その日、
牧 雪人くんは、(自称)天才ハッカーの少女、海堂 洋子ちゃんに呼び出され、旧市街の片隅にある彼女の家にやってきていました。
「……あのさ、いつも思うんだけどもう少し部屋の温度上げられないワケ?」
部屋に入るなり、ぽそりと雪人くんはそう呟いたのも無理はありません。なにしろ、その部屋は長袖を着ていても少し肌寒いくらいに、冷房が効かされていたのです。
「――我慢したまえ。ぼくの大事なコンピュータ達が熱暴走を起こすリスクに比べたら、きみが風邪を引くことなど些細な問題に過ぎない」
にべもなく言い放つ洋子ちゃんの言葉通りに、その部屋にはたくさんのパソコンやモニターが置かれていました。
床には『またたびメイト』の空箱と、炭酸飲料の『胡椒先生』の空き缶が散乱していて、洋子ちゃんがこの部屋でこれらを主食に引きこもっている様子が窺えます。
「前にも言ったケドさ。たまにはまたたびメイト以外も……」
「そんなことより、早くこちらに来たまえ!」
親切心から出た言葉を一蹴し、洋子ちゃんが雪人くんを早く来いと呼び寄せます。
「……そんなことって。まあ、いいケド」
雪人くんは何かを諦めたようにふぅと息を吐くと、洋子ちゃんの言う通りに彼女の隣に並び、すぐそこにあるパソコンのモニターを覗き込みます。
「……電話では、MOD_OCEANVIEWがまだ拡散してるって聞いたケド」
ぽつり、と雪人くんが口にしました『MOD_OCEANVIEW』というのは、洋子ちゃんが作ったA.I.C.O.に介入するウイルスのこと。
以前、カプセルギアのイベント中に、このウイルスに感染したカプセルギアが暴走するという事件が起きました。
そのときは、その場に居合わせたギアマスター達がギアバトルで暴走ギアを倒して正常に戻し、同時に洋子ちゃんが『MOD_OCEANVIEW』を取り除くワクチンをアップロードすることで事無きを得たのですが……。
「そうさ! 事件はまだ終わってなかったんだ! これだよ、これ!」
彼女が「これ」と指し示したのは、とある匿名掲示板のスレッド。
そこでは、なんと『MOD_OCEANVIEW』がカプギアの本当の力を引き出す魔法のツールとして紹介され、さらには洋子ちゃんが作ったワクチンの適用を阻止する方法まで紹介されていました。
「あいつら、ぼくのプログラムで悪さをするだけでは飽き足らず、ワクチンを利かなくするツールまでバラまいているようだ……! このままではぼくのハッカーとしての尊厳に関わる! なんとかしろ、MAKIYUKI!」
洋子ちゃんが甲高い声で叫ぶと、雪人くんは小さく息を吐いて、
「……言われなくてもそうするさ。次にまた暴走事件が起きたら、今度こそ僕らのアソビが取り上げられかねないからね」
と、言いました。
それに、洋子ちゃんはちょっとびっくりしたような顔をして、
「……なんだ、やけに素直じゃないか。素直なMAKIYUKIはちょっと気持ち悪いな。それに、自分で言っておいてなんだけど、いくらきみでも、これだけ広まってしまったウイルスを一人でどうにかするのは簡単じゃないぞ?」
そんな相変わらず容赦のないうえに傍若無人な洋子ちゃんの言葉に、しかし雪人くんは無表情を崩しません。
「大丈夫。こんなこともあろうかと、これまでに使えそうなギアマスター達に何人か目をつけておいた」
「え……?」
「今回は頭数が必要だからさ。『暴走するカプギアがいるかも……』ってメッセージを投げたら、きっと何人かは集まる。A.I.C.O.には、ギアマスター同士でメッセージをやりとりする機能もあるからね」
「……なんだ、随分と手まわしがいいじゃないか。ああ、そういえば、きみは意外と人付き合いが上手かったな……」
少しすねたように言う洋子ちゃんに、雪人くんは珍しく少し笑ったように見えました。
「……同い年の友達はあまりいないけどね。ああ、それと――」
「……?」
少し意味ありげな間をおく雪人くんに、首を傾げる洋子ちゃん。
そんな彼女に、
「――なんだか洋子に興味があるコもいたみたいだから、『今度遊びに行ってやれば?』って、ここの住所教えといたから」
「な、なんだとおおおおおお……!?」
雪人くんはわりと衝撃的な事実を告げるのでした。
というわけで、ごきげんよう。水月 鏡花です。
今回もまたカプギアのシナリオをお届けに参りました。
牧 雪人くん、海堂 洋子ちゃんらと協力して、みんなの『アソビ』を守りましょう!
なおこのシナリオは、小学生、中学生のPC限定シナリオとなります。
(※ほしびとは、【ひと時の外見年齢が小・中学生以下】のPCのみ参加可能)
申し訳ありませんが、該当しない方のご参加はできませんので、お気を付けくださいませ。
このシナリオの概要
・『カプセルギア』とは?
『携帯戦記カプセルギア』とは、頭や腕、足などを組み替えてカスタマイズできる、
全高10cm程度の小さなロボットのこと!
スマートフォンにインストールした専用アプリで、ラジコンのように自由に動かすことができます。
・MOD_OCEANVIEWとは?
MOD_OCEANVIEWは、天才ハッカー少女の海堂 洋子ちゃんが開発したウイルスです。
MOD_OCEANVIEWの機能は、A.I.C.O.に隠された様々な機能を解放するというもの。
ですが、その結果、ウイルスに感染したカプセルギアが誤作動を起こし、
暴走してしまう事件が起きてしまいました。
事態に気づいた牧 雪人くんと海堂 洋子ちゃん、そしてその場に居合せたギアマスター達のおかげで、
カプギアの暴走は食い止められ、MOD_OCEANVIEWのワクチンのアップデートも完了し、
事件は事無きを得た――はずでした。
・まだ事件は終わっていなかった?
ところが、『カプセルギアの隠された力を解放するウイルスがある』という噂は、
事件後も水面下で広がり続けました。
さらに悪いことに、感染したギアマスターの中には、
ワクチンの適応を拒む特殊なツールを使用することで、
いまだMOD_OCEANVIEWの影響下にある端末を持ち続けている者がいることもわかりました。
MOD_OCEANVIEWの影響下にある以上、そのギアマスターのカプギアはいつまた暴走しないとも限りません。
それどころか、ナニカの間違いで、もっととんでもない機能が解放されてしまう可能性もあります。
もしそうなってしまえば、今度こそオトナ達の手によって、
コドモ達からカプギアが取り上げられてしまうことは間違いないでしょう。
そうなる前に、自分達の手でみんなの『アソビ』を守りましょう。
アクションでできること
次に(1)か(2)かのどちらかを選んで、アクションを投稿してください。
(1)MOD_OCEANVIEWの影響下にある端末を持つギアマスターに接触し、ギアバトルに勝利して暴走を止める
・下記の『敵情報』を参照し、MOD_OCEANVIEWの影響下にある端末を持つギアマスターに接触し、
暴走してしまったカプギアをギアバトルで撃破して、暴走を止めてください。
・一つのアクションで接触できる敵ギアマスターは、A~Eのうちのいずれか一人だけです。
・敵情報記載のギアマスター以外にも、彼らの仲間のギアマスターがいる可能性があり、同時に戦うことになる可能性があります。
・それぞれのギアマスターとの接触は全て別の日に行われ、その全てに雪人くんも参加します。
・アクション冒頭に、Aと接触するのであれば「1-A」というふうにお書きください。
(2)洋子ちゃんのお部屋に乗り込んで、一緒にA.I.C.O.や、またたびメイトについて語ったりする
・アクション冒頭に、「2」というふうにお書きください。
敵情報
【A】ギアマスターネーム:RED
カプセルギア:バーニングドラゴン
アソビ場:寝子島神社(J-4)
詳細:ギアマスターのREDはカプギアの強さを求める戦闘狂。
そのためにギアバトルの腕前はかなりのもので、常に強い相手とのバトルを求めている。
バーニングドラゴンは赤を基調とした竜型の純粋な戦闘向きギア。
頭部から放つファイアーブレスは広範囲・高威力の攻撃でさらに防御力を下げる効果も。
ボディの翼は飛行用だが、体当たりすれば武器になる。
両腕の爪は近接攻撃可能なうえ、ミサイルにもなる。
(PL情報)
暴走すると、攻撃が実体化、かつ制御不能の状態となり、さらに全高30cm程度に巨大化する。
【B】ギアマスターネーム:YELLOW
カプセルギア:イエローライガー
アソビ場:人類生命波動磁場研究所(J-6)
詳細:リーダーのYELLOWはオタク気質な少年。いじめられっこ型なのか、他人を信用していないふしがある。
生命の波動を感じるという理由で、ちょこちょこ研究所を訪れている変わり者。
研究所内は立ち入り禁止の札がかけられているが、YELLOWは気にせず中で波動を感じている。
中には無数のPCや機械が置き去りにされているが、何の研究をしていたかは不明。
イエローライガーは黄色を基調とした獅子獣人型のカプセルギア。
頭部のバルカンは出が早く、右腕のビームカタナの切れ味は鋭い。左腕は内蔵式のガトリングガン。
普段は二足歩行だが、四足形態をとることもでき、その際はビームカタナを口にくわえて攻撃する。
(PL情報)
暴走すると、攻撃が実体化かつ制御不能の状態となり、さらに瞬間移動能力を得る。
【C】ギアマスターネーム:BLUE
カプセルギア:ペンギンカイザー
アソビ場:寝子ヶ浜海浜公園(J-11)
詳細:ギアマスターのBLUEはナルシストの残念なイケメン少年。
面白いので友達からはとても愛されている。
ペンギンカイザーはずんぐりとしたボディのキングペンギン型カプセルギア。
両手の翼から無数のフェザービットを飛ばし、オールレンジ攻撃をしてくる。
また背中に搭載されたブースターで高速の突進をしてくることも。
(PL情報)
暴走すると、攻撃が実体化、かつ制御不能の状態となり、さらに自機を中心に直径30cm程の水球状のバリアを発生させる。
(バリア内ではビーム・炎などの攻撃がほとんど効かなくなり、またペンギンカイザー以外の全てのカプギアの移動速度が半減する)
【D】ギアマスターネーム/GREEN
カプセルギア:カーネルさん
アソビ場:森のプレハブ小屋(H-5)
詳細:ギアマスターのGREENはミリ飯とまたたびメイトが大好きな大食漢の少年。
持ち主不明のプレハブ小屋は彼の非常食(という名のおやつ)置き場になっている。
カーネルさんは軍人型のカプセルギア。
右腕のビームサーベルと左腕のショットライフルで、遠近くまなく対応できる。
またボディは防弾使用で実弾系の射撃武器は通りにくい。
(PL情報)
暴走すると、攻撃の実体化・制御不能の状態となり、
さらにギアマスター(衣服・端末含む)とカプセルギアの姿が見えなくなる光学迷彩が発動する。エフェクトは見える。
【E】ギアマスターネーム/PINK
カプセルギア:ピンキーベア
アソビ場:キャットロード(I~J-9)
詳細:ギアマスターのPINKは美しさ、可愛らしさを追求する少女。
いかに可愛いギアを組み立てるかに執念を燃やしている。
ピンキーベアは見た目はくまのぬいぐるみ。
だが、両手から放つグラビティブラストは防御力を無視する強力な攻撃。
さらにボディは開閉式で中からミサイルを発射することもできる。
(PL情報)
暴走すると、攻撃の実体化・制御不能の状態となり、
さらに異性のギアマスターおよびそのカプセルギアを魅了し、攻撃を躊躇わせる&攻撃力を半減させる。
NPC
・牧 雪人
カプセルギアの扱いに長けた少年。
PCさん達に、
『暴走する危険のあるカプギアを持っているやつに会いに行く。興味があるなら来れば?』
と、なんとも彼らしいメッセージとともに、接触の日時を送信しています。
事件の裏側について何か知っているようですが、いまはまだ多くを語るつもりはないようです。
今回のシナリオでは、PCさん達の実力を正確に見極めようとしています。
・海堂 洋子
カプセルギアそのものに興味はないものの、メカやプログラムには強い関心をもっている。
とある理由で部屋にひきこもっているらしく、学校にも行っていないようです。
カプセルギアの遊び方
1.カプセルギアの作り方
2.購入や操作の方法
3.アクション提出の手順
参考:くわしい情報の紹介