Good Day！！～『somnium』～｜リアクション

Good Day！！～『somnium』～

　とても良いお店を見つけたと、ゆったりした気持ちで上下左右は寛いでいた。美味しいお菓子に美味しい飲み物、そして雰囲気の良い店内――それだけで控えめに言って最高である。
　そ、とケーキを口に運べば、口の中に広がる甘さがひどく心地よくて、知らず笑顔がこぼれ落ちた。口中の甘やかな幸せを、ん～、と心ゆくまで味わってから、こくり、一口飲み物を含む。

「ん～。こちらもなかなか、ケーキに合っていて美味しいですわ」

　主張してケーキの後味を消し去るのではなく、かと言って飲み物そのものの味が感じられないわけでも無い、ちょうど良いバランス。それについ、うっとり、という表現が相応しいような声色になってしまうのは、それは仕方のないことだ。
　本当にいいお店を見つけたものだと、左右はゆっくり店内を見回した。決して広くはないイートインスペースには、左右のように初めてきたと思しき客もいれば、常連らしく本を読んだり勉強をしたり、思い思いに寛いでいる客の姿もあって。
　この光景もまた、このお店を飾る絵画のようだと、左右はのんびり考える。考えながらまたケーキを口に運ぶ――うん、本当に美味しい。
　元々は店の前を通りがかった折に、ちらりと見えた雑貨の品揃えが興味深く感じられて、もう少しよく見ようと足を踏み入れた左右である。けれどもそうして入ってみれば、見るからに美味しそうなケーキがあって、イートインスペースがあって、お店の装飾や雰囲気も心地良さそうだったものだから、こうして思いがけずのんびりとした時間を楽しんでいるのだった。
　のんびり、のんびり。甘いケーキに、心ものんびりほぐされて。

「あ～、このままず～っとのんびりしていたいですわ」

　思わずそんな言葉が左右の口から零れるけれども、もちろんそんなわけにはいかない。甘いケーキも美味しい飲み物も、いつかは終わりが来るものだ。
　ゆえに最後の一口をお腹に収めて、ほぅ、と左右は満足げな息をもらした。これはぜひお土産も買って帰ろうと、食べ終えた食器を下げた足でカウンターに向かう。

「お持ち帰りでワンセットくださいな」
「ありがとうございます。持ち歩きはどれくらいですか？」

　カウンターの向こうから、高明さんが柔らかに尋ねた。それに応えつつ持ち帰りのケーキを見繕い、梱包を待っていた左右は、あ、と店の片隅にある雑貨コーナーへ足を向ける。

（雑貨も何か買っていきましょう）

　そもそも、左右はこのお店に並んだ雑貨に目を惹かれて足を踏み入れたのだ。ならばこの待ち時間に何か見繕っていくのも悪くない。
　何かいいものはないかと、棚をのんびり眺めやる。そうして、そこに並ぶ数々の雑貨の多くがひどく彼女の趣味に合っていて――そうして他のお店ではあまりお目にかからないものだと気づいて、あら、と目を丸くした。

「……この雑貨はどちらで購入されたんですの？　とても素敵なものばかりですわね！」
「旅先だとか、あとは私が趣味で作ったものもあるのよ」

　思わず老夫婦の方を振り返り、そう賞賛しつつ尋ねた左右に、伊都子さんが嬉しそうに微笑みそう応える。そうして雑貨コーナーまでやって来ると、1つ1つ手に取って、これはどこそこで買ったもの、これは海外で、こっちのアクセサリーはいつ頃作ったのだったかしらね、と微笑みながら数え上げ始め。
　そんな伊都子さんを左右は、左右はどこか眩しい気持ちで見守った。本当に良いお店を見つけたと、嬉しい気持ちで、想う。

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