く、互いに名前は知らなくても顔は知っている、という相手もちらほらいて。
今目が合ったのも、その1人。にっこり笑って「美味しいですね」と声をかければ、
「本当に」とあちらもにっこり笑顔で返してくる。
「そちらの焼き菓子はアップルパイ？」
「ええ。今日はなんだか食べたくなって。マドレーヌも迷ったんだけどね」
「僕は焼き立てと聞いたんで。でも、次に来た時はアップルパイも良いですね」
世間話よりはもう少し踏み込んだ、互いに知らぬ仲ではない相手との軽妙な会話も、こんな寛いだひと時には楽しいもの。そこに通りがかった伊都子さんが「あら、次と言わず今日召し上がって行っては如何？」と茶目っ気たっぷりに微笑んで、ちら、と互いに目を合わせて「それじゃあ」とお願いするのもまた、悪い気はしなくて面白い。
あちらは別の連れが居るらしく、再び会話に戻っていった。漏れ聞こえる話を拾ったところ、修も読んだことのある海外小説について話し合っているらしい。
もう少し区切りの良い所まで読み進めたら、今日は読書を終わりにしてその雑談に混ざってみようか、と思った。1人の時間も愛おしいけれど、誰かと過ごす時間も同じくらい尊いものだと、修は良く知っている。
どうやら今日は、いつもの席は空いているらしい。よし、と何やらラッキーな気分で表に回り、ガラス扉を押し開け「こんにちは」と声をかける。
「やあ、いらっしゃい。今日はマドレーヌが焼き立てだよ」
そんな修に向けられた高明さんのセリフは、図書館帰りなどによく顔を出していればこそ。なら今日はそれとブレンドを、とお願いして、用意が出来るまでの間に雑貨やお菓子の棚を眺める。
木原夫妻の手作り品も多いこの店の品揃えは、かなり足繁く通っていると自負する修の目から見ても、来るたび少しずつ変わっていた。それを感じるたびに修は、作品やお菓子、何より作り手たる夫妻への尊敬や憧憬を深く感じるのだ。
大量生産が容易な今だからこそ、作ること、育てることは重要だと思うし、そうして作られた作品に込められた気持ちも、作品そのものも素敵だと思う――そう言えばきっと夫妻は、趣味が高じただけだと謙遜して笑うだろうけれど。
入ったよと、かけられた声に振り返り、軽食と共にいつもの席に向かう。その折、伊都子さんに新しく増えていた雑貨の作り方やモチーフを尋ねたり、今日のコーヒー豆についての高明さんの話を聞くのも密かな楽しみだ。
それはもしかしたら、修には祖父母が居ないからかも知れないと、たまに思う。父方の祖父にだけは霊的な縁があったが、他は面識すらないから――木原夫妻の醸す雰囲気が、幸せそうな空気がひどく心地よく感じるのかも知れない。
今も何やら小声をかわし、微笑み合っている姿に良いなと素直な賞賛を送って、修は洋書を取り出した。『ロンググッドバイ』、近年和訳も出版されたからこそ、読み比べながら原文の良さ、和訳の妙を楽しむのが最近のお気に入りだ。
もちろん、内容だって面白い。知らず胸の高まりを感じながら、時折知らない言い回しや単語に出会っては辞書を引き、コーヒーやお菓子でブレイクする。
ふ、と視線を感じて洋書から顔を上げると、こちらを見ている視線とぶつかった。修のようにこの店に通い詰めて住人と化している客は案外多く、互いに名前は知らなくても顔は知っている、という相手もちらほらいて。
今目が合ったのも、その1人。にっこり笑って「美味しいですね」と声をかければ、
「本当に」とあちらもにっこり笑顔で返してくる。
「そちらの焼き菓子はアップルパイ？」
「ええ。今日はなんだか食べたくなって。マドレーヌも迷ったんだけどね」
「僕は焼き立てと聞いたんで。でも、次に来た時はアップルパイも良いですね」
世間話よりはもう少し踏み込んだ、互いに知らぬ仲ではない相手との軽妙な会話も、こんな寛いだひと時には楽しいもの。そこに通りがかった伊都子さんが「あら、次と言わず今日召し上がって行っては如何？」と茶目っ気たっぷりに微笑んで、ちら、と互いに目を合わせて「それじゃあ」とお願いするのもまた、悪い気はしなくて面白い。
あちらは別の連れが居るらしく、再び会話に戻っていった。漏れ聞こえる話を拾ったところ、修も読んだことのある海外小説について話し合っているらしい。
もう少し区切りの良い所まで読み進めたら、今日は読書を終わりにしてその雑談に混ざってみようか、と思った。1人の時間も愛おしいけれど、誰かと過ごす時間も同じくらい尊いものだと、修は良く知っている。
あとがき
担当マスター：
蓮華・水無月
ファンレターはマスターページから！
いつもお世話になっております、または初めまして、蓮華・水無月です。
この度はご参加頂きまして、本当にありがとうございました。
お誘い合わせの上でご参加下さいました皆様、何となくお越しくださいました皆様、『somnium』でのんびりと過ごすお話はいかがでしたでしょうか。
意外な一面になったのか、それとも大切なお子様のキャラクターを掘り下げるお話になったのか――
様々なテイストのお話を、蓮華自身も高明さんや伊都子さんと一緒にお店の中で見つめているような気持で、のんびり書かせて頂きました。
お届けさせて頂きましたリアクションが、皆様に僅かなりとも楽しんで頂ける物であれば、心から嬉しく思います。
またのご縁がございましたら、どうぞ宜しくお願いいたします（深々と
この度はご参加頂きまして、本当にありがとうございました。
お誘い合わせの上でご参加下さいました皆様、何となくお越しくださいました皆様、『somnium』でのんびりと過ごすお話はいかがでしたでしょうか。
意外な一面になったのか、それとも大切なお子様のキャラクターを掘り下げるお話になったのか――
様々なテイストのお話を、蓮華自身も高明さんや伊都子さんと一緒にお店の中で見つめているような気持で、のんびり書かせて頂きました。
お届けさせて頂きましたリアクションが、皆様に僅かなりとも楽しんで頂ける物であれば、心から嬉しく思います。
またのご縁がございましたら、どうぞ宜しくお願いいたします（深々と
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2018年03月02日
- 参加申し込みの期限
-
- 2018年03月09日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2018年03月09日 11時00分
