ジャガイモ畑でつかまえて（精神）｜リアクション

ジャガイモ畑でつかまえて（精神）

「ねえ、そふとちゃんの話、もっと聴かせて欲しいわ。
　溜め込んでるもの全部吐き出しちゃえば、少しは楽になると思うの」
　にこにこと微笑みかける岬は、相変わらず優しいお姉さんのようで。
　そふとも素直に思っている事を、吐露する。
「爺ちゃんは思い込みが激しくて短絡的だけど、悪人じゃないと思うんです。
　ただ、愛情表現が歪んでて……付き合いにくいな、って思います……なんかしつこいし」
「そうよね。でも、そふとちゃんは頑張り屋さんなのね！　それに一生懸命お祖父様のお手伝いして、偉いわ」
　そふとをぎゅっと抱き締めて、撫で撫で。

　真辺伸幸も目線をあわせ、へにゃりと笑って、そふとの頭を撫でる。
「ほんと偉いよねぇ、その年でおじーさんのお手伝いちゃんとこなしてるんだもの。
　だからおじーさんだって頼りにしてるんでしょう？」
　伸幸の優しい問い掛けは、そふとの心の泉から真意を汲み上げる。
「うん……爺ちゃんと婆ちゃんだけじゃ、やっぱ大変だから……」
　それを閉ざしてしまわぬよう、伸幸はほわりと包み込む。
「今までの積み重ねで、頼られているんだねぇ。ぬん！　そふと君えらい！」

　えっとさ、と十一が進み出る。
「そふとの事、そして農園、全部大切だから耕作さんは、わかんなくなっちゃって怒ったりしてるんだよ。
　でも一番そふとの事を大切にしてるのは、耕作さんなんだよ。そふとには夢があるのはわかってる。
　農園以外の夢があるのが、おれはすっごい羨ましい……でもたまには、耕作さんの農園を見てあげてね。
　耕作さんの農園は、いつでもそふとの帰る場所だよ」
　十一の言葉を、そふとは決して否定しない。

「農家も大変なんやねー。
　うーん、お爺ちゃんが言っても聞いてくれへんのやったら、手紙書いてみたらどうやろ？
　直接話すとケンカになってまうんなら、手紙に言いたい事とか、思っとる事全部書いてまうねん。
　そふとくんの気持ちがちゃんと伝われば、きっとおじいちゃんも分かってくれるでー♪
　それでも、分かってくれへんかったら……うちからも猫鳴館に住めるように、皆にお願いしたる！」
　かなえが胸を張り、荒太郎もその提案を推す。
「なるほど、手紙かー。とうふちゃんナイスアイディア！　そふと君、どうかな？」
「や、やってみます……」
「よっしゃ、その意気や！　頑張れ、うちも応援しとるでー♪」
　元気な声援を送り、かなえは荒太郎と微笑み合う。

　再びペンを握り締めて、悩むそふとを、修は少し羨ましいと思った。
　修の父は時折、修の成績を気にしてコンタクトを取ってくるが、それきりだ。
　母も、どこか冷たく、余所余所しい。

「手紙って、何を書いたらいいんだろ……？」
「素直に、思うままを書いたらいいんじゃないか？
　悩みのあるやつぁ、答えを持って逃げ込むモンよ……ちび助はどうしたい？」
　リラックスした様子で望月が言い、解理も腕組みをしたまま、深く頷く。
「家出というが、本気じゃないなら、ここで少し楽しんだら帰るといい。
　まず猫鳴館なんて、君のおじいさんも知ってて、連れ戻される可能性ある場所に来たり、はじめてのお使いに行く子供にも劣る装備！　これで本気と受け取れるわけがない！
　本気で家出するなら、サイコロ片手にアテのない旅に出るぐらいの、気概を持ちたまえ！」
「ずれてる！　解理ちゃん、なんか趣旨がずれてるよ！」
　望月が突っ込んで、その場に笑いが起こった。