摩訶不思議、寝子高龍！｜リアクション

摩訶不思議、寝子高龍！

●食べろ！　橙の子猫球

　そのころ。マリエッタ・ラシュリエは校内を歩いていた。
「事情は理解したけど、さて、どうしよう」
　ぐぅと可愛らしくお腹がなる。
「あーあ、お腹すいちゃったわ。そういえば今日は朝はミルクと果物しか食べてないじゃない」
　大学の学食で食事をするつもりだったが、その前にこの切り分けられた寝子高に閉じ込められてしまったのだ。そんなマリエッタの鼻腔がひくついた。おいしそうな料理の香りがする。
　香りに吸い寄せられるように歩いていくと、学食があった。
　何か食べられるかしらとマリエッタが学食を覗き込むと……。

「うおおおー！！！　ただ飯ごちそうさまです！」
　――にゃにゃにゃにゃーーァ！！！
　学食のテーブルは料理を盛った皿でいっぱい。カレーライスにカツどん、ラーメン、焼きサバ定食……。
　それらを、御剣刀と橙の子猫珠がものすごい勢いでかっ込んでいる。
「な、何事？」
　一瞬身構えたマリエッタに、橙の子猫珠が、ビシッと言った！
　――お姉さんも食べたいかにゃ？
「食べたい、けど……」
　――それなら、誰が一番いっぱい食べられるか、大食い勝負にゃ！
　ええっ、というかと思いきや、マリエッタは意外にも落ち着いた様子で微笑んだ。
「あら、いいの？」
　刀の隣の席に着く。
「ルールは？」
　――お腹いっぱいになったらそこまで。お皿の数で勝負にゃ！
「焼きそばパンとかの購買部のメニューでもいいのか？」
　――おっけーにゃ！　パンも１つ１皿と数えるにゃ。
　マリエッタが見ていると、料理は、注文するとカウンターからすぐさま出てくるようだ。
　どうなっているのか理解不能だが、これもまた神魂の影響か。
「大食い上等、勝つか負けるかと言われれば勝つつもりだが腹いっぱい食うぞ！　ただ飯だからな！！」
　刀の勢いはすさまじい。しかも、橙ちゃんにアドバイスもしている。
「とりあえず、お勧めは釜揚げしらすがたっぷり乗った『寝子島丼』だ。サンマの蒲焼きが乗った『サンマ丼』もいい。アッ、もしかしてこの状況なら、ふだんなら高くて躊躇するサンマの蒲焼き＆釜揚げしらす両方乗せの『寝子まんま』も頼んでいいのか！？　それも食っとかないともったいないぞ！」
　それを聞いていたマリエッタは思わず言った。
「親切なのね。敵に塩を送るタイプ？」
「いや、大食いだって美味しい方がいいだろう？　というかただ沢山食べるだけならその辺の草食ってろ。味わえ！　それが料理に対する最低限の礼儀だ！　そして不味ければ不味い言え！　次は上手くなっているかもしれないから」
　熱い！
　食べ物に対する熱量がハンパない！
　これが御剣刀という男！
　食いしん坊万歳！
　橙ちゃんは大きくうなずき、食べかけのカレーライスをごっくんと飲み込むと、刀のオススメメニューを注文しに行った。それを見て、マリエッタは穏やかに微笑んだ。
「じゃ、私はサラダとサンマさんランチ」