摩訶不思議、寝子高龍！｜リアクション

摩訶不思議、寝子高龍！

●プロローグ

「――とりあえず世界を切り分けといた。あとはお前らでなんとかしろ」

　いつもながらの投げやりなテオの声が脳内に響き、自分を取り巻く寝子高の校内の景色が微妙にずれた気がした。それをサキリ・デイジーカッターは、驚きも感動もなく受け入れる。なにしろ寝子島に来てからというものこんなことは日常茶飯事、いちいち驚くだけムダというくらい頻繁に起こるからだ。
　気づけば傍には栗色のボブカットの女性がいて、驚き顔で左右を確認している。
「あれ、研究室にいたはずなのに……」
　澄んだ五月の森のような緑色の瞳の女性は、木天蓼大学の院生で、建築学を専攻するマリエッタ・ラシュリエである。
「巻き込まれたんだね。でも心配いらないさ。きっと出られると思うよ」
　サキリはマリエッタに言って、馴染みの顔の恵御納夏朝と坂内梨香のふたりに目顔で挨拶した。

「学校で坂内先輩に会うのも久しぶりだね」
「そうね」
「もう卒業しているから先輩というのも変か。坂内さん、それとも社長と呼んだ方がいいかな？」
「坂内さんでいいわ。ボスって呼ばれるのも悪くないけど」
　梨香は笑って肩をすくめる。
「概要を説明するわ」

　こにゃんこボールは全部で８つ。
　赤・橙・黄色・緑・水色・青・紫・黒白の子猫珠があり、
　黒白の子猫珠は黒・白のちび子猫勾玉に分離中らしい。
　この８つをひとところに集めれば、中庭の遙か地下に眠る寝子高龍が姿を見せ、
　願い事を叶えてくれるらしい。
　
　――この話を聞くと、同じように巻き込まれた人々は、こにゃんこボールを捕まえるべくその場から散り散りになった。

　音海なぎさがそっと梨香の傍にやってきた。
「緑の子猫珠を探そうと思うんだ。正確な場所がわかるかどうかはわからないけれど、隠れてるところを探索できないかなって。坂内くんに力を借りたいな」
「もちろんいいわ」
「そのあとでいい。紫の子猫珠の対処も手伝ってほしい」
　八神修とともに難易度の高そうな紫の子猫珠の確保に動くことにしたサキリも支援を依頼すると、梨香は「了解」と片目を瞑ってみせた。

　対処に当たるまえに、屋上からビリビリと電撃を放って遊んでいる紫の子猫珠を確認したした修は、思わず呻く。
「可愛い……。が、無策の接近は避けるべきだろう。急がば回れだ」
　サキリも頷く。
「そうだね。校内を回って、電撃対策に必要な物を集めよう」

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