Good Day！！～『somnium』～｜リアクション

Good Day！！～『somnium』～

　前々から気になってはいたのだ。雑貨とケーキのお店『somnium』――たまに見かけていて、その度に気になりながら結局1度も行ったことはないその場所。
　だから。

（……今日こそは行ってみようかな？）

　良いお天気に誘われるように、恵御納夏朝はそうして『somnium』を訪れた。カラン、と軽いベルの音を頭上に聞きながら初めて足を踏み入れた、お店でうーん、と考える。

（……まずは雑貨、かな）

　ほんの少し考えて、夏朝は店の入り口正面奥にある雑貨コーナーへと足を向けた。何か素敵なもの、あると良いのだけれど。
　そう、期待しながら足を踏み入れた夏朝の目に、まず飛び込んできたのはキラキラと輝く星の形を模したアクセサリー。可愛い猫のグッズも大好きだけど、星や月、太陽がデザインされた雑貨も気になる夏朝は、うわぁ、と手に取りじっくりと見つめ。
　他にもまるで宝箱のように、次から次へと現れる珍しかったり、可愛らしかったり、素敵だったりする雑貨を、夏朝は気付けば夢中で見て回っていた。何か気に入ったものがあれば買って行こうと思っていたけれど、どれか1つに絞るのが難しい。

「うーん、うーん……これ下さい！」

　悩みに悩んで夏朝はようやく、緑石の瞳輝く銀の猫と月のストラップを購入した。そうして、さて、と今度はカフェスペースの方を冒険することにする。
　とは言えここでもまた、数々の美味しそうなケーキに夏朝は大いに悩まされた。そうして悩んだ末に、チョコケーキと、ホットミルクも頼んでセットにし、空いてる席に座る。
　ここもまた穏やかな雰囲気の漂う、素敵な場所だった。例えるなら、小さな箱庭に迷い込んだかのような印象。
　ぱくん、とチョコケーキを一口食べて、うん美味しい、と夏朝はほっこりした気持ちで頷いた。こくん、と飲んだホットミルクも程よい暖かさで、チョコケーキともぴったりだ――火傷しそうなほど熱いミルクの出て来るお店には困ってしまうけど。

（ここのは、なんだか心もあったまるみたい）

　程よい暖かさが気遣いのようにも感じられ、夏朝はほっこり目を細めた。くるん、と辺りを見回せば夏朝と同じように、のんびり、ほっこりと思い思いの時間を過ごしている人たちが目に入る。
　良いな、と思った。

（あとは猫さんがいればもっと良い雰囲気に……）

　ついそんなふうに考えて、違う違う、と小さく首を振った。あちらこちらで猫が遊んだり寛いだりしていたらとても楽しそうだと思うけれど、あくまでそれは夏朝個人の好みである。
　代わりに夏朝はカバンの中からスケッチブックを取り出した。せっかくだから食べ終わるまでのんびりと、絵を描きながら過ごそうと思ったのだ。
　まずは、想像の中で寛ぐ猫たちを描き始める。何匹も、何匹も。
　そのうちに頭の片隅にぽこんと生まれた物語のかけらも、別のページにイラストと共に書きこんだ。以前にも自作絵本を作った事や、1本だけだけど小説を書いたこともある――どんな形になるかはともかく、良さそうなネタはメモをしておこう。
　そんなふうに筆記具を走らせて、合間にケーキを食べて。ホットミルクの最後の一口を飲み干して、そろそろ帰ろうかな、と夏朝はスケッチブックから顔を上げた。
　広げたスケッチブックをパタンと閉じて、帰り支度をする。そうして最後にもう一度、ぐるりと店内を眺め回し。

「いい時間を過ごせた……本当にありがとう」

　思い切ってやって来て良かったな、と思いながら夏朝はガラス扉を押して外に出た。途端、ふわりと暖かな風を感じてほっこりする。
　とてもお天気の良い休日を過ごした、とても素敵で楽しかった場所。また来てみたいな、とふぅわり思う。