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夢を見た、気がする。
ナニカに追われて駆けて、薔薇の生垣を飛び越え夜空へと舞い上がり輝く満天の星のただひとつに手を伸ばす、そんな夢。
掴んだ星の肌を焼く熱に眉をしかめ、それでも両手で包み込み強引に胸元に引き寄せ抱きしめて――
「何やここ狭いし暗ぁ!?」
抱きしめた星が喚いた。
賑やか過ぎる声に、
シグレ・ナイトウォーカー
は息を吐く。元よりのショートスリーパー、眠りがどれだけ短くとも深くとも、寝覚めは素早い。胸元に抱き寄せた、おそらくは誰かの頭をパッと解放し、
「……また神魂のせいか」
瞬時に状況を理解する。
家業のお陰か血筋のお陰か、夜目の効く視界さえ塞ぐ不可思議な暗闇に幾度も瞬きを繰り返しつつ、左で細身の身体を小さく丸くさせた誰かと、右で長い手足を突っ張らせる誰かの存在を確かめる。
小さな箱状のナニカに誰かと共に詰め込まれるという厄介な状況と、その状況を作り出した神魂に頭痛を覚えた。こめかみを抑えようとして、けれど身じろぎも満足には叶わない。
「ねぇ……」
左の華奢な身の誰かが細い声をあげた。聞き覚えのある声にシグレが瞳を細めるより先、
「まさか……ゆーちゃん?」
右の大柄な誰かが抑えの効かぬ大型犬じみて強引に動こうとする。
「俺も居る」
壁や左の誰かに身体を押し付けられることを嫌い、シグレは大型犬のような誰かの脇をぐいと押した。
「おわっ、シグちゃんもおったんか!」
そうしながら、その筋肉質な身体と賑やかな口調に思い至る。それに、己を『シグちゃん』と呼ぶ人間は彼以外に居ない。
「弥逢と、服部だな」
「……そこに居るよね?」
肩が触れ合ってすらいるのに、
弥逢 遊琳
がどこか怯えたような細い声で問うてくる。
「本当にシグレと服部だよね?」
時に女性的にさえ感じられる小さな手が闇に彷徨うのを感じ取り、シグレは手探りに遊琳の手を掴んだ。
「偽物なわけがないだろう」
「せやでー、剛さん大柄で堪忍なー」
ごつごつと壁に頭や肩をぶつけながら、
服部 剛
が朗らかに笑う。シグレが導いた遊琳のもう片方の手をぐいと握る。
「……さて、と」
置かれた状況と人物を把握し、シグレはふと小さく首を捻った。
(秘密……)
『互いに秘密を打ち明け合わねばならない』。脱出の方法がご丁寧に脳裏に提示されているのも、やはりこれが神魂の影響であるがゆえなのだろう。
「秘密か」
掴み取った遊琳の指先が小さく震える。逃げ出したそうな仕草のその癖、小さな掌は縋るように己の手を握り返してくる。
散々賑やかだった剛が沈むように黙している。
脱出方法を提示されたふたりの反応からして、遊琳も剛も、語りたくない『秘密』を抱えているらしい。
(……俺も、)
秘密を白状する以外の脱出方法を思案しかけて、シグレは肩から力をぬくように僅かに唇の端を上げる。
(……まぁ、この二人になら話しても構わないか)
そう思えるがために、シグレは敢えて軽い口調で左右のふたりに言い聞かせる。
「まぁ、これが夢か現かもはっきりしていない。ならば――」
一夜の夢として語ろうじゃないか。
シグレの言葉に、遊琳は更に強くシグレの手を握りしめた。
(これを知られるくらいなら)
逃げたい。そう思う。だから本当は掴んでくれた手を離すべきなのかもしれないけれど、それが出来なかった。
(話すのは怖いけど)
己が逃げ出してしまうことを許せず、遊琳は指に力を籠める。シグレと剛の手を握りしめる。こんなところに閉じ込められてしまったふたりを放り出すわけにはいかない。
(この子達ふたりを置いておけない)
たとえばまるで我が子を慈しむかの如く、遊琳は暗闇に閉ざされた友人を想う。同じく暗闇に閉ざされた己のことはおきざりにして。秘密を知られることを逃げたいほどに怯える己自身を投げ捨てて。
(言わなきゃ)
ひとつ秘密を語ってしまえば、それは嘘と同じで次々と明るみに曝されてしまうことを、遊琳は知っている。だから恐怖している。それでも、
「僕の秘密は、」
口火を切るのが何より怖いその癖、遊琳は語り始める。
「……君達とお花見しただろ」
春の休日、満開の桜の下で。
「その前の日に想い人に告白したんだ」
片方の手を包み込む剛の大きな手の力が僅かに強くなる。それが動揺なのか何なのかさえも読み取れず、遊琳は小さく首を横に振る。
「でも今も関係は変わらない」
告白する前も、その後も。
彼の住むシーサイドタウンのマンションの合鍵を渡されたのは告白するよりも前。鍵を渡れても、その部屋を訪れることは滅多となかった。訪れたところで、彼と邂逅することさえ多くはなかった。
同じ部屋に居たところで、大した会話もしていなかったように思う。ただ時折、同じ景色を眺めた。たまには食事をふるまったりもした。
合鍵を渡されたこと、それ自体が己にとっては宝のように思えていたのかもしれない。
「僕は、……」
遊琳は、『その人がその人で在ることこそ最善』とする。
――傍に居て
もしも彼にそう伝え、彼が願いを叶えてくれたとしても、彼に元々その意思がなければ、遊琳が覚えるのは失望と己への怒り。その他の感情は出てこない。
己がそういう性分の人間であると解しているからこそ、告白に応えは求めなかった。
(あの子は、……)
ただ己の気持ちを知っていて欲しいと願い、恋情を伝えた。夜闇に浮かび上がる桜花よりも鮮やかなまごころを手渡した。見返りは、それまでと同じに求めなかった。
そのはずだ。
万が一にでも、己の気持ちによってあの子を曲げてしまったと思ったが最後、
(僕は生涯自分を許さない)
それでも、願ってしまったのかもしれない。
あの子に傍に居て欲しいと。だって確かに、この心の何処かでは思っている。思ってしまっている。
「嫌われてもいいなんて嘘だし、優しくされたら嬉しい」
他を見るときがあっても構わない。けれど、自分の名が特別のひとつであってほしい。
「……ずっと一緒に居たいと、そんな風に思ってしまう」
それでも、と遊琳は語気を強める。
「それでも、まず僕が僕で在れない事は許せない」
魅せられないものは見せないことこそ、自分が認める自分自身。己はそれを矜持としている。
凛と立たねばならない。たとえそれで孤独を得ようとも。その孤独が心を凍らせるほどに恐ろしくあったとしても。
「……だから、秘密」
水面下で醜く足掻く己を誰にも知られたくなどない。
「どうせなら誰も困らせず綺麗に『僕』を全うしたいもの」
ふわり、花の如く笑いながら遊琳は繰り返す。
「これは誰にも言えない秘密」
だから忘れてと。
秘密は秘密のまま、ふたりの胸のうちで跡形もなく消してしまってと。
「……そうか」
遊琳の手を離さぬまま、シグレはただ静かに頷く。
遊琳の秘密に関しては、なんとなく察していた部分があった。遊琳が告白をしたという相手についてもそれは同じ。それでも黙っていたのは、遊琳が今語った通りの人間であるためだ。
遊琳の秘密を秘密のまま胸に仕舞い込み、傍らの剛の気配を探る。遊琳の言葉を聞いた瞬間、剛の呼吸が乱れたように感じられた。夜陰に潜む家業を受け継ごうとしていることもあり、人の気配や感情を読む訓練は常にしている。
(動揺のような、……それにも自分では気づいていないような感じ、か?)
服部、と問いかけて、シグレは口を閉ざす。ことここに在って、己は黙り込んだ方が良いだろう。ふたりとも、お節介なアドバイスなど必要とはしていまい。
剛は唇を開こうとして、こちらも止める。
――ゆーちゃんからそんだけ想われとるのって誰やろ?
知りたいと思った。
知りたくないとも思った。
(……あれ)
胸をふと穿つ痛みにも似た思いに、剛は黙したまま首を傾げる。
(何で)
遊琳が健気な想いを向ける相手が己であったのなら。
遊琳のまなざしを受け止める相手が己であったのなら。
(何で『俺やったら』なんて思うんやろ……?)
胸に生まれた疑問符を感嘆符に変える答えを自分では思いつけず、剛は眉を寄せる。今は置いておこうと胸の痛みを無理やりに抑え込む。
(せや、今は)
ここから出てしまうことが先決。
胸に秘めてきたことを言葉にして話してしまうことは、怖かった。
(けど、ゆーちゃんは話した。シグちゃんも話すんや)
「……独り言やと思うてな」
出来得る限りに明るい口調で言い置いて、剛は『秘密』を口にする。
「俺な、……絵が描けへんねん」
掴んだ遊琳の手から逃れようとして、逃れられなかった。指を掴む力はそう強くないのに、己の力であれば容易く解けるはずなのに、
(縋っとるんは俺なんかな)
「描けんちゅうても、昔は油絵とかよう描いてたんやで」
意外やろ、と自分で自分を茶化してみせるのに、シグレは柔らかく黙するばかり。遊琳は優しい体温を伝えてくるばかり。
絵が、描けなくなった。
思うように線が辿れない。思うような色を作り出せない。その上、描こうとすれば、水に沈みこむように息を奪われた。視界が黒い蒼に染まった。
己を荒れる海に引きずり込んだ、豪雨の蒼。己を助けたその代償に落ちて行く親友を呑みこむ闇の海の蒼。
――『海を走る列車』、見に行こ。お前の誕生日に!
どうしてあんなことを提案してしまったのだろう。
どうして嵐の夜に海に向かってしまったのだろう。
どうして親友を誘ってしまったのだろう。
海に沈んで行く親友の姿が今も瞼の裏にある。後を追って海に飛び込み、どうにか助け上げはしたものの、親友は今も病院で昏睡状態にある。
「筆を落としてまう」
みっともなく喘いだ挙句、へたりこんでしまう。描こうとする度、そうだった。気づけば画材を持つことすら少なくなってしまった。
「スランプ……とはちと違うかな」
へらりと笑おうとして、頬が凍りついた。
「……結局、逃げてんねん」
明るく保とうとした声さえ冷たく沈む。
「絵から、あの時から、……自分から」
自分で自分を断罪する。あの時から、ずっと己を断じ続けて、それでも足りなかった。のうのうと暮らす己のせいで、親友は今も眠り続けている。海の底に沈み続けている。
「これがな、剛さんの秘密。体育科に入った理由」
絵から離れた学科であれば何でも良かった。
絵の埋め合わせになりそうなものを探して色々なものに手を出してきたのが、体育科に入るときに役立った。
「……変やろ?」
低い天井を仰ごうとして、後頭部を壁にぶつけた。痛みを感じたはずなのに、剛は笑う。
「絵から逃げとる癖に、画材屋に住んで、芸術科がある学校に来て……」
理由は分かっている。
「……逃げることは出来ても、切り離す事は出来んかった」
そこまで言って、口を閉ざす。
そこまで言っただけで、心臓が痛いほどに打っている。身体中の筋肉が軋むほどに強張っている。
「……ごめん、まだ全部言える勇気……あらへんわ……」
「いい。もういいよ、服部」
痛いほどに指を握られて、けれど遊琳は痛みを一言も訴えず、その代わりにそれだけを口にする。それだけしか、言葉に出来なかった。
「解った」
シグレの短い言葉も受け、剛は冷たい海面から今しも頭を上げたかのように、長く苦しい息を吐き出した。
(二人とも、というか)
剛の溜息を傍らに聞きながら、シグレは瞼を閉ざす。かたちは違えど、執着なのだろう。それによって苦しんでいる者同士、このまま進めばもしかすると更に苦しむ事態にも陥りかねない。
左右にいる二人と、ここにはいないもう一人――遊琳が告白した相手を加えた三人の関係性や今後のことを考えれば、若干頭は痛い。とはいえ、
(ここにいないアイツに関しては心配することは全くないんだが)
幼馴染という腐れ縁な『もう一人』のことはよく知るゆえか信頼ゆえかばっさり切り捨てて、
「最後は俺だ」
シグレは隠し続けて来た『秘密』を口に昇らせるために声を潜める。
「何でも聞くで」
「うん、話して」
耳を傾けた剛と遊琳は、
「本当に家業が怪盗だ」
シグレの『秘密』を聞いた途端、緊張の糸が切れたように揃って笑い始めた。
「いや、笑うところじゃないからな!?」
「か、怪盗!? 怪盗言うたか、シグちゃん……!」
背負い込んでいるはずの重さを感じさせない快活な声で剛に問い返され、シグレは不貞腐れつつも大真面目に応じる。
「これは俺だけじゃなく先祖代々の秘密なんだぞ、」
「……うん」
言いかけたところで、遊琳がふわりと肩に抱きついてきた。もしかすると本人は無意識のうちに母親がするが如く抱きしめようとしてくれたのかもしれないけれど。
「警察に突き出したりはしない、よ?」
ふわふわとした笑みを含んだ声で、何故だか慰撫されるように言われ、シグレはますます眉を寄せる。こちらは至って真面目に話しているつもりなのに、
「ナイトウォーカー家は代々国外に流出した芸術品や貴重な品を取り返す為にだな……」
話せば話すほど、現実味が遠ざかるようにも思える。それに、己はまだまだ見習の身。父や祖父のように仕事として成り立たせていなければ、夢物語のような語り口になってしまうのも仕方がないのかもしれない。
「まぁ、やっていることがやっていることだからな、公には出来ん」
そっと息を吐く。信じてくれとは言うまい。
息一つで気持ちを切り替え、シグレはことさらに明るくふたりに言い放つ。
「どうだ? 少しは気晴らしになったか?」
――ちょっとカッコええやないか……!
闇に聞いた剛の声がまだ耳に残っている。
深夜の月光が差し込む自室の天井を夜藍の瞳に映し、シグレは口元をちらりと笑ませた。今の今まで眠りに沈んでいたとも思えぬ仕草で身を起こし、ナイトテーブルに置いたベルを手に取る。涼やかな音を響かせるそれは、使用人に寝覚めの紅茶を命ずる合図。
程なく運ばれるだろう紅茶の香を待ちながら、黒い睫毛を伏せる。
「……願わくば」
夢に出会ったふたりに祈りが届くことを願い、囁く。
「友人達には今後も息災であって欲しいんだがな」
浮かぶのは、夢の終わり際の遊琳の沈黙。
秘密を口にしたことを後悔まではしておらぬものの、口にしたことで訪れる可能性の出来た未来を憂うようなものであったように思う。
闇に見えぬまでも、静かな琥珀の瞳は容易に瞼の裏に浮かんだ。
(秘密は胸に秘めよう)
夢で出会ったふたりに、怪盗の末裔は誓う。
秘密を聞いたところで、今までと接し方が変わることは決してない。
(明日も――)
これまでと変わらぬ態度でふたりと接しよう。
秘密を秘密としたままにするのも、きっと怪盗の矜持というもの。
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3人まで
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20人
参加キャラクター数
20人
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シナリオガイド公開日
2018年02月07日
参加申し込みの期限
2018年02月14日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年02月14日 11時00分
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