携帯戦記カプセルギア　第三話「共闘、カプギアマスターズ！！」｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　第三話「共闘、カプギアマスターズ！！」

【山小屋のカーネルさん(1)】

　その日、牧雪人くんからメッセージをうけた曖浜瑠樹くん、赤羽勇樹くん、鳳城翔くんの三人はGREENのアジトと思われる九夜山の小屋への侵入を試みていました。
「んん？　なんだか甘い匂いがするよぉ？」
　扉を開けて小屋の中に入った瑠樹くんは、鼻腔をくすぐる甘い匂いにそんな声を漏らしました。
　小屋の中は薄暗く、中はよく見えません。
「……この匂い、なんだ？」
　翔くんは、帽子を弄りつつ、その正体を思い出そうとします。
「……またたびメイト、メープル味」
　呟いたのは雪人くんでした。
　それに、三人が驚いて一斉に雪人くんの方を見ます。
「……間違いないよ。よく洋子が食べてるから、わかる」
　雪人くんがそう言ったときでした。

「……ほほう。匂いだけでわかるとは、あんたさん、なかなか通ですなぁ」

　小屋の隅の闇から、何者かがこちらにやってきました。
　その人物はとても大柄な小学生ぐらいの男の子でした。
　背は雪人くんより少し高いぐらいですが、その幅は２倍程ありそう。
「おい、お前がギアマスターGREENか！」
　勇樹くんは単刀直入に男の子に訊ねました。
「いかにも。おいどんがGREENだすよ。そしてこいつが、おいどんのギア――『カーネルさん』だす」
　GREENは自慢げにカーネルさんを見せびらかせると、
「じつはおいどんのスマホには、ウイルスのワクチンを無効化するツールが入ってるだす」
「……！」
　問い詰めるまでもなく、自らツールを利用していることを認めました。
「まさか自分から言いだすとはね。なら、話は早い。悪いことは言わないから、早くワクチンを使いなよ。でないと、大変なことになるかもしれないからサ」
　雪人くんが無表情に言うと、GREENは首を傾げ、
「え……？　どうしてだす？　ウイルスにはギアの本当の力を引きだす機能が眠っているらしいだすよ？　それを引き出すことの何がいけないだす？」
　と聞き返します。
「……そうか。ウイルスの噂だけが一人歩きして、暴走のことを知らないのか……」
　ここで、雪人くんはようやくコドモ達が軽はずみに違法ツールに手を出している理由に気づきました。
（……困ったね。一見、正しいことを言ってるっぽく聞こえるけれども……）
　ふと雪人くんが反応を覗うようにギアマスター達に視線を向けた、そのときでした。
「はあ……？　GREEN、それは本気で言ってるのか？」
　勇樹くんが、まったくわけがわからないと言うような顔でGREENに聞き返しました。
「お前が言っていることは一見筋が通っているだろう。が！　それは断じて正義じゃない！　どんな理由があろうと、お前がチートを使ってギアバトルに勝利をしていることにかわりはない！」
「そうだよぉ！　みんなで楽しく遊ぶためにもズルは良くないよぉ！」
「りゅーきの言う通りだ。それに、あんた、ズルして強くなってそれで楽しいのか？」
　３人のギアマスター達は、毅然とした態度で、GREENにそう言います。
（……ふぅん）
　そんな３人の姿に、雪人くんは誰にも見えない角度で小さく微笑みました。
「……う、うるさいだす！　ギアバトルは勝ったものが、正義だす！　文句があるなら、この『カーネルさん』に勝ってから言うだす！！」
　GREENがスマホをスワイプすれば、４人のA.I.C.O.にギアバトルが申し込まれます。